こんにちは。豊岡です。
さて、まもなく野球ファンが待ちに待った大イベント・WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が開幕します。
出場するのは全部で16チーム。一次ラウンドでは4チームずつ、AからDまで4つのプールに分かれて総当たり戦を行い、上位2チームが二次ラウンドに進出します。
日本はプールBに所属しています。勝ち上がれば、二次ラウンドではプールAの勝者とも対戦しますし、決勝トーナメントではプールCやDの勝者と対戦することになります。
今回の企画では、AからDの4プールを、4回の連載で紹介していきます。初回であるこの記事では、一次ラウンドのプールA(韓国ラウンド)の展望を行いたいと思います。二次ラウンドでは、日本と対戦する可能性が高いチームです。明日以降、順に各プールをレビューしていきます。
また、各チームの見出しに、完全に主観ですが5段階の戦力評価をつけました。投打それぞれの戦力に対し、最弱1~最強5の数字を割り振っています。監督コーチの采配・チームのムードなどの要素は考慮していません。どの試合を観戦するかの目安にするなり、変な点に突っ込むなり、好きにご活用ください。
プールA・ソウルラウンド
出場国は、韓国・台湾(チャイニーズタイペイ)・イスラエル・オランダです。韓国の高尺スカイドームで行われます。 二次ラウンドでは、日本との対戦の可能性があるプールAの各国。順当に行けば、韓国・オランダの勝ち上がりが予想されますが、ダークホース・イスラエルにもチャンスがあります。一方で、台湾は過去の大会に比べて厳しい戦いが予想されます。
韓国:プールAの本命【投4・打4】
一次ラウンドの勝ち上がりは固いでしょう。海外組の招集が少なくなったものの、国内組中心に戦力はそこそこ充実しています。
ソフトバンクやシアトル・マリナーズで中軸を打ったイ・デホ、かつてのヤクルトの守護神イム・チャンヨンなど、日本でもなじみのある選手が多く選ばれています。注目選手は、今オフにはDeNA入りも噂された左投手のヤン・ヒョンジョンです。現在韓国で最高の左腕で、代表でも先発一番手と目されています。時間のある方は動画をご覧ください。
かつて阪神でも活躍したクローザーのオ・スンファンは、賭博事件で招集が危ぶまれていましたが、無事に選ばれました。昨年の渡米後には、素晴らしいスライダーを突然習得してカーディナルスのクローザーに上り詰め、昔から見ていたファン達を唖然とさせました。新たな姿で試合の最後を締めくくってくれるでしょう。
一方、強打の内野手カン・ジョンホ(ピッツバーグ・パイレーツ)は、飲酒運転で逮捕されたことが問題視されて招集が見送られました。かつて日本キラーとして知られたキム・グァンヒョン、かつてエースだったドジャースのリュ・ヒョンジンの両左腕も、共にケガのため今回は欠場です。
台湾:ベストメンバーにほど遠い【投2・打2】
前回のWBCでは日本を土俵際に追い詰め印象的な活躍を見せた台湾ですが、今回は力が落ちるチームと言わざるを得ません。
まず、前回日本を苦しめた歴戦の「シンカー投げおじさん」王建民(ワン・チェンミン)はメンバー入りしていません。同じ先発陣では、かつて中日で吉見とダブルエースを張ったチェン・ウェインもいません。野手では、巨人に入団したばかりの陽岱鋼もいません。
それだけではありません。今回、国内リーグの強豪チーム・Lamigoモンキーズが、代表チームにおけるプロアマ間の主導権争いから、WBCへの選手派遣をボイコットしています。
プールAの他のチームの実力を考えると、台湾の一次ラウンド突破はかなり厳しいでしょう。監督は、往年の名投手・郭泰源ですが、難しい舵取りを迫られそうです。大会前から合宿を開催するなど、チームのモチベーションが高いのは好材料です。
イスラエル:渋いダークホース【投2・打3】
A組のダークホースとして面白そうなのがイスラエルです。イスラエル本国で生まれ育った選手はほとんどおらず、ユダヤ系アメリカ人が中心です。
一時は、ユダヤ系メジャーリーガーをそろえた銀河系軍団の結成も噂されましたが、そちらの計画は空振りに終わりました。しかし、油断は出来ません。代わりに、一昔前にメジャーで活躍した渋い脇役の選手たち、若いマイナーリーガーたちを揃えてきました。
1つ噛み合えば、オランダ・韓国の2強に割って入る可能性もあります。初戦の韓国戦で勝ち、波に乗っていきたいところです。
主な選手を紹介しましょう。まず、アイク・デービスです。最近でこそ鳴かず飛ばずの彼ですが、かつてはニューヨーク・メッツの未来を担うことが期待された長距離砲で、2012年には32本塁打を放った実績があります。
リードオフマンを務めるのはサム・ファルドです。俊足巧打のプレースタイルと、外野守備のうまさで知られます。Ⅰ型糖尿病と付き合いながら、毎日インスリン注射を打ってプレーしている選手の一人でもあります。
投手陣で実績があるのはジェイソン・マーキーで、2000年代中盤にはメジャーで6年連続2桁勝利を挙げています。中継ぎ投手のクレイグ・ブレスロウは、名門イェール大学出身・メディカルスクール合格という経歴から「球界一頭のいい選手」と呼ばれ、プレー以外でも注目を集める選手です。
オランダ:豪華内野陣が夢の共演【投3・打5】
韓国と共に、プールAの突破本命とされるチームです。
野手は非常に強力です。特に、内野手は豪華メンバーがそろいすぎて嬉しい悲鳴が上がっています。というのも、本職がショートで打撃も良い、チームでレギュラーを張るレベルのメジャーリーガーが5人もいるせいで、守備位置のやりくりが大変になっているからです。
5人のうち、3人を紹介することにしましょう。
まず、ヤンキースのディディ・グレゴリウスです。ジーターの引退後、名門ヤンキースの正ショートを務める若き有望株です。
次に、ザンダー・ボガーツ(ボーハールツとも)です。レッドソックス打線において中軸を務め、3割近い打率と20本塁打を両立できる強打のショートです。昨年前半は特に好調で、一時はイチローの持つシーズン最多安打記録を抜くのではとも言われました。
そんな彼らを押しのけ、打撃は劣るものの、圧倒的守備力で正ショートに座ると予想されるのが、アンドレルトン・シモンズです。現在疑いなく世界最強ショートの彼は、広大な守備範囲と強肩を兼ね備え、言葉で形容するのが野暮に感じられるほどです。次の動画を是非ともご覧ください。人間離れしたそのプレーに目を疑うこと確実です。
外野のメンバーは内野ほどではありませんが、ヤクルトの主砲バレンティンが中軸に座る予定となっています。
一方、投手はソフトバンクのバンデンハークがエースになると目されていますが、その他の先発の力不足は否めません。リリーフ陣は、メジャーを代表する剛腕クローザーであるケンリー・ジャンセンが欠場していますが、パワータイプのリリーバーを多くそろえており、意外と打ち崩すのがやっかいかもしれません。
オランダがプールAを順当に突破するためには、イスラエル戦を落とさないことが肝心になってくると思われます。
このような形で、各プールごとの見どころを紹介していきます。 次回は侍JAPANが配属されたプールB。「さすがに1次リーグは余裕」という雰囲気ですが、あえて日本敗退の可能性について考察してみます。 もし気に入っていただけたら、次回以降もぜひ。