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「素敵な旅」のはじまり

旅に出るのは2月末のとある一日だ。暦の上ではもう春が来ているらしいけれど、朝夕はまだまだ肌寒い。

福山までは新幹線に乗ってしまえばおよそ1時間で着いてしまうのだけど、今日は「春色の汽車」に乗るため片道4時間かけて在来線で行く。「春色の汽車」が走っているのは兵庫県の姫路駅より先の区間なので、まずは西へ向かう新快速に乗り込もう。

神戸駅を過ぎてからしばらくすると、車窓から海が望める。この景色を見ながら通勤・通学をする人たちは、きっと毎日が楽しいだろうなぁ……

▲奥に見えるのは明石海峡大橋と淡路島だ。日本標準時子午線(東経135度線)が通っているのもこのあたりである

「春色の汽車」に乗車!

姫路駅で新快速を降りると、すぐ隣のホームには「春色の汽車」の1つ目、黄色のベテラン電車が待っていた。

【鉄道マニア向け難問クイズ】この写真を撮ったのは姫路駅ではありません。何駅でしょう? ヒント:右手奥の白い車両に描かれているキャラクターを拡大してみると……?(※答えはこちら

大阪方面からの接続は非常にスムーズで、私が列車に乗り込むとすぐに発車した。ここから本格的な「春色の汽車」の旅の始まりだ。

古い車両とはいえ車内は綺麗にリニューアルされていて、一見すると関西エリアでよく見る新型車両とほとんど変わらない。

しばらくすると車窓にはのどかな田畑が広がる。この黄色いレトロな車両が走る姿を写真に撮ったら、野山に咲いたタンポポのように見えるのかもしれないなぁ。

20分ほど乗車したのち、途中の相生あいおいという駅で降り、隣のホームに停まっている「Urara」に乗り換える。

▲ちなみに「相生(あいおい)」は日本の駅名を五十音順に並べると先頭になる
▲岡山県内には大きな河川が3つ流れている。東から順に吉井川、旭川、高梁(たかはし)川

列車が岡山県に入ると、にぎやかな高校生たちがどやどやと乗ってくる。もしかするとテスト期間中ということで学校が午前中に終わったのだろうか。

岡山駅

そうこうしているうちに、列車は終点の岡山駅に到着する。

岡山駅は、山陰地方や四国地方へ向かう列車が数多く発着する一大ターミナル駅だ。列車の行き先を告げる電光掲示板には、出雲市、鳥取、松山、高知、高松、徳島といった遠方の地名が並んでいて、眺めているだけでもとても楽しい。

▲徳島行きの特急「うずしお」の岡山駅乗り入れは、2025年3月のダイヤ改正で廃止に。途中の駅で2回も進行方向が変わる珍しい列車だった
▲岡山駅と総社駅を結ぶ吉備(きび)線には「桃太郎線」というかわいらしい愛称が付いている

ちなみに、先ほどのクイズの答えはここ岡山駅! 四国から乗り入れてきた「アンパンマン列車」や、ホーム足元の特急「やくも」の案内表示から推測した人がいるかもしれない。

鞆の浦までラストスパート

ここからは旅のラストスパート。再び黄色のベテランの車両に乗って、ゴールの福山駅を目指そう。

やや混雑した車内を見渡すと、乗客は地元の会社員や学生と思しき人が大半だ。沿線の人たちの日常と、私の非日常が、偶然にも隣り合わせになって同じ列車に揺られている。もし私がこの地域で生まれ育っていたとしたら、みたいなことをふと考えてみる。この「春色の汽車」も、もしかすると日常の1ページになっていたかもしれない。

そして、列車はついに福山駅に到着する。

▲福山駅は3階建てで、2階が在来線ホーム、3階が新幹線ホームという珍しい構造をしている
▲福山市の人口はおよそ45万人(町田市や金沢市とほぼ同じ)
▲福山駅近くでお昼ご飯。店内BGMは『アゲハ蝶』だった。ポルノグラフィティのお二人は隣の尾道市(因島)のご出身である

福山駅からは路線バスに乗り換えて、旅の最終目的地・鞆の浦へ。

▲鞆港までの路線バス
▲筆者は内陸県(長野県)の出身なので、バスから海が見えるたびテンションが上がる
▲到着!

30分ほどバスに揺られて、ようやく目的地・鞆の浦に到着した。

バスを降りた私は、吹きつける風の冷たさに耐えかねて、コートをすぐさま着た。確かに寒い。マフラーが欲しくなるほど寒い。

だけど、これは厳しい冬の寒さではなくて、海から吹き付ける潮風の寒さだとすぐに気付いた。穏やかな瀬戸内の気候もあってか、空気はぽかぽかとしている。この町には一足先に、確かに春が来ている!

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この記事を書いた人

富取 新太

大阪大学在学中。夜行列車と海峡と古書店が好きです。

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