「学ぶこと」「知ること」をデザインの力で楽しいものにしてしまう作品を発表し続けている、デザイナーのみっけさん。
WebメディアQuizKnockでは、「みっけのクイズパレット」と題して、そのデザインの裏側にある「ものの伝え方」に迫る連載をお届けしています。
▲前回の記事はこちら!
第4弾までは、みっけさんが手がけてきた作品の数々や、デザインをするうえでの文字・色に関するポイントなど、「つくること」がテーマでした。第5弾では少し趣向を変え、デザインが正しい情報収集の役に立つ、ということをテーマにお届けします。
文:みっけ
第2回の記事の中で、私は『デザインは何かを伝えるためにある』と言いました。伝えたいことをよりわかりやすく、より魅力的に表現するのがデザインです。ですが、それを悪用するケースがあります。
伝えたいことを改ざん・捏造し表現する、いわゆる『デマ』です。
SNSが発達し、誰もが世界中に情報を発信できる世の中。デマに惑わされない力は重要なスキルのひとつです。
今回は、そんなデマを含めた『あなたを惑わす偽情報』からデザイン目線で身を守る方法をお教えします!
CASE1. 推し情報に注意!
駅で待ち合わせ中、友達が来るまで少し時間ができたあなた。暇つぶしにスマホを取り出してSNSをチェックしていると、ある投稿が目に入ります。
何気ない日常を感じる一場面ですが、これは大変危険です! この投稿にあるテレビ画面の写真、実は1位の名前をコラージュしています。
つまり嘘の画像!
今回のデザイン目線で身を守るポイントは3つあります。
フォントが他と異なっている
1位の名前以外に使われているのは「くろかね」というフォントですが、1位のみ「ニューセザンヌ」というフォントが使われています。5位と、今回コラージュされた1位とで、「斗」の文字を比較してみましょう。
点の配置や全体のシルエットなどが違いますね。
今回は同じ字があるのでわかりやすいですが、実際に同じ字があるケースはあまりないでしょう。そういったときは、同じ漢字のパーツ(はねやはらいなど)を比べてみるといいです。
こんな感じで、同じパーツでも若干違いが見られます。フォントは漢字の構成によってパーツを微調整していることが多いので、パーツが全く同じかどうかではなく「同じテイスト」かどうかを見てくださいね。
ちなみに、これは漢字だけでできる見極め方です。 漢字はパーツの組み合わせでできているのに対し、ひらがなやカタカナは筆の運びを意識した作りが多く、前後の画に影響を受けます。なのでパーツ単体で見ることができないんです。
フォントによっては可能なケースもありますが、その見極め自体がなかなか難しいのでおすすめしません!
文字の角度が異なっている
立体物を撮影した画像なので、パース(遠近感)がついています。そのため文字も少し歪んでいますね。
他の文字はパースがつき歪んでいるのに対し、コラージュされた文字は真っ直ぐです。これは立体物としてはなかなかあり得ません!
ただし、コラージュする際にパースを調整することもできるので、加工技術がそこそこある人が作れば自然に見せることができます。
質感が異なっている
テレビ画面を撮影した画像なので、テレビ特有のドット模様のようなものが見えます。しかしコラージュされた付近にはそれがありません。元の文字を消す際に塗りつぶしているからです。
最近は加工アプリのクオリティが高いので、このあたりはうまく調整できることが多いです。やたらのっぺりした部分があればあやしいですが、同じ質感だから大丈夫! と安心はしないでくださいね!
このように、コラージュ画像はさまざまな視点で見破ることができます。しかし、加工アプリの性能や加工者の技術によって難易度は大きく変わります。
今回のケースは「駅で待ち合わせ中」という時間制限のある中での事例でした。拡散したあとしばらくSNSを見られないこともあるでしょう。その間にどんどんデマが広まれば、推しに迷惑をかけるかも……!
推しの情報を見つけても反射的に拡散せず、まずは冷静に画像の隅々までチェックしてみましょう!