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第1回「思い出のクイズ」では浦和高校による『らき☆すた』事件を取り上げました、ソフロレリアです。先の記事では、

浦和高校は3年後、奇しくも再び準優勝に甘んじた第30回大会でまたしてもネットをざわつかせることになるのだが、この話はまた次の機会に取っておこう。

匂わせ発言をしていたのですが、ついにこのフリを回収する日がやってきたようです。私、プレイヤーとして高校生クイズ(全国高等学校クイズ選手権)の思い出を語るならば、避けては通れないエピソードがあります。

ではここで問題。

漢数字を使えば「32兆km」。今回はこの32兆という数字を中心に、私が見てきた高校生クイズの記憶をなぞっていきます。

準決勝の壁を越えろ!

『らき☆すた』事件の衝撃により進学先を決定してから3年後、舞台は2010年の第30回高校生クイズ、準決勝。当時の高校生クイズは「知力の甲子園」と呼ばれる路線で、4チームで決勝の2枠を争う準決勝は、やたらと桁数の大きい計算をするという形式がお決まりになっていた。

この年も例に漏れず、スタジオに入るなり見えたのはチームごとのブースにセットされた模造紙。心づもりはしていたが、絶望が我々・浦和高校を襲う。

何を隠そう、浦和はこのラウンドにめっぽう弱い。28回、29回と準決勝に駒を進めているものの、決勝進出争いに絡めず2年連続4位に甘んじている。その上今年のこのチーム、1回戦でも3問出題された計算問題をすべて落としているのだ(それでいて1回戦2位通過したの、偉くないですか?)。

始まる前から窮地に立たされてはいたものの、過去2年間先輩たちが成しえなかった決勝進出に向け「やってやろうぜ」という闘志もチーム内にあった。ここを勝ち抜ければ、憧れていた『らき☆すた』事件と同じ舞台に立つことになるわけだ。

前回大会の準決勝で浦和とともに苦杯をなめた開成もこれに通ずる思いで臨んでいたのかもしれない。その開成は田村・伊沢を擁するという、パンチの効きすぎた布陣である。

「太陽まで余裕で届いてるよね?」

さて、準決勝は最終3問目を残して、全チームが1ポイントで横一線に並ぶ。運命戦だ。自分たちに有利な問題をお願いします!

――願いは届くわけもない。無情だ。

隕石の運動エネルギーと海水の位置エネルギーをイコールでつなぐだけの、至って簡単な問題。しかし筆算をする手の震えが止まらない。桁数の確認がおぼつかない。迫るタイムリミット。白紙のままのフリップ。

え、自分たち、結局こんなところで終わるのか……?

無力感に包まれながら、模造紙に残されたそれらしい数字を書き込む。

解答オープンまでの時間は放心状態だ。もう書き直しの許されないフリップを見つめ、「太陽消火するつもりか?」と苦笑していた。

怪我の功名「32兆km」

一転、光明が差す。各チームの解答は以下のとおりだ。

旭川東      62.5 m

県立船橋    3.2×103 m

浦和        3.21×1013 km

開成        319 m

おわかりだろうか。

答えの被りがない。ここで勝ち抜けるのは多くとも1チームだけだ。

つまり当時の我々の感情は「延長戦(゚∀゚)キタコレ!!」であり、ネットを騒がせたような「いや32兆kmてwww」なんてものではまったくなかった。

そもそも「32兆km」というわかりやすく大きいオモシロ数字が明示されたのはオンエアの際のテロップが初めてであり、現場では派手に大きく外した、程度にしか思っていなかったのである。ともかく、正解発表前に首の皮一枚つながったこの瞬間は、とても晴れやかな気分だった。

延長戦は「ヒエログリフを読め」という早解き問題。ヒエログリフをある程度知るメンバー、パズル感覚で穴を埋めるメンバー、歴史の知識から答えにたどり着くメンバー。チームワークが噛み合いすぎて表情を撮るカメラが回ってくる前に電光石火で解いてしまったため、オンエアでは定点カメラの映像がメインになっているのが面白い。

▲ヒエログリフを解読しているときの様子(画像提供:日本テレビ)

▲ヒエログリフの問題の解答発表時(画像提供:日本テレビ)

――こうして我々は決勝進出を決めたのである。

ちなみにオンエア時、「32兆km」という解答がネットでネタにされたことに関しては、それを含めて第27回の『らき☆すた』に並んだ気分がしてニヤニヤしていました。計算ミスしてなかったら話題にもならなかった上にヒエログリフの見せ場も作れなかったわけで、結果オーライですよね?

「2位じゃ駄目なんですよ。1位じゃなきゃ……」

決勝は開成に惨敗。我々は準優勝に終わった。そしてこれが伊沢拓司、高校生クイズ個人2連覇の始まりである。

後に知ったことだが、浦和高校がラ・サール高校に敗れ準優勝に終わった第27回を見て高校生クイズを志した私のように、開成高校に敗れて準優勝に終わった第30回を見て高校生クイズを志した当時の少年がいた。彼は第35回高校生クイズで、開成高校とラ・サール高校に競り勝ち浦和高校に3度目の優勝をもたらした。

見出しにも使ったチームリーダー・西村の言葉はこう続く。「だから、後輩たちに優勝旗を持って帰ってきてほしいですね」

数時間で終わってしまうオンエアの裏に、何年にもわたるドラマがある。今年も高校生クイズの歴史が積み重なることが嬉しくてたまらない。

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この記事を書いた人

ソフロレリア

高橋太郎の名でも活動中。博士(農学)。植物の研究をしています。ポケットモンスターと乃木坂46とウイスキーが好きです。

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