連載「ニュース解体中」(更新:隔週月曜)
テレビやスマホに流れてくる、政治や経済のニュース。「大事そうだけど、なんか難しそう……」と思って、見過ごしたことはありませんか?
この連載では「ニュースを見るのがニガテ」な方にも向けて、いま知っておきたいニュースやその裏側を紹介。ニュースを「解体」するように、わかりやすさ・おもしろさ重視で解説します! ご意見・ご感想はXのハッシュタグ #ニュース解体中 でお寄せください。
2026年9月30日、イギリスの高等教育専門誌による「THE世界大学ランキング」の最新版が発表されました。日本勢では、東京大学が27位、京都大学が62位(いずれも前年から1つダウン)にランクイン。毎年のようにニュースになるランキングですが、そもそもあの順位って、何を表しているのでしょうか?
大学ランキングのニュースを、ちょっと違う角度から見てみましょう!
▲東京大学の安田講堂。世界大学ランキングのニュースでは、まず東大の順位が注目される
連載「ニュース解体中」のライター。大学院で公共政策を学ぶなど、政治・ニュースの話題を追うのが好き。
編集者。ニュースへの関心は人並みくらい。
そもそも「大学ランキング」って意味あるの?
「世界大学ランキング」ってよく話題になりますけど、見たことあります?
THEというイギリスの教育誌が、先日(2026年9月30日)2027年版を発表したんですけど。
ニュースで見かけました。でも、「東大が27位に下落」みたいに、順位が上がった・下がったという話ばかりが目について……。
それだけ見て一喜一憂するのも、なんだか引っかかるんですよね。そもそもあのランキングって、なんのために作られているんでしょう。
そう思いますよね。実際、「ランキングってどのくらい当てになるの?」とモヤモヤしている人は少なくないと思います。
実は大学ランキングって1つじゃなくて、いくつもあるんです。たとえば京都大学ひとつとっても、「THE世界大学ランキング」だと日本国内の大学で東京大学に次ぐ2番手ですが、「週刊東洋経済」が出している国内向けの「本当に強い大学ランキング」2026版では国内4位なんですよ。
▲京都大学。同じ大学でも、ランキングの種類によって順位が変わる
同じ大学なのに、けっこう違いが出るんですね。
そうなんです。なんでそうなるのかはあとで話すとして……。先に「ランキングってそもそも何なのか」を考えてみたいんですね。
私、大学ランキングってミシュランガイドに似ていると思っているんです。
ミシュランって、レストランに星をつける、あのミシュランですか?
そうそう、あのミシュランです。実はもともと、フランスのタイヤメーカーが「クルマでいろんな場所に出かけてもらおう」と作ったガイドブックなんですよ。
なるほど。ドライブの目的地として、おいしいお店を紹介していたわけですね。
日本では2007年に初めて東京版が出たんですけど、和食をフランス発の基準で評価することには、戸惑いの声もあったみたいで。
2009年に京都・大阪版が出るときも、常連客への影響などを理由に、掲載に慎重な老舗もあると報じられたんです。
「外国の基準で和食の良さがわかるのか」という気持ちは、なんとなくわかる気がします。
ですよね。で、それから20年近く経って、どうなったと思います?
うーん……今やミシュランの星って、けっこう重要なステータスですよね。メディアでも頻繁に取り上げられているイメージです。
まさに。2026版だと、東京の星付きのお店は160軒。19年連続で世界でいちばん星付きのお店が多い都市なんです。
三つ星の数でもパリを上回っていて、東京はすっかり「世界の美食都市」になりました。
▲ミシュランガイド東京2026年版では、160軒が星を獲得。19年連続で世界最多となった
最初は戸惑いもあったのに、結果的には東京の評価を押し上げたんですね。
そう。で、ここで注目したいのが、星を取った和食のお店が「何を変えて、何を変えなかったか」なんですよ。
ミシュランの星は、あくまで料理そのものにつけられるもの。だから、星のためにバターや生クリームを使い始めた……わけではないんですね。出汁の引き方も、魚の締め方もそのまま。
そのうえで、「外から来るお客さんの受け入れ方」を整えたお店も出てきた、と私は見ています。外国人の予約を受け付けたり、英語で料理を説明できるスタッフを置いたり。
なるほど。味はそのままで、入り口を広げたということですね。
ええ。逆に、よくないパターンが2つあると思っていて。
1つは、「ミシュランなんてくだらない」と意地を張っているうちに、気づけば常連さんが減っていくお店。
もう1つは……。
星がほしくて、味そのものを変えてしまうお店、ですか?
その通りです。お寿司屋さんでいえば、星のために明日から全部カリフォルニアロールにします、みたいな(笑)。カリフォルニアロールもおいしいけれど、それは「和食」ではないですよね。
▲海外で親しまれているカリフォルニアロール。おいしいけれど、いわゆる「和食」とは別物
自分たちのいちばんの強みを、評価のために手放してしまうパターンですね。
それはちょっと寂しいですね……。常連さんも離れてしまいそうです。
大学ランキングも、これとよく似ているんです。
特定の基準で「これがいい大学だ」と序列がつけられ、それに大学や学生が巻き込まれる状況には、さまざまな意見が出るのもうなずける話です。
じゃあ、最初にお聞きした「なんのために作られているのか」でいうと、あくまで誰かが決めた基準のひとつ、ということですか?
そういうことです。ただ、ミシュランの星で人やお金が動くように、ランキングには「経済」が生まれるんですよね。
ノーベル賞やアカデミー賞だって、誰かが「これが優れている」と決めた賞です。それでも世界中の注目が集まって、人や資金が動くわけで。
だから、ランキングに踊らされすぎるのもよくないし、「くだらない」と無視しきるのもよくない。どう付き合うかが大事なんです。
なるほど。付き合い方を間違えると、さっきのお店みたいになってしまうわけですね。
ランキングの詳しい中身も知っておきたいです。
次ページ:複数ある「大学ランキング」何が違う? 戦略で「ランキングを上げる」国と大学