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2026年2月28日。アメリカとイスラエルがイランを攻撃し、イランの最高指導者であるハメネイ師が死亡したというニュースが世界を駆けめぐった。その後も周辺国を巻き込む形で戦線が拡大し、民間人を含む犠牲者も日ごとに増える事態となっている。

▲殺害されたハメネイ師

もちろんこれだけでも深刻な出来事なのは伝わるだろうが、日本でなんとなくニュースを追っているだけでは、戦争に至った背景や問題点が見えにくい部分もある。

この記事ではアメリカとイランの2カ国にフォーカスし、「なぜこうなったのか」「今後どうなっていくのか」をできる限りやさしく解説していきたい。イランでいま起きていることは、ロシアのウクライナ侵攻をはじめ、ほかのニュースとも密接に関わっている。そしてもちろん、日本も無関係ではないのだ。

昔は友好国だった、アメリカとイラン

現在は最悪の関係にあるアメリカとイランだが、昔から犬猿の仲だったかというとそうではない。半世紀前までのイランは「パフレヴィー朝」という王様が治める国。生活の西洋化が進み、石油などの重要な資源をめぐって協力し合うなど、アメリカとは友好的な関係を築いていたのだ。

ところが1979年、貧富の差の拡大などを背景に革命が起こり、イスラム教の教えを復興すべく「イスラム原理主義」を掲げる厳格な国へと生まれ変わる。国王は逃亡し、革命の中心人物であるアヤトラ・ホメイニ師が最高指導者として君臨した。

イランには行政のトップである大統領も存在するが、この革命以来大統領より上に最高指導者が存在するという特殊な政治体制をとっている。

▲現イラン大統領、マスウード・ペゼシュキヤーン氏。「大統領」ではあるが「最高指導者」ではない

なぜ関係がこじれたのか?

革命後のイランでは、それまでの反動として西洋文化の排除が進められ、反・アメリカの国というスタンスが露わになっていく。アメリカはイランでの石油の利権を失い、中東諸国への影響力も低下する結果となった。

40年以上にわたる対立の中で、“核”の問題も浮上する。イラン国内での原子力開発は将来的な核兵器の保有につながるものとみなされ、アメリカは原油輸出の制限といった経済的な制裁をたびたび加えてきた。

核兵器には一方が撃てば相手も撃ち返し、どちらの国も壊滅するという性質が伴うため(これを「相互確証破壊」といったりする)、攻撃手段である以上に「相手に攻撃させないための兵器」ともいえる。大国・アメリカにとっては、何より対立勢力に「核を持たせないこと」が重要課題なのだ。※1

実は2010年代頃、両国の対立は一度解決に向かったこともある。アメリカ・オバマ政権下で「イラン核合意」が成立し、イランが核開発を制限する見返りとして、アメリカ側も経済制裁を緩和する、という取り決めがなされたのだ。

しかし2018年にトランプ大統領が就任すると、「弾道ミサイル開発などを制限できない不十分な内容」だとして合意を破棄。再びイランへの制裁が開始され、その後の協議でも溝は埋まらなかった。

▲核合意からの離脱を表明するトランプ氏(2018年)

そんな経緯に加え、同じく反・アメリカを打ち出していたベネズエラマドゥロ大統領の拘束(2026年1月)という「成功体験」も手伝ってか、「次はここだ」とトランプ政権が矛先を向けたのがイランだったわけだ。

アメリカはすぐに最高指導者・ハメネイ師の殺害という戦果を挙げたものの、イラン側も新しい最高指導者としてハメネイ師の次男であるモジタバ・ハメネイ師を迎えるなど、抗戦の構えをとっている。紛争は長期化する見通しだ。

背後には「ロシア・ウクライナ問題」も

この問題はアメリカ・イランの2国間だけの問題ではない。改めて「世界の問題である」ということを強調しておこう。

この紛争は、現在まで4年以上続くロシア・ウクライナ戦争とも関係している。イランは「反米・反欧米」という立場からロシアと距離が近く、合同での軍事演習も行う関係性だ。対するアメリカも、ウクライナに相互的な支援を要請している。

つまり今後、中東がロシア・ウクライナ戦争の間接的な戦闘の場になることも否定できないのだ。

日本の立場は相当難しい……どう振る舞う?

では、アメリカと同盟関係にある日本は、今回の問題をどう見ているのだろうか。

3月19日のトランプ大統領との会談で、高市首相はまず「イランによる核兵器開発は決して許されない」という立場を改めて示した。そのうえで、原油輸送の国際的な要衝となっているホルムズ海峡を事実上の封鎖としたり、船の安全を脅かしたりするイランの行動を「深刻に懸念し、非難」している。

▲中東産の原油タンカーは、ホルムズ海峡を通って各国を目指す

ただ、日本には日本の難しさがある。日本はアメリカの同盟国である一方で、イランとも伝統的に友好関係を保ってきた国でもある。アメリカ側につかないわけにはいかないが、かといって身軽に動けるわけでもないのだ。

トランプ大統領は日本に対して、ホルムズ海峡の安全確保で「もっと役割を果たす」よう求めたと報じられているが、日本側は「自衛隊の派遣といった軍事的な協力には憲法や法律上の制約がある」という立場を示した。

今回の問題は何も政治の駆け引きだけに関わる話ではなく、一般国民の生活とも関係が深い。日本は中東の石油にエネルギー源の多くを頼っているため、ホルムズ海峡の封鎖が続けば供給が停滞し、電気料金の更なる高騰を招くことになる。

▲事態が夏まで長引けば、冷房の使用にも影響が出かねない

そこで日本政府は、軍事面ですぐ前に出るのではなく、別の形で協力しようとしている。アメリカ産エネルギーの生産拡大に取り組むことを提案したほか、「ホルムズ海峡の安全な通航を守る取り組みを支持する」といった内容の共同声明にも加わった。

いま日本が迫られているのは「アメリカに協力するかどうか」というよりも、「どこまでを引き受け、何で貢献するか」という難しい選択なのである。


連日報道されているイラン情勢は世界の問題であり、また日本の問題でもある。「ニュースとニュースの関連」に意識を向けてみると、スマホやテレビで見た情報に「なんとなくわかった」「よくわからない」以上の感想を抱けるはずだ。

※1^その監視をくぐり抜けて核保有国となったのが北朝鮮。北朝鮮は、核を持つことによって「体制を簡単に崩されなくなる」「国際社会における立場が無視されにくくなる」といった効果を得た。

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【画像出典(画像を一部加工しています)】
ハメネイ師:Wikimedia Commons khamenei.ir CC BY-SA 3.0
マスウード・ペゼシュキヤーン氏:Wikimedia Commons khamenei.ir CC BY-SA 4.0

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この記事を書いた人

Alex

シンガポール在住。現在はシンガポール国立大学・リークアンユー公共政策大学院で公共政策を研究しつつ、(株)batonの海外業務も担当しています。 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)出身。世界情勢・国際関係の面白さを伝えていきたいです。

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