連載「ニュース解体中」(更新:隔週月曜)
テレビやスマホに流れてくる、政治や国際関係のニュース。「大事そうだけど、なんか難しそう……」と思って、見過ごしたことはありませんか?
この連載では「ニュースを見るのがニガテ」な方にも向けて、いま知っておきたいニュースやその裏側を紹介。ニュースを「解体」するように、わかりやすさ・おもしろさ重視で解説します!
国際情勢に詳しくなくても、このニュースを一度も聞いたことがない……という人は少ないだろう。
「北朝鮮がミサイル発射」
4月19日
北朝鮮が複数の弾道ミサイル発射 朝鮮半島東岸付近に落下かhttps://t.co/K4BFT5KySg #nhk_news
— NHKニュース (@nhk_news) April 19, 2026
4月8日
3月14日
2026年に入ってからだけでも、北朝鮮の弾道ミサイル発射は5回にのぼる(2026年5月24日現在・防衛省集計)。
「なんだかおっかない国」「日本のすぐ近くにある、得体の知れない国」——北朝鮮に対して、そんなイメージを抱いている人も多いだろう。
そもそも「北朝鮮」という国はどこから生まれて、なぜミサイルを撃つような国になったのか? なぜ日本は北朝鮮と国交を結んでいないのか? 謎多き国・北朝鮮の実態をみていこう。
なぜ「北朝鮮」と「韓国」があるのか
北朝鮮という国の成り立ちを知るには、まず北朝鮮と隣国・韓国が領土をもつ朝鮮半島の歴史を追うのがいいだろう。
朝鮮半島は北にロシア、西に中国、東に日本という3つの大国に囲まれた位置にある。時代によって半島全体を支配する国があったり、複数の国が分かれて争ったり※1……と事情はさまざまだが、朝鮮半島の国に共通しているのは、周囲の大国についたり離れたりして、その時々で生き残りをかけてきたということだ。

時は第二次世界大戦の終戦後。朝鮮半島から日本が引き揚げると、北緯38度線を境に北側をソビエト連邦(ソ連)、南側をアメリカという2つの大国が占領する事態になった。
ここで、「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」「大韓民国(韓国)」という2つの国が成立し、今に至る。1948年のことだ。
そして1950年、北朝鮮と韓国のあいだで朝鮮戦争が勃発。両国を支援するソ連・アメリカによる代理戦争の様相も見せつつ戦局は泥沼化し、(1953年に休戦協定が結ばれたものの)現在まで和平は実現していない。
韓国は憲法で「韓半島(=朝鮮半島)は自国の領土」と定めているくらいだから、溝を埋めるのは難しいと言わざるを得ないだろう。※2
なぜ日本は、北朝鮮を「国」として認めないのか
日本はその北朝鮮と韓国のうち、韓国だけを国家として認め、北朝鮮を「国家」として承認していない。だから日本に「北朝鮮大使館」はないし、正式な外交関係(=国交)も結ばれていない。※3
日本が北朝鮮を承認しない理由はさまざまあるが、筆者は次の2点が特に重要だろうとみている。
ひとつは朝鮮戦争の際に、日本がアメリカ(韓国)側についていたこと。当時の世界は、アメリカを中心とした「西側諸国」と、ソビエト連邦を中心とした「東側諸国」による冷戦の真っ只中。アメリカは資本主義・自由主義といった価値観を同じくする国として韓国を「西側」に位置づけ、日本もそれにならって韓国を承認、対立する北朝鮮は承認しなかった、というわけだ。

もうひとつは、日本人拉致問題が解決されていないことだ。北朝鮮は1970年代以降、多くの日本人を北朝鮮に連れ去ったとされており、日本政府が拉致被害者として認定した17名のうち、日本への帰国が実現したのは5名にすぎない。
日本海上空を通過するミサイルの発射をはじめ、国際法への違反行為も問題だ。「こうした事情が解決されない限り、国として承認しない」という日本政府の姿勢は、客観的にみても理解できるものだろう。
北朝鮮はなぜミサイルを撃ち続けるのか
ようやく本題だ。なぜ北朝鮮は、国際法に違反してでもミサイルを撃ち続けるのか?
筆者の考えでは、主に3つの目的がある。
1つめは、示威行為。日本海に向かってミサイルが放たれれば、日本の防衛大臣は記者会見に立たざるを得ず、各国の報道機関もそれに反応する。
1発のミサイルには、世界中の国々に対する「俺たちはこれだけのことができるぞ」というメッセージが込められている、ともいえるのだ。
▲ミサイル発射事案を受け、臨時会見する小泉防衛大臣
2つめは、「新商品のショールーム」としての発射。
もしも日本の領土に北朝鮮のミサイルが落ちて人的被害が出ようものなら、日米同盟の原則にしたがってアメリカが反撃を加える可能性は低くないだろう。しかし現状、ミサイルは日本に落ちない「スレスレ」のところを通過し続けている。
あまり知られていないかもしれないが、北朝鮮のミサイルは売り物になっていて、しかも一定の商品価値を有しているのだ。
近年は人手不足に悩むロシアに軍事協力し、その見返りとしてロシアの軍事技術を得てミサイルの性能を更に高めている、という情報もある。※4「スレスレ」の技術力を定期的にアピールすることは、軍事力強化を図る国々に向けた格好のセールストークのようなものだといえる。

そして3つめ、これがいちばん本質的な目的だが、核兵器の保有による安全保障である。
イラン情勢の記事でも紹介したように、核兵器には「使う」だけでなく「相手に攻撃させないための武器」という機能が備わっている。北朝鮮という決して豊かでない国でも、ひとたび核を持てば、大国も無視できない存在になる。

今後、日本と北朝鮮の国交の可能性は?
では今後、日本と北朝鮮が国交を結ぶ可能性はあるのだろうか。
完全にゼロではない、というのが筆者の見立てだ。根拠は、北朝鮮が発しているシグナル。
たとえば2024年元日の能登半島地震の際、北朝鮮の最高指導者・金正恩氏は岸田総理(当時)に宛てて、お見舞いの電報を送っている。そこには「日本国総理大臣 岸田文雄閣下」と、岸田首相に立派な敬称まで付けた丁重なメッセージがあったのだ。これは「いざというときはよろしくね」というサインではなかろうか。少なくとも、対話の余地はあるように思われる。
対話に向けたネックはやはり、前述した通り拉致問題だ。被害者の方々の帰国がかなっていない状況で、日本の世論が国交回復を許すはずがない。
アメリカのトランプ大統領と蜜月の関係だった安倍晋三元首相の在任中は、拉致問題の解決に向けて強力な連携を要請し、トランプ氏も北朝鮮との首脳会談で問題を取り上げる、といった成果も生まれていた。日朝関係を前進させるには、アメリカとの向き合い方もまた重要になってくるだろう。

ニュースを「解体」!
さて、今回からスタートした「ニュース解体中」は、いま話題のニュース・ニュースでよく聞くことばを、ニュースがニガテな方にも楽しく読んでいただくことを目指すシリーズです。
以下に気になるトピックがあれば、ぜひ次回以降(原則、隔週月曜更新)もお付き合いください。
今後の主なラインナップ(予定)
- 6月に開催「G7サミット」 誰が、どんな話をするの? 何が重要なの?
- 就活生が憧れる「外資系企業」 日本人の入社は、お得なことばかりではない?
- 「日経平均株価」 上がったり、下がったりが毎日ニュースになるのはなぜ?
記事への感想・ご意見、取り上げてほしいテーマなど、ぜひ #ニュース解体中 で教えてください。次回もお楽しみに!
※1^ 古代の高句麗・新羅・百済といった国名は、歴史の授業で習った方にはおなじみかもしれない。
※2^
北朝鮮の憲法には「祖国統一を目指す」という旨の記述があったが、今年になって削除され、「朝鮮半島北側を領土とする」旨の記述が追加されている。とはいえこれは当面の摩擦を避ける狙いであって、おそらく「朝鮮は1つの国家」という考えを完全に捨てたわけではないだろう。
ちなみに北朝鮮・韓国についてもっと知りたい方には、Netflixの人気ドラマ『愛の不時着』を見るのもおすすめだ。もちろんフィクションなのでデフォルメされている部分もあるけれど、両国の微妙な関係がとてもリアルに描かれている。
※3^ 意外に思えるかもしれないが、世界を見渡せば約160の国が北朝鮮を国家として承認していて、実は承認していない日本のほうが少数派だ。国交を結ぶ事情はさまざまで、アフリカの一部の国々のように軍事的な結びつきが強い例もあれば、北朝鮮への人道支援を行い、欧米諸国との仲介役を担っているスウェーデンのような国もある。
※4^ ロシアがウクライナに発射した北朝鮮製の弾道ミサイルについて「命中率は約2割にとどまる」との報道も出ており、北朝鮮の技術力を疑問視する向きもある。
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【画像出典(画像を一部加工しています)】
ミサイル:Wikimedia Commons Stefan Krasowski CC BY-SA 2.0










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