こんにちは、オグラです。
皆さんは韓国の地名をいくつ言えますか?
福岡から船で行くことができる釜山(プサン)、国際空港のある仁川(インチョン)、軍事境界線のある板門店(パンムンジョム)などが挙げられると思いますが、真っ先に挙がるのは、韓国の首都ソウルではないでしょうか?
ここで疑問に思うのは他の都市は漢字でも表せるのに、ソウルだけなぜかカタカナが使われていることです。北朝鮮の首都、平壌(ピョンヤン)も漢字で表わせますし、ソウル市内の観光地明洞(ミョンドン)や景福宮(キョンボックン)も漢字で表記できます。
どうしてソウルだけ漢字の表記がないのでしょうか?
韓国語における「固有語」と「漢字語」
まず、日本の例
日本語を分類すると、日本で古くから使われてきた和語(やまとことば)、中国由来の漢語、その他の外国から伝わった外来語に分けられます。
例えば山を訓読みした「やま」や「てにをは」などの助詞は和語で、山を「サン」と音読みする「山地」は漢語です。
韓国語では
韓国語(朝鮮語)も同じように、朝鮮半島で古くから使われてきた固有語と、中国由来の漢字語、その他の外来語に分けられます。朝鮮半島は地続きで中国と接していたため漢字の影響が強く、全体の約6〜7割が漢字語であるといわれています。
漢字かな交じりで書く日本語とは違い、現代の韓国語は漢字語も固有語もハングルで表記することがほとんどですが、漢字語は漢字でも表すことができます。
一方で現代の韓国語には訓読みがないため固有語は漢字で表すことができません。日本語では訓読みによって「やま」と「山」が対応していて、「やま」を漢字でも表すことができますが、韓国語ではこのような対応がないので固有語は漢字では表せないのです。
ソウルは固有語
ここまで来れば話が見えたと思いますが、ソウルをカタカナでしか表せないのはソウルが固有語だからです。
ソウルは古くから重要な地であり王朝によって名前が変えられるなどして漢陽や漢城、京城、京都など様々な呼び名がありました。
日韓併合後、日本は京城を正式名称として採用していましたが、第二次世界大戦の結果、韓国が日本から独立すると固有語であり一般名詞として「みやこ」という意味があったソウルが正式名称となりました。
他の地名はなぜ「漢字語」なのか
釜山など他の地名が漢字語であるのはいくつか理由が考えられます。
まず新しい名称をつくる際には表意文字である漢字を組み合わせたほうが便利であるということです。現在の韓国でも人名などの新しい名称の多くは漢字語から作られています。
他にも20世紀に至るまで行政文書は漢文で書かれることがほとんどだったため、漢字の地名のほうが便利であったことなどが考えられます。
中国語での表記は首尔(首爾)
ソウルはハングルでしか表すことができないという固有語であると分かりました。では、漢字しか使わない中国語ではどう表記するのでしょうか?
中国語圏では長らくソウルを李氏朝鮮の時代の名称であった汉城(簡体字、繁体字では漢城)と呼んでいましたが、ソウルの音とは対応していなかったため2005年に首尔(簡体字、繁体字では首爾)の表記に改められました。
どうしてもソウルを漢字表記にしたくてたまらないという方は首尔を使ってみてはいかがでしょうか。
参考文献
- 増田忠幸(2005)『韓国語のしくみ』白水社
- 砂本文彦(2009)『図説 ソウルの歴史』河出書房新社