4歳から20年間、楽譜を読み続けているはぶきです。
さて、「楽譜」と聞いてどんなものを思い浮かべますか?
皆さん共通して「音符の書かれた五線紙」を思い浮かべるのではないでしょうか。
▲私たちが想像する楽譜のイメージ
「五線譜」を楽譜に使用することは、ほとんどの方がご存知のことでしょう。では、五線譜がなぜ「五線」になったのかはご存知でしょうか? 私は20年間、なぜ線が5本なのか全く考えたことがありませんでした。
そこで、今回は「なぜ五線譜は五線になったのか」について調べてきました。
▲五線譜
理由はわからない!
結論から書いてしまうと、なぜ線が5本になったのかは、今回の調査ではわかりませんでした。
ただし、15世紀〜16世紀の鍵盤楽譜によく用いられた記譜法で五線が用いられることが多く、現在の五線譜はこの記譜法が元になっているといわれています。
では、楽譜はどのような発展を遂げて、現在の形になったのでしょう。
世界最初の楽譜は?
現存する古い楽譜のひとつに、古代ギリシアのものがあります。器楽譜と声楽譜の2種類があり、前者は古代文字、後者はギリシア文字を用いたタブラチュア譜(文字や記号などで楽器の奏法を表示する記譜法)で書かれています。
また、古いタイプの楽譜として有名なものに、9世紀〜10世紀ごろに成立したネウマ譜と呼ばれる楽譜があります。この記譜法は、『グレゴリオ聖歌』などに使用されました。
▲ネウマ譜
ネウマ譜とは、メロディの動きを曲線や点を使って表す記譜法です。
画像のネウマ譜では音の高さを把握することができますが、最初期の譜面は直線と曲線だけを使用していたため、どの音で歌い出し、何音上り下りするのかなど、正確なメロディは読み取ることができませんでした。また、リズムの解釈についても、不明な点が多いとされています。
五線が世界標準になったワケ
その後、さまざまな記譜法を経て、15世紀末〜16世紀には白符定量記譜法やタブラチュア譜が使用されるようになりました。定量記譜法は、先の時代よりも自由なリズムを表すことができる記譜法です。
▲タブラチュア譜(1554年)
当時はこの2種類の記譜法がメジャーでしたが、それとほぼ同時期、鍵盤楽器のための、五線を多用する記譜法が少しずつ発達していきました。
記譜法は、表したい音楽の時代や場所に合わせて作られています。現在の五線譜が鍵盤楽器の記譜法から発展したということは、17世紀以降の音楽がオルガンやチェンバロ、ピアノといった鍵盤楽器を中心に発展していったということなのです。
つまり、現在国際的に五線が使用されているのは、それだけ西洋音楽が世界に浸透している証ということでもあるのです。
五線以外の楽譜いろいろ
実は現在の五線譜も、完璧ではありません。先程述べたように、現在国際的に使用されている五線譜法は西洋音楽と密接に結びついた書法のため、アジアなど他の地域の音楽を五線で表示することは難しいのです。例えば、箏の伝統的な楽譜は、弦の種類を表す、一から十に斗・為・巾を加えた13種類の漢字、カタカナ、特殊な記号などを用いて書かれています。
また、五線がメジャーになる前の西洋音楽にも、六線や七線、文字譜、さらには右手と左手で線の数を変更している楽譜がありました。これらは、必要に応じて線の本数が増やされたり、逆に必要がないので文字に省略されたと考えられています。
もっと身近な例だと、音の高さの種類が少ない太鼓のような打楽器で用いられる三線や一線などがありますね。他にも、ギターの楽譜によく使用される「タブ譜」も五線ではありません。ちなみにこの「タブ譜」は、先程出てきた「タブラチュア譜」の略なのです。
五線だけが楽譜じゃない!
五線譜は、西洋音楽の発展とともにメジャーとなった記譜法でした。
私たちは、楽譜の発展のおかげで何百年も前の音楽を演奏でき、そして新しい音楽を書き残すことができます。
皆さんもぜひ、さまざまな時代と場所の楽譜を読んで、さまざまな音楽を演奏してみてくださいね!
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