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解説
正解は「フィンセント・ファン・ゴッホ」でした。
▲代表作『星月夜』。ざわめく夜景に吸い込まれそう
オランダで生まれ、フランスで多くの制作を行ったゴッホは、印象派や浮世絵の影響を強く受け、強烈な色彩と大胆な筆致を駆使した独自の画風を追求しました。彼は多くの自画像を残しており、その変遷を追うとさまざまな背景が見えてきます。
例えば、1枚目の自画像は彼が描いた別の作品の裏側から発見されました。展示会に出品される際行われたX線検査で、100年以上にわたり隠されてきた自画像が明らかになったのです。
▲『白い帽子をかぶった農婦の顔』……この裏に隠れゴッホがいる
彼の自画像に度々描かれたつば付きの帽子やネッカチーフから、わずかながらゴッホらしさがうかがえます。ちなみに彼は制作費の節約のため、よくキャンバスを再利用していたそうです。
2枚目の自画像も、特徴的な帽子を被っています。口にくわえられたパイプは、他の多くの自画像でもモチーフとして描かれており、愛煙家であることが伝わってきます。
3枚目の自画像は、左顔面を前に姿勢が取られています。背景のタッチも極めてゴッホらしい大胆さが保たれています。この作品は晩年(1889年)に描かれました。ある時期を境に、同じような構図の自画像が増えたのですが、みなさんは、その理由を想像できるでしょうか?
答えは「左耳を怪我してしまったから」です。1888年、同じく画家であるゴーギャンとの共同生活を送る中で、ゴッホは自らの耳をカミソリで切り落としてしまいます。これは「耳切り事件」として後々まで語られ、以来彼の肖像画は左耳を隠すように描かれるようになったのです。
▲こちらは左耳を前にした自画像。耳、痛そうですね
ゴッホは生涯を通して精神疾患に苦しめられ、入院や静養を繰り返しましたが、治療叶わず、1890年に自らの手でこの世を去ります。
およそ10年という短い活動期間の中で、強烈な作品を数多残したゴッホ。肖像画に潜む鋭い眼光は、まさに彼の激動の人生と重ね合わせられることでしょう。今もなお、彼の作品と生き様は、多くの人の心を掴んで離しません。
1枚目の自画像が潜む『白い帽子をかぶった農婦の顔』はイギリスのスコットランド国立美術館で、2枚目の自画像はオランダのファン・ゴッホ美術館で、3枚目の自画像はフランスのオルセー美術館で見ることができます。
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