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ランドマーク税理士法人

こんにちは、服部です。

昨今、「カジノ解禁」などといった話題がチラホラ聞こえています。

カジノ解禁ですよ? みんなもっと大挙してカジノについて話していてもいい気がするのに、「ボジョレー・ヌーボー解禁」のような盛り上がりにはいまいち届いていません。それともこの冷めてる雰囲気を感じているのは僕だけでしょうか。

もちろん、「賭博」や「ギャンブル」に対しての悪いイメージはあるでしょう。しかし、身近にひしひしと熱気を感じる競馬や宝くじとの違いは、いったいどこから来ているのでしょうか。

これは、12月に国会を通過した「カジノ法」に関連するカラクリがあります。

とりあえず、どのくらいカジノについてご存知か、チェックから入りましょう。

カジノというものがあまり身近でないだけに、2択でもそこそこ苦戦したのでは? 新聞やテレビでの議論を深めるために、今回の法律で何が変わってゆくのか、簡単に確認していきましょう。

目次

「カジノ法案」って結局どういう法律?

ニュースなどの見出しは「カジノ法」などとなっていますが、これはマスコミがそう呼んでいるだけです。

正式名称は「カジノ法」ではありません。「統合型リゾート(IR)整備推進法」です。

統合型リゾート(IR:Integrated Resort)とは、ショッピングモールやホテル、会議場やスタジアムなど、観光客を呼び寄せるいろんな魅力的な施設を集めた複合施設のこと。

IRの代表例として世界的に有名なのが、シンガポールの「マリーナ・ベイ・サンズ」です。今やみんなの憧れ。僕も近いうちに行ってみたい……!

marina bay sands

Marina Bay Sands / Via .en.wikipedia.org

さて、おそらく次に沸く疑問は「そんな観光施設のためにわざわざ法律がいるの?」というあたりでしょうか。答えを言うと、ずばり「統合型リゾート」の目玉施設がカジノだというわけです。

普通に暮らして普通に観光していたなら「マリーナ・ベイ・サンズ」にカジノのイメージはないでしょうけれども、バッチリ併設されているんです。広さ的にはマリーナ全体のほんの一部なんですが、収益はカジノ部門が全体の80%近くを占めている!

マリーナ決算2016.04-06 マリーナ・ベイ・サンズの、2016年4月-6月期の決算。

他にカジノ街として有名なマカオのカジノも、おおよそホテルとセットで運営されています(グランド・リスボアなど)。また、もともとマカオは近くに世界遺産となっている建築などが多く、カジノでも観光客を多く集めるようになったのは比較的最近のことです。

そんなわけで、「IRには、目立ちはしなくてもカジノが外せないんだ!」「でも、日本では賭け事は禁止されているよ?」「じゃあ法律作って認めちゃえ!」というのが今回の流れです。

刑法には賭博全体を禁じる条文(185~187条など)がありますが、別の条文(35条)では「法律で決めて認められたことならやってもいいよ!」という旨も書かれています。宝くじや競馬、パチンコなどのギャンブルは、それぞれ対応する法律を作って例外的に認めている状態です。

今回の「IR整備推進法」には、「カジノを適切に運用しようね」という目標は書かれていますが、カジノをどのように認めるか(どこまでがオッケーなのか? どういう規制や罰則がかかるのか?)という具体的な内容はありません。

つまり、今回の「IR整備推進法」とは別に、本当の意味での「カジノ法」をこれから作っていく必要があるのです。

カジノの良いとこ・悪いとこ

統合型リゾートにカジノが必要だという意見は、どんな議論を生んでいるのでしょうか。

◯:日本への観光客や観光収入が増える

これは私たちが「マリーナ・ベイ・サンズに行きたい!」と思うのと同じ理屈ですね。これを利用して周辺の観光地にも客を呼び込めないか、という魂胆なワケ。観光客だけでなく、話題の「MICE」(展示会・国際会議など)も誘致できるのでは、と期待されています。

リゾート整備と大阪への万博誘致を同時に行い、相乗効果を目指す動きもあるようですが、これが成り立つには海外に負けないような素晴らしい施設を用意しなければなりません。

◯:違法なギャンブルに歯止めをかけられる

現在の私たちの知らないところで、法律に違反した賭博が行われています。一部でもカジノを認めて公的機関が運営することで、違法賭博に行っていた客を取り込み、違法賭博を少しずつ減らしていくことができると考えられています。

×治安が悪くなる

私たちが「ギャンブル」に対して抱く悪いイメージの大半はこれではないでしょうか。運営次第ではありますが、お金の絡む賭け事ではトラブルが起きがちです。

×ギャンブル依存症の人が増える

パチンコや競馬に熱中して破産というのはよくあるシナリオですが、これにカジノが加わることで、さらにギャンブル依存の人を増やすおそれがあります。

ただし、そこらの街にカジノを作るならともかく、統合型リゾートだとしたら、客は上流層がメインになるでしょう。上記のデメリットは、裕福な客層を想定することで低減されることも考えられます。

△どちらともいえない点も……

たとえば、統合型リゾートの運営には、そこで働く人々が必要です。不景気で仕事を失う人々が多いときにはリゾートが働き口になりますが、景気が良い時には、街の工場などに人手不足を強いる可能性があります。少子化で現役人口が減る時代、人手不足は深刻な問題ですね。

海外に学ぶ、カジノ解禁でも冷めてる理由

ここでもう1つ、なぜ「カジノ解禁」の話題がそれほど日本人に浸透していないのか、理由と考えられることを「マリーナ・ベイ・サンズ」の例から紹介します。

マリーナのカジノは、外国人観光客は行き放題なのですが、なんとシンガポールの国民は、カジノ場に行くのに入場料を支払う必要があるのです!

その名も「カジノ入場税」、1回100シンガポールドル(およそ8000円)。しかも、入って24時間経つと滞在許可がリセットされます。つまり、カジノに行くのに、賭け以外で毎日8000円が必要になるんです。

シンガポール人と外国人とで入場レーンも隔てるという徹底ぶり。おそらくパスポートなどを確認されるのでしょう。

ギャンブル依存対策などのため、この入場税システムは日本にカジノが出来たときにも導入されると考えられます。「日本のカジノで日本人から金を取るんじゃあ」というわけで、マスコミも「カジノに行こう!」といったような雰囲気にできないわけですね。

しかし、本当に入場税が日本人をカジノから遠ざけるかというと、どちらともいえません。

たとえば「せっかく8000円払ったんだから、せめて元を取らないと」という心理がはたらき、長時間賭けにこだわるなど、ギャンブル依存を助長する可能性もあります。また、公営ギャンブルへの入場が有料だと、無料の違法ギャンブルに客が流れることも考えられます。

まとめ

「統合型リゾートの一部として」「日本人には入場税がかかる」などの条件付きゆえに、盛り上がりには欠けていると考えられます。

しかし、今回「IR整備推進法」が通った以上、統合型リゾートでカジノが解禁されるのは確実でしょう。2025年の万博を誘致し、それまでを目標に大阪で統合型リゾートを開業する、というプランが有力です(夢洲(ゆめしま)といった具体的な候補地も既に挙がっています)。

12月にひとまず法案が通ったことで議論が下火になりつつもありますが、実際に認可・運用するための法律はこれから作られていきます。議論はむしろこれからが本番です。

この機会に優先すべき点を比較して、しっかり議論を煮詰めてほしいところです。

果たして、カジノ解禁は吉と出るか凶と出るか……。いや、別にカジノ解禁の善し悪しを賭けているわけではないですよ!!!

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この記事を書いた人

Kosuke Hattori

東大経済学部を卒業しました。各記事が学びと発見への新たな入口になればと思います。よろしくお願いいたします。

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