コジマです。
太陽光とか、地熱とか、人類は発電に使えるエネルギーを常に探してきた。
再生可能エネルギーですべての電力をまかなえるようになるのはまだまだ先だろうが、科学はそれに向けて少しずつ進んでいる。
ところで、自然界には誰もが目にしたことがある強力な電気がある。そう、雷だ。
え、それなら雷を集めて送電線に流せばええんちゃうの?
そもそもなぜカミナリが……?
雷については数多くの研究がなされているが、実はその発生原理について完全には解明されていないらしい。
定説としては、まず雲の中にある氷の粒が帯電する。これが雷雲で、これが発達して電圧が大きくなると(※)「雷が落ちる」わけだ。
※電気を通さない「絶縁体」でも高い電圧をかけると電気を通す。空気も絶縁体なので、非常に大きい電圧が生じると雲から地面への電気の通り道ができ、落雷が起きる。
雷が具体的にどの程度強い電気なのかについても諸説あり、とりうる幅も広い。それらの中間あたりのキリの良い数字をとってくると、電圧が1億V(ボルト)、電流が10万A(アンペア)。ピカチュウもびっくりの電撃だ。
雷は一瞬で落ちるので、その時間を0.01秒としよう。この雷を集めるにはどうすればいい?
実際に発電してみよう
雷をキャパシタで集めることにしよう。キャパシタ(コンデンサともいう)とは、2枚の金属の間に絶縁体を挟んで電気を保持できるようにしたもの。
キャパシタが保持できる電気量(電荷)は電圧に比例し、その比例定数は静電容量と呼ばれキャパシタによって変わるが、電気量と電圧が分かれば必要な静電容量が分かる。計算してみよう。
電圧は先ほど述べた通り1億V。電気量は電流×時間で求められて、1000C(クーロン)。これから求められる静電容量は1000÷1億で0.00001F(ファラド)=10μF(マイクロファラド)。
F(ファラド)は静電容量を表す単位。キャパシタに詳しくないとピンとこない単位だが、これくらいの静電容量をもつキャパシタはそれほど珍しくない。なんだ、雷集められんじゃん。
ところが上の計算では実は重大なことを見逃している。
そもそも1億Vに耐えられるキャパシタなど存在しないのである。キャパシタの耐電圧はせいぜい数百kVで、変電器で電圧を下げるなどしなければキャパシタのほうが破壊されてしまう。
さいきょうのキャパシタをてにいれた!
それでは、仮にキャパシタの問題が解決したとして、雷を集めるとどれだけの電力になるのか。
1億Vの電圧で10万Aの電圧を0.01秒流したとき、発生するエネルギーはその掛け算で100GWs(ギガワット秒)=28MWh(メガワット時間)。
1世帯が1日で使うエネルギーは約12.7kWh(キロワット時間)(※)だから、雷1発分のエネルギーは2200世帯分の電力1日分に相当するということになる。
※資源エネルギー庁のデータ(2009年の年間消費エネルギーから算出)。
これは、発電に使うにはとても少ない。雷は毎日落ちる訳ではないし、運良く落雷してもその地域一帯を1日照らせるかすら怪しい。
しかも、この計算は落雷中に雷の威力が全く落ちないと仮定している。実際は空気を通る過程で熱が発生するため、さらにかなりのエネルギーが失われていると思っていい。
結論
というわけで、雷が電力に使われていないのは「そんなにエネルギーにならないから」。
最強のキャパシタを仮定したとしてもなお大した役に立たないのであれば、実用化されないのも頷ける。
あんなにけたたましく落ちるのに不思議なものである。