こんにちは、望月です。
幼い頃に母がよく読み聞かせをしてくれたおかげか、今でも読書が大好きです。
私は4年半前からフランスに住んでいるのですが、現地で日本語の本を探すのは至難の業。高価であったり、そもそも見つからなかったりします。そのため、日本に一時帰国するときには、毎回本を買い込んで帰ります。
そのときに必ず行くのが、本屋や古本屋。ずらりと並んだ本をじっくり見ていると、目的の本以外の新しい本に出会えたり、昔読んだ本と再会したりしますよね。私にとって心が浮き立つひとときです。
今回は私がフランスに連れ帰った、お気に入りの3冊をご紹介します。
『高慢と偏見』ジェイン・オースティン
まずは、初めての渡仏の際に荷物に入れる本として選んだこちら。10回は繰り返し読んだお気に入りの1冊です。
舞台は18世紀終わりのイギリス。ロンドン郊外の田舎町に暮らすベネット家の5人姉妹と、近所に越してした資産家の青年たちが出会うことから始まる恋愛小説です。舞踏会にやってきた青年ダーシーの態度に対し、高慢だと感じる次女エリザベスですが、高慢だと感じたのは彼女の偏見なのか? この時代の階級社会やそれに伴った女性の結婚事情が繊細に、ユーモアを交えて描かれています。
私がこの本に出会ったのは高校生のときですが、今では日本語訳・英語原文・金色に縁取られた英語特別版(保管用)・フランス語版(語学勉強用)の4冊を所有しています。日本語版を二度三度と読み返すうちに、作者の書いた原文も読んでみたくなり英語版を購入しました。英語はあまり得意ではないのですが、それでも翻訳される前の著者本人の言葉づかいや言い回しをダイレクトに感じることができ、嬉しかったのを覚えています。
内容は既に知っているので、辞書を片手に新しい本を解読するよりも簡単です。ぜひ一度、「読んだことのある本を別の言語で読んでみる」ことにチャレンジしてみてください!
『変身』フランツ・カフカ
主人公の男が朝目覚めると虫になっていた、という衝撃的な場面から始まるお話です。突然醜い姿になり、人間の言葉も発することができなくなった主人公グレゴール・ザムザと、それに当惑し冷たく当たる家族との日々が描かれています。最近話題になったカミュの『ペスト』と並び、世の不条理を描いた名作のひとつです。
興味深いのは、グレゴールに対する家族の対応がそれぞれ異なる点です。事務的に彼の世話をする妹、悲嘆にくれ息子の姿を見たくない母、哀れむこともなくただの虫のように扱う父。そして最後に訪れる家族の心情の変化。決して明るいストーリーではありませんが、「家族」が一つの共同体であると同時に、その中に個人対個人の「関係性」があることを考えさせられる一冊です。
『自由の牢獄』ミヒャエル・エンデ
エンデの代表作といえば『モモ』。読んだことがある方もいるのではないでしょうか?
エンデといえば児童文学のイメージが強いですが、実は大人向けの短編集も書いています。『自由の牢獄』はそのひとつ。中に収められている8つの物語は、ファンタジー小説でありながら哲学的な要素も含んでおり、自由・宗教・旅・選択などがテーマになっています。重めのテーマを、不思議な世界観と軽いタッチで描いているのが特徴です。
中でもおすすめは『ちょっと小さいのはたしかですが』。ローマに観光に来た男が小さな車に乗った一家に出会い、目的地まで乗せて行ってもらうことになります。既に車は家族でぎゅうぎゅう、自分の座れる場所などなさそうだと思いながら乗り込んでみると……星新一を想起させる、くすっと笑える楽しいお話です。
以上、望月おすすめの3冊をご紹介しました。好きな時に好きな本を手に取れる皆さんは、とても恵まれた環境にいると思います。少しでも気になる本があれば、ぜひ読んでみてください。