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ルービックキューブを「代数学」で考えてみる

後半パート最初の発表者として登場したのは、廣田さん。「群論」という数学の分野を使って、ルービックキューブの仕組みを分析しました。

廣田さんはルービックキューブのペンダントをつけて登場

群論とは、「決まったルールの中でものがどのように入れ替わるか」を研究する数学の分野です。たとえば、時計の針が12時間でぐるっと1周してもとに戻るように、「ある操作を繰り返すと元の状態に戻る」という性質を数式で表すことができます。

ルービックキューブには6種類の基本的な動かし方(上・下・左・右・前・後ろの面を回す)があり、それぞれの動きを「操作」として数学的に扱うことができます。また、「つながった3つのパーツを入れ替えることはできても、2つだけを交換することはできない」というルービックキューブ特有のルールも、群論の言葉で厳密に表現できます。

廣田さんはさらに、「でたらめに選んだ2つの動かし方を上手く組み合わせることによって、ルービックキューブのすべての状態(約4325けい通り!)が実現できる確率」を計算しました。膨大なパターンを、たった2種類の動きだけで本当にカバーできるのか……?

▲実際にルービックキューブを使って動きを説明してくれました

廣田さんが計算した結果、適当に2つの操作を選んでこれらを上手く組み合わせることによって、約55.1%の確率ですべてのパターンを網羅できることがわかりました。適当に選んだ2つの動きだけで、半分以上の確率で全パターンをカバーできるのです。逆に言えば、約44.9%の確率では「どうしても届かない状態が残ってしまう」ということでもあり、どの2つの動きを選ぶかによって結果が大きく変わることも、この研究の面白いポイントです。

質疑応答

質疑応答の時間には、こんな質問が。

鶴崎です。(中略)この研究は、適当に他の有限群をとっても似たような適用が可能ですか?

「有限群」とは「決まった数の要素でできた数学の構造」のことです。鶴崎は、ルービックキューブのように「たった数種類の操作しかできないのに、ゲームの全ステージをクリアできる」という手法は、他のゲームやパズルにも応用できるかを質問していました。

廣田さんは「ルービックキューブのような複雑な仕組みを持つものなら、他のゲームやパズルにも応用できる」と答えました。本来は6面を自由に回せるパズルが「あえて適当に選んだ2つの動きで解いても解ける」というルールがわかっていれば、いわば「縛りを加えた遊び方」という新しい楽しみ方ができる可能性があることを理論的に説明しました。

歌舞伎十八番の「消えた脚本」を取り戻せ!

6人目として登場した小林さんは、歌舞伎についての研究を発表しました。

歌舞伎十八番」とは、歌舞伎役者の家系・市川團十郎家の得意芸として選ばれた18の歌舞伎の演目のことです。荒々しく活力のある「荒事」を中心に収録しています。

このうち、小林さんは特に『嫐(うわなり)』という演目に注目しました。『うわなり』は、歌舞伎十八番に選ばれていながら、脚本の原本が残っていないという特徴があります。

しかし、復活上演の記録が4公演残っていることから、行われた復活上演の記録をたどることで選定当時の『嫐』に近づき、失われた脚本を蘇らせることもできるのではと小林さんは考えました。

小林さんは、復活上演された4公演のうち、原本に近いと考えられる2公演について調査を行いました。その結果、2つのお話の流れはほぼ同じで、「主人公・甲賀三郎が地下に落ち、後妻と過ごす中で先妻の怨霊がよみがえり嫉妬する」というあらすじであることがわかりました。

さらに、この演目の主人公である甲賀三郎は、長野県諏訪地方に伝わる伝説の主人公と同じ人物であることも判明しました。伝説では男性同士の嫉妬が描かれていますが、復活上演では女性同士の嫉妬が中心です。この2作品に共通点があったことから小林さんは比較を行った結果、「地底を冒険するお話である」「嫉妬を扱ったものである」という2つの要素が、『嫐』の元の脚本にも含まれていた可能性が高いと考察しました。

小林さんは、『嫐』は歌舞伎十八番で唯一荒事(荒々しく活力のある豪快な劇)がなく、良くないことが起きることから上演が避けられてきたというとにかく謎が多い演目であり、脚本を紐解くのは難しいと話します。しかし、当時の歌舞伎脚本の執筆過程など、アプローチを変えた調査を行うことで「甲賀三郎伝説」とどれくらい関係があるのかもわかるのではと期待しました。

質疑応答

小林さんが「原本に近いと考えられない」と調査から除外した2公演にも目を向けた視聴者からは、「なぜこの2つの作品が『嫐』として上演できたのか」という質問が寄せられました。須貝も「調査から除外した2作品は地底冒険や嫉妬という本来の『嫐』の要素も含めたうえで作られたものなのか」と質問します。

小林さんは、除外した2公演は歌舞伎十八番の『嫐』とはいえないと推論したうえで、それでも公演情報に残っているのは、「うわなり打物」が関係しているのではないかと答えました。

「うわなり打ち」とは、離縁された先妻が仲間を集めて後妻を攻撃するという昔の風習で、女性の嫉妬心がのちに文学や芸能の題材に取られるようになりました。小林さんは、除外した2公演はこの「うわなり打物」にあたり、歌舞伎十八番の『嫐』という名前を借りて上演されたのではないかと回答しました。

細胞が左右非対称にできるのはなぜ?

最後の発表者・西川さんは、「左右非対称な細胞が作られる仕組み」を研究しました。

▲西川さんは生物分野の発表

多くの動物には左右非対称の構造のものが存在します。例えばヒラメの目の位置や、ヒトの心臓の位置や形も左右非対称です。この左右の違いが崩れると、記憶の障害や体の形が正しく作られないといった病気につながることも報告されています。

先行研究によれば、「器官が左右非対称に形成される過程では、それをかたちづくる細胞が左右非対称になっていることが関係している」ということがわかっています。西川さんは、そもそも細胞が左右非対称に形成される仕組みを解明することを目的に研究を行いました。

実験では、観察しやすいショウジョウバエの幼虫を使いました。左右非対称な形を作るのに関わる2種類の遺伝子(ミオシン1D・ミオシン1C)を強く働かせると、皮膚全体が左右逆方向にねじれた構造ができることを確認しました。

さらに観察すると、ショウジョウバエは成長の過程で、1回目の脱皮のあと(2齢幼虫の段階)にねじれが起き、それぞれの遺伝子で細胞の向きが反転していることがわかりました。

そして、細胞の内部を観察すると、「アクチンファイバー」と呼ばれる細胞の骨格を作る繊維の向きが、遺伝子ごとに逆になっていることが判明しました。これらの結果から、西川さんは、このアクチンファイバーが細胞の左右非対称性を作り出しているのではないかという仮説を導き出しました。

質疑応答

田村から「細胞の左右非対称性がわかると、非対称な器官ができあがるまではどの程度応用できる?」と質問されると、西川さんは、すべての器官は細胞からできていて、「細胞→器官→個体とつながっているので、細胞のことがわかったら器官への応用は確実にいえる」と答えました。

また、同じく田村からの「ハエに対する研究は、ヒトに対してどのくらい応用できる?」という質問には、「ショウジョウバエの研究をヒトに応用するのは現段階では厳しい」と話し、長い時間と多くの人手が必要なことを説明しました。

田村「オリンピック見てるみたいだった」

盛りだくさんな7人の発表を終え、イベントはエンディングへ。司会者も務めた言は、発表時になかなか質問できなかったと振り返りながら「聞きたいことがいっぱいあるので、後で勝手に聞きに行こうかなと思います」と発表が終わってもなお興味津々でした。

須貝は「基礎研究の話を聞いて、まわりまわって社会の役に立つかもしれないと感じた。すぐには役に立たなそうだけど、実はとても大切な研究がたくさんある学問の面白さを再確認した」と話しました。

田村は発表全体を振り返って、「オリンピックを見ている気分に近い」とコメント。「スポーツ選手が、競技を見ている私たちがやったことのない体の動かし方をしているように、それぞれの学問がどういう手法で研究されているのかが垣間見えた」「今回の発表で出てきたいろんな言葉を日常生活で使ってみると、楽しい学びのひとつのあり方になるかな」とアドバイスしました。

昨年の「卒論発表会」ではプレゼンターを務めていた言は、「去年の自分を思い出した」と話します。「ルービックキューブの発表を聞いても『ルービックキューブを解くのには役に立たない』と思ったけど、それを題材に数学の研究をしたことに意義がある。自分の研究(クイズの問題文を題材にとった研究)も同じで、この研究によってクイズが強くなるわけではないけど、クイズを題材として日本語の研究をしたら、ほかの日本語の研究の参考になるかもしれない」と、自身の研究と重ね合わせて語りました。

最後に「研究を始めた人・続けている人へのアドバイス」を求められると、須貝は「まず目の前にある道を進んでみよう。進んでいくうちに、急に自分の興味とつながる瞬間がある」と話しました。田村は「研究で得られるものは、テーマを超えて使えるものになる。1つ1つ要素を取り出して実験して前に進むやり方は、他の場面でも役立つ財産になる」と呼びかけ、「第3回みんなで卒論発表会」は大盛況で終わりました。

▲最後に発表者のみなさんと記念撮影!

アーカイブでは発表をそのままお届け!

YouTubeチャンネル「QuizKnockと学ぼう」では、卒論発表会の様子をアーカイブでいつでも見返せます! 配信を見た方も、これから見る方も、気になったシーンをもう一度確認したり、コメントと一緒に振り返ったりしながら、ぜひ何度でも楽しんでみてくださいね。

今回のイベントは、クロップライフジャパンの提供でお届けしました。

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