中学・高校時代、何かに熱中することが少なく、ほとんど小説も読まなかった私にとって、太宰治は珍しく全集を読むなどしてハマった作家だった。
太宰治の作品は、同一作者とは思えないほどバリエーションに富んでいる。ユーモアに富みテンションが高い作品があるかと思うと、鬱々と暗く世界の全てに絶望したような作品もある。私は、太宰作品を「元気な太宰」と「鬱太宰」に勝手に分けていた。しかし、どの作品でも、独特のリズミカルでたたみかけるような文体は一貫していて、まことに不思議な作家だと思う。
そんな太宰の作品を、彼の人生を交えつつ振り返る。