はじめまして。京都大学のコジマといいます。東大生じゃないです。
この度ライターとして記事を書くことになりました。
情報系とオタクカルチャー系の知識を活かした記事が書ければ、と思っています。よろしくお願いします。
以下、常体で失礼します。1本目からソシャゲの話です。
私が昨年9月のリリース当初からプレイしているアプリゲーム『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』(通称「デレステ」)。
ガチャやイベントでアイドルを集め、ユニットを組んで遊ぶ人気リズムゲームだ。
少し前になるが、先日このようなガチャキャンペーンが実施された。
新しいガシャ開催です!
— スターライトステージ (@imascg_stage) 2016年11月30日
<期間限定アイドル>
神谷奈緒(SSレア)CV:松井恵理子
宮本フレデリカ(SSレア)CV:髙野麻美
財前時子(Sレア)
<新アイドル>
浅利七海(Sレア)https://t.co/mIoEjCkfAw #デレステ pic.twitter.com/iYFPymHLrW
私の担当(※1)、神谷奈緒(※2)の期間限定SSR(※3)アイドルが登場したのである。
(※1)担当:お気に入りのアイドルのこと。『アイドルマスター』シリーズでは、プレイヤーは「プロデューサー」としてアイドルを育てる。自分がプロデュースする”担当”なのでそう呼ぶ。
(※2)神谷奈緒(CV:松井恵理子):『シンデレラガールズ』に登場するクール属性のアイドル。自分の可愛い面を隠そうとしてそれでも漏れ出てしまう可愛さが可愛い。「大人気アイドル・神谷奈緒の魅力!」というタイトルで1本記事が書けそうだが多方面から怒られるので書かない。
(※3)SSR:『デレステ』で最もレア度が高いアイドル。SSR>SR>R>Nの順にレアリティが高い。
期間限定アイドルは、文字通りキャンペーン期間中にしか排出されない(通常アイドルは実装されればいつでも出る)。
そのため、担当が限定アイドルになったプロデューサー達は、引き当てるまで引き続けるか、潔く諦めるかの2択を迫られる。
限定SSRの排出率は何と0.3%。333回に1回出る計算だ。
……ちょっと待った。
確率の話が出ると、しばしば「○○回に1回」といった表現をする。
1%なら100回に1回、0.3%なら333回に1回。
しかし、もちろん333回引いても必ず当たるとは限らない。500回、1000回と引いて当たらなかったプロデューサーの悲しみツイートが拡散されているのを見ればお分かりだろう。
そこで、このような確率を考えてみる。
「0.3%の確率で担当が出るガチャを333回引いたとき、少なくとも1枚の担当が手に入る確率は?」
少し間を置くので考えてみてほしい。
……どうだろう。分からなくても直感で。
正解は63.2%。
「さすがにもっと高いでしょ」というのが直感だと思うがどうだろう。
ポケモンなら「かみなり」の命中率が70%だ(天候を考えない場合)。大事なときに限って当たらない。
意外に当てにならない「○○回に1回」。今回は「333回ぐらいやれば引けるはず……」という同僚の皆さんの目を覚ますべく、どうしてこのような勘違いが起きてしまうのか考えてみたい。
「確率」と「割合」
「『かみなり』が命中する確率は70%だ」とか「工学部生に占める女性の割合は10%だ」とか。
「確率」も「割合」も「%(パーセント)」で表す。そのため、この2つはよく混同されやすい。
ここでいう「333回に1回」というのは割合のことであり、
「10,000回くらい引けば29~30回くらいは当たるから、割合を求めると30/10,000=1/333になるよ」
ということを言っているのではないか、と私は考えた。
サラッと「10,000回くらい引けば29~30回くらいは当たる」と書いた。書いちゃったし、皆さんも直感でそんな気がすると思う。
この感覚的に正しそうな現象を数学的に述べた「大数(たいすう)の法則」というのがある。
ここから少し数学っぽい話になるが我慢して読んでほしい。
ここに変数Xがあって、Xの値が確率で決まるとする。この変数を「確率変数」と呼ぶ。
ガチャの例では、「1回引いて当たれば1、外れれば0」となる変数Xを考えれば、確率0.003(0.3%)で1に、0.997(99.7%)で0になる。
で、このXの値を決める操作(「試行」という)を何回か(N回としよう)行って、値を毎回足し合わせて最後にNで割る。要するにXの「平均」を求める。
ガチャでいうと、例えば500回引いて1枚神谷奈緒が引けたなら、1が1個、0が499個あるのだから、この値は(1×1+0×499)/500=1/500になる。
こうやって求めた平均が、Nを大きくする(試行をたくさん行う)と理論的な平均(期待値)に近づくよ、というのが「大数の法則」である。
「期待値」とは、「確率変数と確率を掛けて合計したもの」。
ガチャの場合なら1×0.003+0×0.997=0.003。
つまり「ガチャを1回引いたときの限定神谷奈緒の枚数の期待値は0.003である」といえる。
数学っぽい話はここまで。「なぜ333回で神谷奈緒は来てくれないのか」という本題に戻ろう。
N回ガチャを回したとき、Nが十分大きければ「(当たった回数)/N」が期待値になる、という話であった。
つまり、当たった回数は(期待値)×Nになるはずで、Nを333にすれば0.003×333=0.999でほぼ1枚は出るだろうと。
それで出ないのだから、333回は大数の法則のいう「大きいN」に満たないのである。
「333回で大きいNを名乗ろうとはこの自然数の恥さらしめ」と、大数の法則様はおっしゃっておるぞ。
理解できたら、さあガチャを回そう。
ちなみに、神谷奈緒を少なくとも1枚引ける確率が90%を超えるのが767回、95%を超えるのが998回だそうな。参考までに、1回引くのに必要なスタージュエルが250個、リアルマネーで購入しようとすると約300円。すると998回なら……299,400円……。金額で見るとえげつないなあ。
ちなみに。私はガチャを120回分回したが、限定神谷奈緒を入手することはできなかった。
120回で1枚以上引く確率は30.3%。まあ……仕方ないかな……。
120回引いた中でSSR市原仁奈とSSR星輝子が当たった。SSRの排出率は1.5%なので、120回でSSRを2枚引く確率は27.0%。 神谷奈緒以外のSSRを2枚引く確率は24.7%だから、「120回回してSSRが2枚出たとき、2枚とも神谷奈緒でない確率」はベイズの定理から91.6%……あれ、結構高い……。
……などと計算しながら、担当を引けなかった悲しみを紛らわす。
今年も、クリスマスは、ひとり……。