こんにちは、イナです。
みなさんは照明を点けるのに少し時間がかかった経験はありませんか?
私は過去に、新居の蛍光灯がなかなか点かず、寿命ではないかと思って新品を買いに行ったことがあります。しかし、それはただ点灯に時間がかかっていただけだったのです。
▲まぶしいので気をつけて再生してください
一方、不思議なことに点灯に時間がかかる割にはスイッチを切った瞬間に消灯します。
では、蛍光灯を点けるには時間がかかり、消すには一瞬という現象はなぜ起こるのでしょうか? 蛍光灯の仕組みから解明してみましょう。
秘密は「蛍光灯が光る仕組み」の中に
まず蛍光灯が光る仕組みについて見ていきましょう。はじめに蛍光灯内部で放たれた電子と内部に封入されたガスに含まれる微量の水銀原子が衝突して目には見えない紫外線が発生します。この紫外線はガラス管の内部に塗布された蛍光物質を通すと私たちが普段目にする蛍光灯の光となり、明かりが点きます。
実は、この機構における一番最初の電子を放つまでの予熱の段階が光るのに時間がかかる大きな要因です。
電極から電子を放出するための装置には種類がいくつかあり、その中でスタータ式というものが身の回りでも広く普及しています。
この方式ではスイッチを入れてから数秒の間、グロースタータという点灯管が内部を予熱する必要があるので光るまでにラグがかかります。一方、消灯時には温める必要がないのでスイッチを切った瞬間に蛍光灯の光も消えます。
▲青く囲った部分がグロースタータ
ちなみに、このグロースタータはバイメタル(熱を加えたときの膨張率が異なる2つの金属を張り合わせたもの)を用いており、これが蛍光灯を点けるときに聞こえる「ジガッ、ジガッ、ビッ」という音の出どころとされています。
また、真冬などの気温が低い際には、蛍光灯のスイッチを入れてからもしばらく明るくならないことがしばしばあります。これは、周囲の温度が約25度のときに、最もよいパフォーマンスを発揮するように設計されているからです。
ただ、あまりにも遅いという場合には寿命や故障の可能性があるので交換したほうが良いかもしれませんね。
近い将来蛍光灯が消えるかも
ここまで蛍光灯の点灯に時間がかかることについて説明してきましたが、そもそもこのことに実感が湧かない方もいるかもしれません。
それもそのはず。最近では蛍光灯が少なくなり、もっぱらLEDが主流になっているからです。LEDは蛍光灯とは別の仕組みで光っているので点灯に時間がかかるということはあまりありません。
蛍光灯を近年見なくなった背景には「水俣条約(正式名称:水銀に関する水俣条約)」があります。水俣条約は人体や環境への影響が大きい水銀を規制する国際的な取り決めです。これまでも段階的に規制を強めていましたが、昨年(2023年)の「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議」において、2027年までに一般照明用の蛍光灯の製造と輸出入をすべて禁止にすることが合意されました。
既に製造された蛍光灯の販売・購入や使用は可能ですが、近い将来すべての照明がLEDに置き換わるかもしれません。
まとめ
というわけで、以上が「蛍光灯が点くまでに時間がかかる理由」でした。今回の記事の注目ポイントは以下のとおりです。
あと少しで見られなくなってしまうかもしれない蛍光灯。スイッチを入れてから蛍光灯が点灯するまでの数秒を今のうちに味わっておくのも良いかもしれませんね。
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