こんにちは、服部です。
突然ですが、日本で一番偉いのは誰でしょうか。
偉いというのをどう定義するかにもよりますが、「内閣総理大臣」という答えにとりあえず納得する人が多いでしょう。政治の場や国際会議などで日本のトップとして振る舞うのは首相、内閣総理大臣ですし、「首相」という言葉自体、首席の大臣という意味を持っています。
アメリカで一番偉いのは誰か。こちらは「大統領」でしょう。
では、フランスで一番偉いのは誰でしょうか? テレビなどでよく見るのはマクロン大統領ですが、フランスには現在、エドゥアール・フィリップという首相もいらっしゃいます。ドイツも首相と大統領が両方いる国ですが、こちらはメルケル首相のほうが権威が高そうな気がします。
いったいどうなっているのか。主な国における首相と大統領の違いを考えてみましょう。
大統領がいない国
日本やイギリスでは、議会の信任によって成立した内閣が行政権を担うことになっています。この「内閣」のトップが首相となっています。
日本には天皇が、イギリスには国王が存在しますが、これらの人々は政治には関わらず、最低限の儀礼的な仕事を行うのみです。
首相がいない国
アメリカには、内閣や首相の地位がありません。アメリカにおける行政の権限や責任は、住民からの選挙で選ばれた大統領1人が背負っています。
立法(議会)や司法(裁判所)との兼ね合いで制限はあるものの、アメリカの大統領は軍隊の統帥権を含む広範な行政権を持っています。
大統領と首相がいる国
さて、大統領と首相が両方いる国が問題なわけですが、結論からいくと、どちらが偉いのかは国によって異なります。
まず、ドイツやイタリアでは、行政権は内閣にあり、首相がそのトップとして行政を担います。大統領は儀礼的な仕事や、非常時の行政権のみを有しています。つまり、ドイツやイタリアの大統領は、日本における天皇やイギリスにおける国王と似たような位置付けといえます。
対して、韓国やロシア、フランスでは大統領の政治的な権限が強くなっています。これらの国の大統領は、首相の任免や軍の統帥権など広範な権限を持っていて、外交面でも国を代表します。首相は何をしているかというと、大統領の方針に従い、補佐するような形で、「内閣」を統轄し、国内行政を担っています。
ただし、フランスでは、首相を大統領ではなく議会が任命する点などに、日本やイギリスのような議院内閣制の要素が濃くみられます。
おわりに
以上で説明してきた先進国における首相・大統領の権力をわかりやすく図にすると、このようになります。
首相と大統領の関係がややこしくなったら、この図を思い出してください。
ちなみに、中国には「国家主席」と「首相」が両方いますね。国務院(内閣)のトップとして行政を担っているのは首相です。しかし、中国では国会にあたる「全国人民代表大会」に大きな権限があり、議席数などでこの全人代を牛耳る「中国共産党」のトップを兼任する「国家主席」が事実上の最高権力者です。
その他にも、世界の国の政治の在り方は様々で、非常に興味深いですよ。
参考文献
- 『最新図説 政経』浜島書店(2014)