「それじゃあ胸の音聴くよー」
こどもの頃、かかりつけのお医者さんに行くたびに耳にするこのセリフに疑問を持っていました。ライターの大野です。
その頃から抱えていた疑問というのがこれ。
「聴診器で何がわかるの?」「お医者さんは何を聴いてるの?」
今では医学部6年生になり、何をしているのか、ちょっとはわかるようになりました。当時の自分に向けるつもりで、解説していきます!
そもそもどうして聴診するの?
ひとことで言ってしまえば、「患者さんの体の中の様子を把握する」ためです。
とはいえ、人間の体は皮膚によって覆われており、中の様子を見ることは困難です。今でこそレントゲンやCTなど画像診断技術が進んだことで多少は見えるようになりましたが、昔はそんなものありませんでした。
一方で、音はきちんと聞こえてくるわけです。そりゃあもう、聴くしかないでしょう。古代ギリシャの医聖・ヒポクラテスの時代から、患者の胸に耳を当て音を聴いていたという記録が残っています。
どんな音を聴いているの?
主に「心臓の音」と「肺の音(呼吸の音)」を聴いています。
「心臓の音」としては、主に、心臓の弁が閉まるときの音を聴きます。「どっくん」の「どっ」と「くん」に耳を澄ませて、これらのリズムが乱れていないかなどを確認します。聴診器を当てる場所によってどの弁からの音が聞こえやすいかが変わるので、少しずつ動かして聴いていくのです。
なお、病気がある場合には、これとは別に血液の流れの乱れによる音が聞こえることもあります。
「呼吸の音」としては、肺に空気が出たり入ったりするときの音を聴きます。肺炎があるときはぱちぱちとした音が聞こえることがあります。肺についても、左右や上下、前後で差がないかを確かめるために、背中を含め、まんべんなく色々なところに聴診器を当てていきます。
まとめ
お医者さんのアイコンである「聴診」。適当に当てているように見えて、ちゃんと心臓と肺を狙い澄まして聴いています。
……そうそう。呼吸の音を聴いている時に声を出されると、わんわん響いて何も聞こえなくなります。聴診の際、黙って深呼吸していると、医師はきっと心の中でめちゃくちゃ喜びますよ。
参考文献
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