こんにちは、セチです。
「人間は左脳で右手を動かし、右脳で左手を動かす」というような話を耳にしたことはありませんか?
なぜ、このような左右の逆転が起こるのでしょうか。
運動の情報を伝える錐体路
「手を動かせ」という指示は脳(大脳皮質)によって出され、それが末梢の手まで神経によって伝えられることで、実際に手が動きます。
このような「自分の意思で行える運動」の情報は、錐体路(すいたいろ)と呼ばれる神経の経路を通って伝達されます。
大脳皮質の運動野というところにある神経細胞は、長く神経線維を伸ばして脊髄にある神経細胞へと情報を伝えます。それをリレーする形で、脊髄にある神経細胞が手などの筋肉に情報を伝える、というのが錐体路の大まかな構成です。
神経は脊髄に入るところで反対側へ
そして、脳の神経線維は脊髄に入る直前、延髄の錐体という場所で交叉(こうさ)し、反対側へ移動します。左脳から来た線維は右へ、右脳から来た線維は左へ移り、脊髄に入っていきます。
これにより、左脳が右半身、右脳が左半身を動かす、という構造ができあがります。
感覚の経路も途中で反対になる
なお、感覚を伝える神経の経路も交叉しているため、左半身の感覚は右脳、右半身の感覚は左脳という関係も成り立っています。
しかしながら、「温度や痛みを伝える感覚」や「位置の感覚」など、感覚を伝える経路や交叉位置は、感覚の種類によってさまざまに異なります。
こういった複雑な交叉が発生するようになった理由は、未だによくわかっていません。人体には、まだ多くの謎が残されています。
参考
- 寺島俊雄『神経解剖学講義ノート』(金芳堂、2011年)