首里城の「真正性」
首里城の場合、真正性が認められているのは、朱色の瓦や外壁が印象的な首里城正殿ではなく地下の遺構部分。つまり、火災を経て復元された建物ではなく、創建当時から残る建物の痕跡が世界遺産に認められているのです。
それは世界遺産としての登録名が「首里城」ではなく「首里城跡」となっていることからもわかります。
▲首里城正殿地下の旧遺構 via Wikimedia Commons Indiana jo CC BY-SA 4.0
琉球王国の中心となって栄えてきた歴史や、建築様式にみられる琉球王国独特の文化などが評価されています。
金閣寺の「真正性」
では、金閣寺の名で知られる鹿苑寺の場合はどうでしょうか。ひとくくりに「世界遺産の金閣寺」と紹介される場面が多いですが、厳密には、金の装飾で有名な舎利殿・金閣が位置する鹿苑寺庭園に「真正性」が認められています。
京都で積雪 金閣寺も雪化粧
— 朝日新聞 映像報道部 (@asahi_photo) December 17, 2020
強い寒気の影響で、日本海側を中心に17日朝にかけ #大雪 となりました。
京都の #金閣寺 でも、屋根や周辺の木々に雪が積もりました。(敏)#空撮 pic.twitter.com/tParafi1xj
国の特別名勝にも指定されており、京都や日本を代表する庭園であるという点が評価され、世界遺産に登録されました。このため、金閣は「庭園の一部」という位置づけで世界遺産に含まれています。
つまり、首里城や金閣寺は建物自体が評価されて世界遺産になったのではなく、世界遺産としての「真正性」は建物以外の部分に認められています。これにより、一度焼失した金閣寺も世界遺産の構成資産となり、首里城は焼失しても世界遺産から外されることはなかったのです。
▲首里城正殿の再建に向けて作業が進められている via Wikimedia Commons Indiana jo CC BY-SA 4.0
とはいえ、建物は訪れた人が親しみを感じる対象であり、地元の方々の心の拠り所でもあり、かつての記憶を将来に継承するために重要な役割を持っています。こうした火災が再び起こらないことを祈ります。
「世界遺産としての価値」を知る
今回紹介した「真正性」はかつて、遺産が創建当時の状態のままで保存されている場合にのみ認められると考えられていました。
しかし、これは西欧などで一般的な、時代を経ても変化が少ない石造建造物を念頭に置いたもので、石と比べると長持ちしにくい木や土でできた建造物の真正性が認められにくいという状況につながっていました。そこで近年は、遺産とともに培われてきた精神や伝統なども含め、真正性をより広く捉えるようになってきました。
世界遺産に登録されているという事実を知るだけでなく、その資産のどの部分にどのような価値が評価されて世界遺産に登録されたのかということまで知ると、知識が深まります。
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