【魅力その2】日本語と英語でピッタリ「ハマる」!?
先ほどはまったく異なる単語を用いているのに日本語に聞こえるというものでしたが、【特徴2】は、英語と日本語で同じ単語が同じ位置にハマるというものです。説明するより例を見た方が早いのでここでクイズです。
次に示す画像はある楽曲の日本語原曲と英語版の歌詞の一部です。共通して〇〇に入る単語は何でしょう?
正解は「idol/アイドル」で、それぞれ『Idol』と『アイドル』の歌詞でした。日本語原曲と英語版のまったく同じ場所で「アイドル」という単語が歌われています。
▲出題したフレーズは冒頭!
英語と日本語で同じ単語が同じ位置にハマるというのがどういうことか伝わったでしょうか? 『Idol』と『アイドル』はその一例で、このような訳は他のYOASOBIの英語版にも登場しています。
問題画像歌詞引用元:『Idol』『アイドル』(YOASOBI)
英語と日本語の文法の違いを乗り越える訳
日本語と英語で単語が入る位置を一致させることは、普通に翻訳しただけでは実現できません。その理由は日本語と英語の文法の違いにあります。今回は『祝福』の歌詞の「ストーリー」がハマっている部分に注目しましょう。
日本語において、名詞は基本的に前から修飾されます。それに対して英語では、名詞を前から修飾する場合も後ろから修飾する場合もあり、例に挙げた日本語原曲の歌詞を直訳すると“story”を後ろから修飾する形になります。
言葉の並ぶ順番がまったく異なる2つの言語において、同じ単語を同じ位置に持ってくることは意識しないとできないことです。
楽曲の大事な言葉でこの「ハマり」があるからこそ、Ayaseさんの作詞の意図が言語を変えても伝わっているように思います。
【魅力その3】作品の立体感が増す!
ここまでは歌詞の持つ「音」に注目してきましたが、「音がすごい!」だけでは終わりません。内容にもこだわりが詰まっているのがYOASOBIの楽曲の英語版です。
「小説を音楽にするユニット」であるYOASOBIは、その楽曲のすべてに原作があり、その内容を元に楽曲の歌詞やメロディーが生まれています。
原作を大事にしているのはもちろん英語版でも同じ。それだけでなく、日本語原曲では歌詞に含みきれなかった内容が反映されているものもあります。英語訳を担当しているKonnie Aokiさんによると、これは同じ内容でも日本語より英語の方が少ない音数で内容を表現できることが多いからこそ、とのことです。
その例として『ハルカ』の英語版『Haruka』を見ていきましょう。
この訳を理解する上で、原作小説『月王子』の内容は外せません。「月の王子さま」が描かれたマグカップが主人公のこの物語。物語は誰にも買われずほこりをかぶっていたマグカップが、中学生の「遥」に買われるところから始まります。
長い時間を共に過ごしたふたりでしたが、物語の最後でマグカップは割れてしまいます。そんなマグカップの最期の言葉が、歌詞の最後で登場する「愛してるよ」でした。そんな大事な言葉が、英語版では「My love remains for you」と訳されています。マグカップとしての形はなくなってしまうけれど、「僕」の愛は残っているという表現。直訳的な“I love you”とは違う奥深さが感じられるので、個人的にお気に入りポイントです。
このように物語のシーンを踏まえた訳が、YOASOBIの楽曲の英語版に多く登場しています。英語版にも触れることで、楽曲への理解が深まり、作品をより立体的に感じられること間違いなしですよ!
英語版に出会って変わった私のYOASOBIの楽曲の楽しみ方
YOASOBIの楽曲の英語版の魅力を改めて一言で表すのなら、日本語原曲の歌詞の内容や音と、原作の内容の両方が尊重されているということ。これは、「小説を音楽にする」ことをコンセプトにしているYOASOBIだからこそ生み出せるものではないでしょうか。
日本語原曲・原作・MVはもちろん、言語の壁を越えて英語版の楽曲も楽しむ。それができれば、YOASOBIが原作から受け取ったもの・表現しようとした世界観に立体的に包まれるーーそんな経験もできるはずです。
今後も海外でのパフォーマンスが予定されており、かつ2024年秋には結成5周年を迎えるYOASOBI。彼らが音楽を通してどんな世界に出会わせてくれるのかを楽しみに、これからも応援していきたいと思っています!
そんなYOASOBIの旅が、冒険が、素敵なものになることを願って、最後にこの問題を。
【あわせて読みたい】