東京の観光名所で日本を代表する電波塔のひとつ、東京タワー。
東京タワーといえば、赤色をメインとした外観が特徴的で、よく見ると赤と白の「シマシマ模様」になっています。
実はこの「シマシマ」には、デザイン的な意味だけではなく、私たちの安全を守る大事な役割があるのです。
今回は東京タワーのシマ模様と、後継の電波塔である東京スカイツリーにシマ模様がない理由について、大学で建築を学んでいる私、鞠乃(まりの)が分かりやすく紹介します!
東京タワーはなんで赤白シマシマなの?
東京タワーが建てられたのは、1958年。戦後のテレビ需要に伴って増えた放送局と、その電波発信所を1カ所にまとめることを目的として建設されました。
建設計画で慎重に検討されたのは、タワーの高さについてです。電波に関わる研究者が集まり、どこまで電波を届けたいのか、そのためにどのくらいの高さが必要なのかを計算しました。その結果、300m級の高さが必要であるとわかりました。
こうした経緯で、東京タワーは333mという高さになりました。同時に、高さ約310mのエッフェル塔を上回り、当時において世界一高い鉄塔となったのです。
一方で、それだけの高さがあることにより、私たちの安全に影響が出てしまうある懸念が発生しました。それが、航空機の飛行です。
高い建物は「航空法」という法律で、航空機が安全に飛行するためのルールが定められています。航空法や関連する規則では、高さが60mを超える建物には、以下の設置を義務づけています。
(1)「航空障害灯」と呼ばれるライト
(2)特に航空機から見えにくい煙突や鉄塔などには、「昼間障害標識」と呼ばれる塗装や旗など
東京タワーの赤白のシマ模様は、この「昼間障害標識」にあたり、航空機からその存在をわかりやすくするための標識として塗られています。
ちなみに、東京タワーに用いられている「赤」は厳密には「黄赤(インターナショナルオレンジ)」という色です。この色も、建物の高さや形状によって定められています。
ところで、東京スカイツリーは……?
しかし、ちょっと考えてみてください。同じく東京のシンボルとして、東京スカイツリーがありますよね。
東京スカイツリーは2012年に完成しました。時代とともに高層な建物が増え、電波を届けづらくなった背景から、東京タワーに代わる新たな電波塔として建設されました。
その高さは634mを誇り、日本の伝統文化である藍染の「藍白(あいじろ)」をベースとした、スカイツリーホワイトというオリジナルの色で塗られています。
東京スカイツリーは東京タワーより高い建築物であるにも関わらず、同じようなシマ模様はありません。一体どうしてなのでしょうか。
東京スカイツリーも航空機のための標識がある
東京スカイツリーは東京タワー同様、その高さゆえに航空機のための標識を設置することが航空法によって義務づけられています。
しかし、塗装などの昼間障害標識については、設置しなくてもよいケースがあります。実は、条件を満たしたライト(高い光度の航空障害灯など)を設置した場合や、設置する対象の形状次第では、赤白のシマ模様に塗ること自体は義務ではありません。
そこで、東京スカイツリーは塔体を赤白のシマ模様に塗るのではなく、高光度航空障害灯を設置し、定められた通りに点滅させることで飛行機への標識としているのです。
東京スカイツリーをじっと観察してみると、一定間隔でライトが点滅しているのが分かりますよ。
▲東京スカイツリーの側面でライトが点滅しているのがわかる(筆者撮影)
タワー以外の高層の建物でも、よく見てみるとライトが点滅しているものを見つけることができます。
おわりに
一見別物に見える東京タワーの赤白シマシマ模様と東京スカイツリーのライトの点滅は、航空機の安全な飛行を妨げないための標識として、同じ役割を果たしているのですね。
私も小さい頃は、赤白のシマ模様に塗られた鉄塔を指さして「東京タワーだ!」とよく言ったものです。
今日の帰りには高い建物を見上げて、ライトが点灯しているかじっと観察してみてはいかがでしょうか。
参考文献
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