このスポットから東京スカイツリーを見てほしい!
まずはイメージ通りの姿を
ここは、東京スカイツリーの南、錦糸町駅近くにあるホテル「東武ホテルレバント東京」です。ここからだと、東京スカイツリーはまっすぐにそびえ立っているのがわかりますね。
▲東武ホテルレバント東京から見た東京スカイツリー
浅草文化観光センターの展望台から見ると……?
しかし、浅草文化観光センターから見える東京スカイツリーは、やや右側に傾いているように見えます。
▲なんだか不安な気持ちになりますね
まっすぐであるはずの東京スカイツリーは、なぜ傾いて見えるのでしょうか?
なぜこんなことが起こるのか
これには、やはり「三角形」が関係しています。
▲見る角度によって見え方が違う
例えば上の図のように、断面の正三角形を【1】の向きから見たとき、東京スカイツリーを貫く柱は中心にあるように見えます。しかし、【2】から見たとき、柱は中心からずれているように見えます。これは、正三角形の重心が頂点と対辺の中心を結んだ線分を2:1に内分した点にあるためです。
これによって、浅草文化観光センターからは東京スカイツリーが傾いているように見えるのですね。
「まっすぐ」な東京スカイツリーを見たい方は、錦糸町駅から続くその名も「タワービュー通り」がおすすめです。また、浅草文化観光センターは浅草駅で降りて東京スカイツリーまで歩いて行くときに寄ることのできるスポットで、誰でも無料で入ることができます。
▲「タワービュー通り」から見える東京スカイツリー
もう少しだけスカイツリーの推しポイントを語らせて
ここからは、東京スカイツリーを愛してやまない私が、実際に東京スカイツリーをめぐりながら、注目してほしいポイントをご紹介します!
▲やってきました東京スカイツリー!愛してる!
天望デッキに行こう!
まずは天望デッキです。素晴らしい景色を見る前に、注目してもらいたいポイントがあります。それが「エレベーター」です! 実は東京スカイツリーの天望デッキまでのエレベーターは、40人乗りとしては国内一の速さを誇っています。
エレベーターの乗り場がある4階から350m地点の天望デッキまで、かかる時間はたったの約50秒! 最高速度は分速600mで、マンションなどにあるエレベーターが速いものでも分速100m程度であることを踏まえると、ものすごく速いことがわかります。
▲東京スカイツリーの天望デッキ
天望デッキに到着し、エレベーターの扉が開くと、この上ない開放感を体験できます。円形につくられた天望デッキからは、360度、視界を塞ぐものは何もありません。天気の良い日は、遠くに見える富士山、東京湾、そして眼下に広がる東京の街を楽しむことができます。
▲天望デッキでエレベーターを降りた瞬間の目線。この日はあいにく曇り空だが、ぜひ晴天の日に足を運んでほしい
あれ?断面は三角形って言っていたような……
さっきまであれほど「東京スカイツリーの足元の形は三角形!」と言っていたのに、天望デッキは360度をまんべんなく見渡すことのできる「円形」になっています。そう、天望デッキの形が足元の形とは異なるというところが、とても面白いポイントです。
とはいえ、あまりイメージが湧かないと思うので、まずは東京タワーの形をご覧ください。東京タワーは足元から展望台まで、断面の形は正方形のままになっています。
▲東京タワーの断面の形の変化
しかし、東京スカイツリーは、足元から展望台に近づくにつれて断面の正三角形は徐々に円形に変形し、天望デッキの少し下の位置で完全に円形になるのです!
▲東京スカイツリーの断面の形の変化
これには、展望台からは360度すべての方向を均等に見渡せるようにという設計者の思いが込められています。ほかにも、円形にした方が電波を発信する装置を取り付けやすい、各方向からの強風を均等に受け流すことができるなどのメリットもあります。
高さによって断面の形が変化するタワーは、世界でもあまり例がありません。600m級のタワーの建設は、日本初の試み。そこで、三角形をだんだん円形にしていくという繊細なアイデアが採用されたことには、日本の建設技術にはこの夢のような設計を実現するだけのパワーがあるのだというすごさを感じます。
絶対にチャンスを逃せないエレベーター
天望デッキを楽しんだら、更に高みを目指しましょう。東京スカイツリーには、地上340〜350mにある天望デッキと、450m部分にある天望回廊の2つの展望台があります。天望回廊へは、天望デッキからさらにエレベーターに乗ると行くことができます。
▲東京スカイツリーの天望回廊
天望回廊へ向かうエレベーターのおすすめポイントは、天井の一部がガラスになっていることです。ここからエレベーターの箱がロープにぐんぐん引っ張られる様子を見て、「自分は今、とにかく細い東京スカイツリーの、あの中を通っているのだ」と実感するのが楽しいのです。
▲下が見えていると勘違いしそうだけど、これが天井なのだ!ぐんぐんのぼる!
さらに、天望回廊までのエレベーターでは、天望デッキまでのエレベーターとは異なり、外の景色を楽しむことができます。搭乗時間は約30秒しかないため、天井を見るか外の景色を見るか、いつも迷ってしまいます。
「少しずつ登っていく」、新感覚の展望台
エレベーターの終着点、天望回廊は、緩やかな傾斜がついた回廊が塔に巻き付いたような設計になっています。
▲巻き付いたような構造になっている
この外観の通り、内部もゆるやかなスロープの構造になっています。従来の展望台のイメージである一面フラットなフロアではなく、スロープをつくるというアイディアにワクワクせざるをえません。
▲近未来的な雰囲気のある天望回廊。スロープ構造になっている
天望回廊がこのような構造になった背景には、設計チームのメンバーの登山体験があります。
設計チームのメンバーは、高いところにのぼるときの気持ちを知るために富士山をはじめとする山々に登りました。そして、東京スカイツリーの天望回廊でも、登山のように最高到達点に自分の足でたどり着くことができる仕掛けをつくろうと考えたのです。
このようにしてつくられた天望回廊を歩いてたどり着くのが、東京スカイツリーの最高到達点・地上451.2mのソラカラポイントです。
▲お待たせしました最高到達点です!
東京スカイツリー周辺ではここより高い場所はありません。私は晴れた日にソラカラポイントに行くと、「誰よりも太陽に近いところにいるのだ」と実感します。近所の公園で体を伸ばして浴びる太陽の光とは、別格の気持ちよさがあるのです。
2022年は開業10周年の節目
私が東京スカイツリーに通う理由のひとつは、やはりのぼったときに得られる開放感です。東京を見渡す大パノラマで心身ともにスッキリしたら、次にのぼる日を楽しみに、いつもの日々に戻ります。
「足元は正三角形、でも天望デッキは円形」という構造に興味を持ったことから、私の東京スカイツリー人生は始まりました。いろいろ調べたり足繁く通ったりしているうちに、東京スカイツリーは私にとって「元気をくれる存在」になっていったのです。今ではその姿を見るだけで、もはやそこに立ってくれているだけで、東京スカイツリーを愛おしく思う気持ちで心がいっぱいになります。いつもありがとう、東京スカイツリー。
▲筆者が撮影し記録しているスカイツリー一覧。よく見ても、見なくても全部スカイツリーです
そんな東京スカイツリーは今年(2022年)5月22日で開業10周年を迎えます。開業した当時はまだ小学生だった私は、まさかこんなにも東京スカイツリーを好きになるとは思ってもいませんでした。
東京スカイツリーはこれから先もその地に3本足で力強く立ち、私たちの生活を見守り続けてくれます。
東京スカイツリーに少しでも興味を持った方、行ったことはあるけれどもう1回行ってみたくなった方は、ぜひ足を運んでみてください。きっとここでしか体験できない開放感にやみつきになりますよ。
▲ぜひ、天気のよい日に
参考文献
- 日本経済新聞出版社編(2012)『東京スカイツリー完成までの軌跡』日本経済新聞出版社
- 山田久美著(2012)『東京スカイツリー 天空に賭けた男たちの情熱』マガジンハウス
- 新建築2012年6月臨時増刊号『Detail of TOKYO SKYTREE』新建築社
- 「新建築」2009年1月号 新建築社
- 「新建築」2010年3月号 新建築社
- 「新建築」2012年6月号 新建築社
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