しばしば「常識」として語られる都道府県庁所在地。実は覚えていない、という人も多いのでは? 群馬県の県庁所在地は前橋市。島根県は松江市。では、東京都は?
正解は、「東京」あるいは「新宿区」。都庁があるのは新宿区なのですが、東京にある23区は「特別区」と呼ばれ、ほかの市町村とは少し違うものとされるため、慣例として23区をまとめた「東京」という都市を都庁所在地としているのです。
では、このように「東京都」だけが特殊なのはなぜでしょう? そもそも「都」「道」「府」「県」ってそれぞれ何が違うのでしょう?
そういえば習った「廃藩置県」
明治元年(1868年)、政府はかつての幕府の直轄地であった地域のうち、重要な地域を「府」、それ以外を「県」と定めました。
これにより、箱館府、東京府、神奈川府、越後府、甲斐府、京都府、大阪府、奈良府、度会府、長崎府が置かれました。その翌年、東京府、京都府、大阪府以外は「県」に改められました。
つまり、「府」と「県」の違いは、重要かどうか、だったんですね。
さらに明治4年(1871年)、政府はかつての藩主であった知藩事たちに廃藩置県を命じました。
廃藩置県とは、読んで字のごとく藩を廃し県を置くこと。ここではかつての藩をそのまま県としたため、3府302県と莫大な数になってしまいましたが、その後、県の整理・合併を繰り返し、明治16年(1883年)には3府44県となりました。
そして明治19年(1886年)には、函館県・札幌県・根室県の3県を廃し「北海道庁」が設置されました。これにより日本は「3府41県1庁」に。そう、そもそもこの時点では、北海道は「道」ではなかったのです。
その後、大阪府から奈良県が、愛媛県から香川県が独立して「3府43県1庁」となり、合計47に。こうして現在の都道府県の原型ができ上がりました。
この後50年ほどこの体制は変わりませんでしたが、戦時中の昭和18年(1943年)、東京府とその中の東京市が廃止され、「東京都」が生まれます。
さらに戦後、昭和22年(1947年)には北海道庁が「北海道」と改称され、「道」が生まれました。(沖縄県はこの時点ではアメリカ占領下でしたが)これにて現在の「1都1道2府43県」の完成です。
じゃあ「特別区」って何?
例えば大阪府なら「大阪府大阪市北区」のように、区はふつう、道府県の下の、市のさらに下の区分です。
しかし、東京都の場合は「東京都新宿区」のように、都の1つ下の区分となります。このようなものを「特別区」などと呼びます。
これは、前述した東京都の成り立ちに由来します。
もともと東京府には、東京市という大きな市がありました。しかし、これが東京都の一部として発展的解消、かつて東京市だった地域は市町村ではなくなり、直接区が置かれるようになりました。これが現在の特別区、23区なのです。
ちなみに、特別区は地方自治法により「都の区」と規定されているため、実際は東京都でなくても設置可能です。いわゆる「大阪都構想」も、このルールを使ったものです。