「学ぶこと」「知ること」をデザインの力で楽しいものにしてしまう作品を発表し続けている、デザイナーのみっけさん。
WebメディアQuizKnockでは、「みっけのクイズパレット」と題して、そのデザインの裏側にある「ものの伝え方」に迫る連載をお届けしています。
▲前回の記事はこちら!
みっけさんが知識を1枚に凝縮したデザインを作るようになったきっかけは、「クイズに強くなりたい」という思いからでした。今回の連載ではその思いが込もった数々のデザインを、「推しポイント」や「こだわりポイント」を交えながらお届けします。
文:みっけ
第1回の記事でもお伝えした通り、私が「知りたいことをまとめたデザイン」を作りはじめたのは「クイズに強くなりたい!」という思いがきっかけです。
元々クイズ番組は好きだったのですが、いち視聴者として楽しむ程度で熱心に追いかけるほどではありませんでした。なんとなく観ていたテレビでQuizKnockというYouTubeチャンネルがあることを知り、なんとなく検索して動画を観て……その時の衝撃は忘れられません!!
▲なんでこれだけで正解できるの!?(「【検証】東大生なら問題文が数字だけでも答えられる説」より)
出てくる情報ひとつひとつが「知っているクイズ」「知っているYouTube」とは違っていて、その日のうちに何十本と動画を観てしまいました。
知ることって楽しいな。
だんだんそう思うようになりました。勉強は苦手なタイプだったので初めての感情です。ただ、私も一介のクリエイターですから、楽しいことを受け取るばかりだと物足りなく感じます。
これが今の私のデザインのきっかけです。
クイズ×デザインの原点
「クイズによく出る事柄をまとめた作品を作りたいんだけど、どんなテーマがいいかな?」と、X(旧Twitter)でフォロワーさんにリクエストを募りました。
そこから作った、記念すべき最初の作品がこちら!
▲徳川15代将軍の自動販売機
数年前に作ったものなので拙い部分も多いですが、お気に入りの作品です。
徳川15代将軍をドリンクに当てはめて、それぞれの特徴を落とし込みました。
「あたたか〜い」「つめた〜い」の部分が主な出来事に、値段はその年号になっています。「あたたか〜い」と「たたかい」をかけたダジャレです(笑)。
こだわりポイント
- 家康:健康オタクだったといわれているので、体に良さそうな青汁に。
- 家継:在位期間が4〜8歳だったため、子どもが好きなりんごジュースに。
- 吉宗:型破りな「暴れん坊将軍」のモデルで、それまでの政治を一新する改革を行ったため、刺激的なコーラに。
そんな感じで、調べて知った人となりをイメージしてドリンクを選んでいます。名前だけ、功績だけといった「情報」を覚えるのは単調で忘れやすいです。その情報と結びついた「自分なりのイメージ」こそ「覚えやすく忘れにくい」、つまりクイズにも生かしやすい知識になるのです!
「書く」より「描く」!
▲海獣(海にすむ哺乳類)の漢字
海獣の名前を漢字で表した、いわゆる「難読漢字」のまとめデザインです。
これだけ見ると「普通のまとめ」ですが、クイズに強くなりたいがためのこだわりポイントがひとつあります。
漢字部分、全部作字しています。
作字とは、新たなデザインで文字をつくること。つまりキーボードで打った文字ではなく、ひとつひとつ「描いた」文字なんです。
▲データはこんな感じ(Illustratorというソフトで描いています)
「書く」と「描く」の違いのひとつはかかる時間にあります。
・ここが詰まっちゃうな……
・ここは「とめ」? それとも「はらい」?
描いていると悩むところ、迷うところがたくさん出てきます。これが狙いでした!
悩めば悩むほど記憶に残ります。「この画、表現に迷ったんだよなあ」とあとから思い出すきっかけになりますから!
あえて苦労することで覚えようとしたわけです。
余談ですが、イラストを描くのも結構難しかったです。たとえば、アシカとオットセイの違い、わかりますか?
▲アシカとオットセイを並べてみました
オットセイの方が耳が大きく、毛がフサフサしています。
違いを調べながら描きましたが、資料として見ている写真がどっちだかわからなくなって何度も調べ直した覚えがあります(笑)。細かい違いしかないものはイラストで覚える方がラクかもしれません。
もし海獣シルエットクイズなんかがあれば勝てちゃうかも! 漢字を覚えるつもりが、一石二鳥でした。
作字で覚えたといえば、ピカソのフルネームも作りましたね。
▲長いことでおなじみ、ピカソのフルネーム
なぜかホーム画面サイズ(一部のスマホですが)です。もしよろしければDLしてホーム画面にお使いください!
使ってこそデザイン
以前作った「二十四節気」のデザイン。絵の具がモチーフになってます。
▲二十四節気の絵の具
時計回りにぐるっと一周するようなレイアウトになってます。
先ほどの徳川将軍は覚える項目数でいえば15だったのに対し、今回は24なので結構ボリュームがあります。
単調な羅列にならず、それでいて見やすいデザイン……と思い、円にしてみました。
実際、季節は地球が太陽の周りを傾いて公転することによって生まれるものなので、、円で表現するというのも理にかなってますね。
あともうひとつ利点がありまして、実はプリントアウトして家に飾っています。
▲我が家の一角
真ん中の画鋲を軸に、一番上が今の節気になるようたまに回転させています。こうやって「生活の中で使う」ことは覚えるのにめちゃくちゃ便利です!
皆さんも、世界地図や何かの表なんかを壁に貼って覚えた経験があるのではないでしょうか? その地図や表も、きっと誰かの作ったデザインです。
第2回の連載で、デザインとは「何かを伝えるためにある」と言いました。私は、私から私に、覚えてほしくてデザインしているんです。クイズに強くなりたいから!
いかがでしたでしょうか?
私のクイズ×デザインの原点から、クイズのためのデザイン方法、デザイン観までご紹介しました。自分で表や一覧などを作って何かを覚えたい時、参考になれば幸いです!
では最後に一問。
筆者プロフィール
デザインが好きな会社員。
知りたいこと、楽しいことを作品にしてSNSに投稿中。
11/22(水)には、眺めるだけで楽しく学べる『見て楽しむ ことば図鑑』が幻冬舎より発売。