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こんにちは。ライターの松林 陸です。今回の「なんかクイズ出してよ」を担当することになりました。

私は現在、京都大学クイズ研究会に所属しており、充実したクイズライフを送っています。クイズを本格的に始めてから早くも3年が経ちましたが、数百問のクイズを用意して大会をすることはあれど、「なんか"1問"クイズ出して!」と言われる機会はありませんでした。

「なんかクイズ出してよ」

クイズ歴4年目にして初のリクエストです。今まで数多くの問題を作ってきましたが、「1問出して!」となるとなかなかに難しい。その1問で「面白さ」を伝えなければいけません。

「知識としての面白さ」を問題にしてもよかったのですが、私は日々「早押しクイズ」の中でボタンをポチポチしている身。せっかくなので、この1問で、「早押しクイズ」そのものの面白さを皆さんにお伝えしたいと思いました。

▲早押しボタンのイメージ

というわけで、「早押し」という視点からも映える問題を用意しましょう。まずはいきなり問題からどうぞ。

 

さて、どうだったでしょうか?

クイズとしては、「小説の登場人物を訊くだけの問題」だったかもしれません。一見何の変哲もないこの問題。「早押しクイズ」という視点から眺めると、どのように見えるでしょうか。

それを見る前に、まずは早押しクイズの問題のもつ要素として、僕が大切だと思っていることをご紹介します。

1.「答えを正しく理解している人」が答えられる

クイズとしては当たり前かもしれませんが、「答えをちゃんと知っている人」がきちんと問題に答えられることは大事だと思っています。たとえば小説や映画なら「その作品を読んだ人・見た人」が、学問であれば、「その学問に触れた人」がきちんとわかるように問題を作ります。

2.文章が誤解されず自然と理解される問題を作る

クイズの問題が日本語である以上、答えてくれる相手に正しく問題の意味が伝わるかどうかは重要なことだと思います。

皆さんも、相手とコミュニケーションを取ったり、何かを伝えたりしようとしたりするとき、「こう言えば誤解されないかな?」「こう言えば気持ちが伝わるかな?」と考えることがあるかもしれません。

僕がクイズを作るときも同じで、「相手はこれを知っているかな?」「この問題、答えてほしいな」という気持ちをもって問題を作ることが多いです。

せっかく問題を出して相手に答えてもらうわけですから、やはり「答えてくれる相手が問題をきちんと理解できるようにする」ことは大事だと思っています。

▲クイズは出題者と解答者とのコミュニケーション

3.答えをよく知っている人が一番早くボタンを押せる

早押しクイズは「どれだけ早くボタンを押せたか」で勝敗がつきます。そのため、答えについてよく知っている人ほど早く押せる問題を作ることが大事です。

また、「答えをよく知っている人にとっては、かえって問題がわかりにくい」ような問題はあまり好ましくありません。やはり、問題をすんなりと理解できた上で、その分野に詳しい人が「わかった!!」と気持ちよくボタンを押すことができる問題が良いと思っています。

以上、僕が早押しクイズを作る上で大事だと思うことを手短に紹介しました。では、先ほどの問題については、どのように見ることができるでしょうか?

まず、最初の情報。「最期はライヘンバッハの滝にて命を落とした」とあります。「ライヘンバッハの滝」はスイスにあるアルプス山脈の滝です。もちろん自然地形としても美しいですが、それ以上にこの場所は、コナン・ドイルの小説の中で、「シャーロック・ホームズが宿敵のモリアーティと相討ちになったとされる場所」として有名です。

「シャーロック・ホームズ」シリーズに造詣がある人で、この滝の名前に全く聞き覚えがないという人は少ないでしょうから、ホームズをよく知っている人は、問題文の最初の情報で「ホームズの話だ!」と反応できます。

▲ライヘンバッハの滝 via Wikimedia Commons Rynacher at de.wikipedia CC BY-SA 3.0(画像をトリミングしています)

これを聞いて、こう思った方もいるかもしれません。

「それってとりあえず難しい情報を問題文の最初の方に書いたらいいんじゃないの?」

確かにそうかもしれません。ただ、僕がこの問題を選んだのには、この問題にもう一段階のギミックが隠されているからです。この問題が、「クイズ大会の会場で出題された」ことを想定して、そのギミックを紹介します。


▲クイズ大会の会場のイメージ

ここはクイズ大会の会場です。さて、もう一度問題を途中まで聞いてみましょう。

「最期はライヘンバッハの滝にて命を落とした、」

この時点で、あなたは「ライヘンバッハの滝」が「シャーロック・ホームズ」シリーズに登場する滝だとわかったとしましょう。ただ、ライヘンバッハの滝で争ったのはホームズとモリアーティの2人。今の段階では、どちらが答えになるかがわかりません

しかし、ここであなたはシャーロック・ホームズについてのある情報を思い出します。それは...

シャーロック・ホームズはこの争いの後の続編で再登場している

ということです。この作品に詳しい人は、聞いたことがある情報かもしれません。

作者のコナン・ドイルは「ライヘンバッハの滝での決闘でシャーロック・ホームズは亡くなった」としましたが、ファンからの熱望により、後に「ホームズは実は生きていた」という設定をつけ加えました。

つまり、「シャーロック・ホームズはライヘンバッハの滝では亡くなっていない」ということです。このことに気付いた人は、「最期はライヘンバッハの滝にて命を落とした」の部分を聞いただけで、自信をもって答えを言うことができます。

かくして、あなたはボタンを押すことができました。

問題。最期はライヘンバッハの滝にて命を落とす、/
ピン!「ジェームズ・モリアーティ!!」

ピンポンピンポンピンポーン!!!(優勝)


この問題の肝は、「ライヘンバッハの滝を知っている人の中でも、『シャーロック・ホームズはライヘンバッハの滝では死んでいないのだから、この問題の答えにはならない』ということにいち早く気付いた人が、ボタンを最も早く押せる」ということでした。

「最も答えに詳しい人が最も早くボタンを押せる問題」「早押しできるタイミングが何段階にも差別化されている問題」の最たる例として、私はこの問題が気に入っています。

いかがでしたでしょうか。早押しクイズに力を入れている人たちは、この問題以外にも「どこまで早くボタンを押せるか」「どこまで問題を聞けば答えがわかるか」を日々考えています。

クイズを楽しむ上でそこまで考える必要はないのかもしれませんが、この1問を通して、「早押しクイズを突き詰めてみる」ことの面白さを少しでも感じていただけると嬉しいです。

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この記事を書いた人

松林 陸

京都大学大学院理学研究科・修士1年の松林 陸です。普段は大学のサークルでクイズをしています。 大学では物理学を専攻しています。好きなものはクイズと旅行と科学。読者の方の日々に「ちょっとした学び」が生まれるような記事を書けるように頑張ります。

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