\ 連載「クイズを味わう」 /
「クイズ」は、物知りな人が解いて答えるだけのもの? いやいや、問題に込められたメッセージや「たくらみ」を見つけるのも、クイズの楽しみ方のひとつ。
毎回1問のクイズを取り上げ、「いいクイズ」「面白いクイズ」の秘密をひもときます。毎週金曜日のお昼に更新予定です!
「自分が気になったことを調べてみた結果、クイズができあがる」というのは、私にとってはよくあることです。
ある日ふと、「水木しげるロード」のことを考える機会がありました。「水木しげるロード」というのは鳥取県境港市の観光地で、JR境港駅から水木しげる記念館までの通りの両脇に妖怪の像がずらりと並んでいます。水木しげるは、さまざまな妖怪が登場する『ゲゲゲの鬼太郎』で知られる漫画家ですね。
クイズの切り口を探る
「どんな妖怪の像があるんだろうか」と調べてみると、公式ホームページに像の一覧が掲載されていました。その数は全部で178体。基本的には1種類の妖怪につき1体という構成になっています。ただ、『ゲゲゲの鬼太郎』の著名なキャラクターなどには、複数設置されているものもありました。
なかでも目についたのは鬼太郎。数えてみたところなんと10体あり、全体では最多の数です(よく数えてみると「目玉おやじ」の像も鬼太郎と同じく10体ありました)。
ここから、「鬼太郎の像がとにかく多い」という点をクイズにしようと試みます。最初に思い浮かんだのは以下のような問題文です。
鳥取県境港市にある「水木しげるロード」には多くの妖怪の像が設置されています。その中で10体と最も多いのは何というキャラクターの像でしょう?
A.鬼太郎
ちゃんと問題の形になっています。ただし、答えが「鬼太郎」なのは、答えを聞いたときに「一番有名だし、主人公のキャラクターだしな〜」と納得できすぎてしまい、面白みに欠ける感じがします。
別のクイズも作ってみる
これを踏まえて、もう少しよい案はないだろうか……と頭を捻りながら像の一覧を見ていると、「水木しげるの像が6体もある」ということに気づきました。水木しげるロードのことを知っている人でも、そこに妖怪以外の像があることはあまり知られていないはずです。だからこそ、うまく扱えれば面白いクイズが生まれる可能性を感じる情報でした。
「鬼太郎の像がとにかく多い」に「実は水木しげる本人の像もあり、しかもそこそこ数がある」の点も加えて、これら2つの印象的な事実をどうにかうまく絡めてクイズにできないか。そう試行錯誤して生まれたのが、こちらのクイズです。
「水木しげる」と「鬼太郎」のうち、水木しげるロードにより多くの像が設置されているのはどちらでしょう? A. 鬼太郎
それらしい問題ができました。
このクイズについて、解答者の立場からも考えてみます。まず、水木しげるロードを端から端まで歩いたことがある人は、「鬼太郎の方がいっぱいいたはず」という体感で答えることができそうです。
水木しげるロードのことを全然知らない人にとっては不思議な問題に感じられてしまうかもしれませんが、「『より多くの』という書き方をしているということは、水木しげるロードには水木しげるの像も鬼太郎の像もあって、もしかしたらどっちの像も複数あるのか……?」と、状況はなんとなく汲み取ってもらえそうな気がします。つまり、「水木しげる」と「鬼太郎」の像がどちらも複数あるという事実を伝えることには、ひとまず成功していそうです。
ただし、うまくいっていない部分もあります。例えば、「鬼太郎の像は10体、水木しげるの像は6体あって、基本的に1つの妖怪の像が1つであることを考えるとどちらもとても多い」という面白さは出題後に補足として話すなどしないと伝わりません。
また、「水木しげるロードには妖怪の像が多い」ということだけを知っていた人が、素直に妖怪である「鬼太郎」を選んで正解できてしまうのも、狙いから外れた正解の仕方です。
さらに他のクイズを考える
他のかたちを考えてみます。
鳥取県境港市にある「水木しげるロード」には多くの妖怪の像が設置されています。その中で「鬼太郎」と「目玉おやじ」に次いで設置数が多いのは誰をかたどった像でしょう? A. 水木しげる
この問題なら、「水木しげるの像がある」という事実を驚きを伴って伝えられたかもしれません。「妖怪の像が多くある」という情報を提示した上で、3番目に多いのが妖怪ではないというのはなかなか面白い構造です。
一方で、
・「鬼太郎」と「目玉おやじ」の像が最多であるというのが、全く有名な事実ではないのに前提になってしまっている
・「妖怪以外の像がある」という事実を巧みに隠しているだけでなんとなくずるい感じがする
といったように、今度は別の方向で気になる点が出てきてしまいました(これは個人的に気になる! という話なので、結構人によって考えが分かれる部分かもしれません)。
……このように2つの事実をあれこれ組み合わせてみたものの、結局この題材で自分が100%納得できるクイズは作れませんでした。
クイズを作るのは難しい。だからこそ
完璧なクイズを作るのはとても難しいことです。ある1問の中で伝えたいことをすべて伝えるのも、正解してほしい知識を持っているすべての人に正解してもらうのも、簡単に実現できることではありません。
もちろん、できる限り理想は詰め込んだ方がいいわけですが、題材によっては限界もあります。しかしそういうときに、何を優先し、どんな選択をするのかという部分にこそ、その人らしさや、その人がそのクイズを作る意味が宿るのではないかと思うのです。
私は今回、この事実をクイズで伝えようと試行錯誤しました。みなさんなら、どんなふうに誰かに伝えるでしょうか。
(文・大塚澄佳)
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