こんにちは、はぶきです。
皆さんはピアノの鍵盤を見たことがありますか? ピアノを弾けない人でも、1オクターブの間に白鍵が7つ、黒鍵が5つあることは知っているかと思います。
しかし、なぜ1オクターブが12音(ドレミファソラシの7音+ド#レ#ファ#ソ#ラ#の5音)でできているのか、考えたことはあまりないと思います。今回は、「音律」について考えていきましょう。
※音律とは、音高の相対的な関係を音響物理学的に規定するものであり、具体的には「音の周波数比(振動比)を特定の原理に基づいて決めたもの」です。この「原理」の違いにより、様々な音律が存在します。
そもそも1オクターブって何?
まず、1オクターブとは一体何なのかからお話していこうと思います。
1オクターブと言うと、「ドから次のドまで」とイメージする方が多いでしょう。実は、その「ド」と「次のド」には明確な定義があります。 我々は「ある音を基準として、周波数比が2倍になる音」を「1オクターブ上の音」と呼んでいます。つまり、真ん中のドより5音上の「ラ」の音を440Hzとした場合、1オクターブ上の「ラ」は880Hzとなるわけです。逆に、周波数比が1/2なら1オクターブ下になります。
最初は21音だった?
現在、最も一般的に使われている音律は「平均律」と呼ばれる音律で、これはある音から周波数比2倍の音まで=1オクターブを12等分した音律です。しかし、平均律にたどり着く前にはいくつかの音律が存在しました。
平均律の祖先は、「ピタゴラス音律」と呼ばれる21音でできた音律です。この音律は、三平方の定理でも有名なピタゴラスが作りました。ピタゴラス音律は、独自の計算を元に作成されています。
現在では、ド#とレ♭は同じ音として扱われますよね。しかし、ピタゴラス音律では似て非なるものとされていました。ド♭、ド、ド#、レ♭、レ、レ#、ミ♭……と数えていくと、ドレミファソラシの7音×3種類=21音あることがわかると思います。21音あったのは、こういった事情がありました。
音律の発展
時代が進むにつれて、ピタゴラス音律には不具合が出てきました。ピタゴラス音律は計算で作った故、和音を鳴らした際に周波数比が噛み合わずに、音の「うなり」が聞こえる現象が起こることがあるのです。
一方その頃、アリストクセノスの学派がもっと単純な比で音律を作り上げていました。しかし、これはこれで「作りが単調すぎる」ということになり、調整の結果「純正律」と呼ばれる音律が誕生します。この音律は、特定の調で和音を鳴らした際に最も美しく響くように調整されています。
しかし、この純正律にも欠点が出てきてしまいます。具体的にどういうことかというと、「最初にハ長調で綺麗に鳴るように調整すると、曲にト長調やイ短調の部分が出てきた時だけ綺麗に鳴らない」という現象が起きてしまうのです。バイオリンや歌などの調律をすぐに変えられる楽器は良いのですが、ピアノなど調律に時間を要する楽器にとっては由々しき問題でした。
ここでやっと平均律が日の目を見る時が来るのです。平均律はオクターブを12等分しているので、どんな調でも同じ調律で演奏ができます。こんなわけで、21音だった音律は現在の12音となったのです。
※平均律も多少の「うなり」を含みますが、平均律で作られた楽曲を聞き慣れている私たちの耳では、相当注意深く聞かないと「うなり」は聞こえてきません。
おわりに
コンパクトになったはずの音律ですが、現代になって再び「微分音(半音の半分または1/3)」という12音から外れた音程が使用されるようになります。
時代とともに、音律はいっそう多様性を増すことでしょう。新しい時代の音楽が楽しみですね!