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読書で「文系・理系」のバランスを取りたい

河村 京極先生の作品をよく読んだのは、森博嗣先生の小説が好きだったこととも関係があって。

▲森ミステリィも愛していた河村少年

――映像化された『すべてがFになる』など、工学や認知科学の要素を取り入れた鮮やかなトリックが印象的です。

河村 あまりそういう区分にはこだわりたくないけど、自分の中で「文系・理系」のバランスを取っていたのかなと思いますね。「なるべく多く、いろんな作家を読もう」というよりは、自分の中でこのバランスが保たれるような読書をしたい、というか。

――バランスを整えたい気持ち、ちょっとわかります。「ハードなSFの後は青春ものにしよう」とか、ほかにもいろんな組み合わせがありそうです。

「昔の自分に読ませたかった」河村のおすすめ本

――読書のバランスの話もあったように、河村さんは京極作品以外にもいろんな本に触れてきたと思います。たとえば小学校高学年……「10歳くらいの自分」に会って1冊本を薦めるとしたら、何を挙げたいですか?

河村 宣伝かよ!と言われそうですが(笑)、10歳の自分にはこれを読んでほしいですね。『High School Quiz Battle WHAT 2022 公式問題集』。

WHAT:QuizKnockが2022年から主催している、高校生以下を対象としたクイズ大会。熱戦の模様はこちらの動画で。

――おや、クイズの問題集ですか。いわゆる「名作文学」を挙げるかと思ったので、かなり意外なチョイスですね。

河村 後出しジャンケンを承知で言えば、当時の自分は「世界は広い」ということ、「世界にはどんなものがあるか」を知らなかったがゆえに、足踏みしていた気がするんです。「WHAT」があれば、きっとそんな自分の視野を広げてくれる1冊になったと思います。

――確かに、小学生でも解けそうな問題もありますし、興味の幅を広げてくれそうな題材が盛りだくさんですよね。

▲「君は世界を知る」に始まる大会コンセプトも実現されそうだ

――ではついでにもうひとつ。中学生、15歳くらいの自分に読んでほしかった本はありますか?

河村 ……『坊っちゃん』

▲言わずと知れた名作『坊っちゃん』

――今度は超・王道! 教科書にも載っているおなじみの作品ですね。これまたどうしてでしょう?

河村 「王道を王道として受け入れること」を学んでほしい、というところですね。オルタナティブな(主流でない)選択に飛びつきたくなる年頃ですが、そんな選択を慎ませるために(笑)。

――何でも基本を知っておかないと、応用が利かないということですか。突飛な発想のイメージが強い河村さんの口から聞くと、ものすごく説得力がありますね。

河村 特に若いうちはそうですね。

▲奇抜な発想も、基本の積み重ねの上にある(『東大生100点は取り飽きたので人生最高得点を取る旅に出ます』より)

河村 もう少し大人……20歳くらいになってくると、今度は気になったことをすぐに試したり、まずは読んでみたりして「いろんな価値観を知る」のが何よりな気がしています。

人から薦められたものが果たして刺さるのか? という問題もありますし、いろいろ考えた結果「大人はKindleのセールまとめサイトで好きなものを見つくろいましょう」という結論に落ち着きそうです(笑)。

創作は「その場で思いついている」

――せっかくなので、河村さんの創作スタイルについても聞かせてください。河村さんはじっくり自分の人生と向き合って書く派ですか? それとも、その場でパッと作り上げる派ですか?

河村 その場で考えていますね。今まで小説は短編しか出していないので、その都度思いついたワンアイデアで逃げ切れていたのかなぁ、とも思いますが。

▲アイデアパーソン・河村

――これまでの経験を武器に……というよりは、センスでどうにかするタイプなんですね。

河村 完全にそうとはいえなくて、ピカソの「30年と30秒」みたいな話(それ自体は都市伝説っぽいですが)に頷ける部分もあります。

「30年と30秒」:ファンに絵を頼まれ、さっと描いてやったピカソは1万ドルのお代を請求。「たった30秒で?」と驚かれると、「30秒ではない。30年と30秒だよ」と返し、「作品は人生の積み重ねの上に成り立つものだ」と諭した……というお話。

河村 僕は「パッと思いつくことのベクトルが他の人と違う」と言ってもらうことが多い……まあ自分はあまりそうは思わないんですが(笑)、結局創作物というものは個人個人特有の経験から生まれているのではないでしょうか。

僕の場合はどの経験が作品に直結したのか、自分では認識できていないので、結果的に「その場で考えている」と思う方がしっくりきますね

「QuizKnockっぽくない」ものが書きたい

――最後に、今後の作品についても聞かせてください。いま「自由に小説の原稿を書いてください」と言われたら、書いてみたいテーマはありますか?

河村 普段QuizKnockでやらないものを作ってみたいですね。論理的でないもの、あるいは倫理的でないもの

▲「QuizKnockではできないことを書きたい」

河村 ジャンルでいえばファンタジーかSFか、青春ものでしょうか。ミステリーは読者としては好きなんですが、今のところの自己評価としては、書く方にはそんなに向いていない気がしています。やる前から向いてる/向いてないの話をするものではないけれど。

――ちなみに京極さんは、同じ質問に「専ら仕事のために書いているので、今後書きたいテーマはありません!」と即答されていて、いち読者としては面食らいました。書き手にもいろんなタイプの方がいるんだなぁと思って(笑)。

河村 京極先生、さすが一本筋が通っていらっしゃる(笑)。僕は趣味で書きたいものがあるか・ないかでいえば、ある側ですね。


「河村拓哉史」を語る上で、京極夏彦という作家が欠かせない1ページだということ。更には幼少期から骨太の京極作品に触れてきた「強者」らしい、河村の創作への信念も感じさせるインタビューでした。ジャンルの垣根を越えた今後の執筆活動にも注目です。

そして、百鬼夜行シリーズ最新作『鵼の碑』は好評発売中! 講談社ノベルス(新書)版【832ページ、税込2,420円】と、単行本【1,280ページ、3960円】の2種類が同時刊行されています。

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この記事を書いた人

カタヤマ

QuizKnock編集部で記事作りのお手伝いをしています。お仕事以外はスポーツ観戦、コンサート(特にクラシック)、積読の山との格闘などに時間を使っています。

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