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QuizKnockでの個性的な記事執筆のみならず、書評の連載や短編小説「冷たい牢獄より」の発表など、多方面での活躍を見せる河村拓哉

そんな河村が「読書の原点のひとつ」と語り、愛してやまない作家が京極夏彦さんです。

▲京極夏彦さん(撮影/森清)

代表作の「百鬼夜行シリーズ」は累計発行部数1000万部を達成し、「エンタメの歴史を変えた」とまで評される伝説的作品。「古本屋にして陰陽師」という風変わりな肩書を持つ中禅寺秋彦(通称「京極堂」)らが、様々な妖怪に見立てられた難事件を解き明かしていく推理小説シリーズです。

今年(2023年)9月には17年ぶりの新作『ぬえいしぶみ』が刊行され、ファンを熱狂させました。

▲著者のデビュー30周年、節目の年に待望の発表だった

河村はそんな京極作品にどんな影響を受け、クリエイター業に活かしてきたのでしょうか? 少年時代の読書の思い出や、今後の執筆活動への思いをインタビューしてみました。

後半では、河村が「かつての自分に読んでほしかった」と思うおすすめ本もご紹介!

目次

◎ 小学生で京極夏彦を……「雰囲気で読んでいた」
◎ 求めていたのは「すべてが説明される爽快感」
◎ 「文系・理系のバランスを取りたい」河村の読書術
◎ 河村が「昔の自分に読ませたかった」おすすめ本
◎ 創作者・河村が目指すのは「QuizKnockでやらないこと」

京極作品との出会い

――河村さんは小学生のときから京極さんの作品に触れていたそうですね。驚きました。そもそも、どうして読んでみようと思ったんでしょうか?

河村 詳しく覚えているわけではないんですが、小学校高学年の頃にミステリーを読み漁っていた時期があって、その中で何とはなしに手に取ったのだと思います。やっぱり、厚い文庫本だったのをよく覚えています。

厚い文庫本:京極作品は軒並み超大作で、時に1000ページを超える。一部の読者からは凶器にたとえて「鈍器本」と呼ばれることも。

▲(物理的に)小学生の手に余る本だった

河村 2日に分けると途中で話がわからなくなるだろうなと思って、1日かけて読み通した記憶がありますね。

――あの分量を小学生が1日で、ですか!?

▲河村は小学生でこれを読破した(書籍提供:講談社)

河村 「読むこと」に苦手意識がなかったというのはあります。でも、確かに小学生が読むことは想定されていないかもしれませんね。タイトルからして「姑獲鳥うぶめ」とか「鉄鼠てっそ」とか、不気味なお化けの名前がついているし。

――読むのに苦労しませんでしたか?

河村 ……まあ、雰囲気で読んでいた気がします

▲「つまり適当に読み飛ばしていたってことです(笑)」

河村 それでも小学生なりに理解できていたのは、今思うと話の筋が綺麗に整理・整頓されていたからだと思いますね。

――実は先日、京極さんの合同取材会に参加してきたんです。そのとき、京極さんも「難しいところは飛ばして、気に入ったところだけ読んだっていい」と大真面目におっしゃっていたので、その読み方もひとつの正解だったかもしれませんよ。

河村 それはよかった(笑)。

▲京極さん、トレードマークの和服姿でご登場(合同取材会にて)

河村 本が分厚いことは、細かいことを気にせずに読んでいくスタイルとマッチしていると思うんですよね。今でもそうなんですが、当時の僕は読書を「情報の奔流を受け止める」体験だと思っていたので……。流れのままに、雰囲気でどんどん進んでいけました。

――「長いのに一気に読めちゃう」のが京極作品の魅力といわれますが、当時の河村さんもそのとりこになっていたんですね。

「すべてに説明がつけられていく」爽快感

――改めて、「百鬼夜行シリーズ」のどんなところにハマっていましたか?

河村 さっきの話や以前のインタビューとも重なるんですが、読みながら「なるほどね」と頷けるような、論理的な作品が好きだったというのが大きいですね。

▲こちらの記事でも河村拓哉のホンネが聞けます

ーー京極さんのすごいところが、とても緻密につくられた作品ばかりなのに、先日の取材会で「書こうと思った段階で話は完成している。まだ(文字として)書いていないだけ」とおっしゃってたんですよね。

河村 すごいですね。百鬼夜行シリーズに関しては、単に筋道立っているだけでなくて、「一見理屈で説明できなさそうな描写にも、一つ残らず説明がつけられる」ところがいいんですよ。超常現象のような事件が起こるけど、京極堂たちが必ず納得できる理由を与えていく、その爽快感というか……。

▲「すべて」が説明されていくのが気持ちよかった

河村 それだけに、「この世には不思議なことなど何もないのだよ」というフレーズには、とても共感できるものがありましたね。

「この世には不思議なことなど何もないのだよ」:百鬼夜行シリーズの象徴ともいえる、京極堂の決めゼリフ。京極堂は妖怪や民間伝承を愛する一方で、超常現象や心霊を毛嫌いし、理詰めで推理を組み立てるキャラクターとして描かれる。

――あのセリフ、真似したくなりますよね。ではシリーズの中で一番好きな作品を挙げるとしたら、どれでしょうか?

河村 シリーズ2作目の『魍魎もうりょうはこ』ですかね。

▲シリーズ屈指の人気作『魍魎の匣』は映画化・アニメ化もされた

河村 理由としては、若かった自分の中にビジュアル面の印象が強く残っているからだと思います。のっけから「はこの中に四肢が入っている」という。

▲「やっぱり『魍魎』はいいよなぁ」

河村 京極作品は本の見た目の圧こそすごいけど、とりあえずタイトルが気になった人は手に取ってみたらいいと思います。『狂骨の夢』とか、『邪魅の雫』とか……この字面の雰囲気に惹かれるものがあれば。

▲作品のタイトルは江戸時代の画家・鳥山石燕せきえんが描いた妖怪たちに由来している(左:狂骨、右:邪魅)

――奇しくも、京極さんも取材会で近いことをおっしゃっていました。「タイトルだけ読んでくれた方も大切な読者、中身まで読んでもらえたらもっとありがたい」と。

▲「ページをめくりたいという衝動が生まれたら、読み進めてみてださい」

――「小説は読んだ人がみな違う感想を持つのが一番いい形であって、作者の思惑にとらわれず、自由に解釈することこそ読書の醍醐味」というお話もありました。

河村 そういう意味では、僕は「読書によって妖怪を体験する」作品として読んでいましたね。一匹の妖怪の生き様を目に焼きつけるようなイメージで、作品世界に浸るのが楽しいと思います。

次ページ:「文系・理系のバランスを取りたい」河村流の読書術とは? 子ども時代の自分に教えたい「おすすめ本」も紹介!

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この記事を書いた人

カタヤマ

QuizKnock編集部で記事作りのお手伝いをしています。お仕事以外はスポーツ観戦、コンサート(特にクラシック)、積読の山との格闘などに時間を使っています。

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