ほかの国にも「パンダ」はあるけど……?
実は日本も、中国の「パンダ外交」と同じようなことをやっているんです。
アニメやゲームで、ですか?
そうなんです。ここでカギになるのが、「ソフトパワー」という考え方です。
ソフトパワー :アメリカ・ハーバード大学の政治学者ジョセフ・ナイ氏が提唱した概念。軍事力や経済力で相手を動かす「ハードパワー」に対して、文化や価値観、政策の魅力で相手を引きつける力を指す。
軍事力やお金で相手を動かすのがハードパワー。それに対して、「この国、なんだか好き」と思わせて引きつけるのがソフトパワー です。
相手に「好き」になってもらう力、ですか。
たとえばアメリカなら、ハリウッド映画やジャズ、ジーンズ、アメ車。こうした文化に憧れて育った人は、世界中にいますよね。
▲ロサンゼルスのハリウッドサイン
韓国のK-POP もそうです。BTS をきっかけに韓国に興味を持った、という人も多いですよね。
そういえば日本も、国が「クールジャパン 」としてアニメやゲームを売り込んでいるのを思い出しました。
まさに。今も政府は、アニメやゲームなど日本発のコンテンツの海外売上高を、2033年までに20兆円にする目標を掲げています。
▲シンガポール・チャンギ国際空港内にあるポケモンセンター
ただ、たとえば2013年にできた官民ファンド「クールジャパン機構」は、累積の損失が2025年度時点で540億円にのぼると報じられていて、統合や廃止も含めた見直しが進んでいるんです。
国が仕掛けてパンダ以上にうまくいっている例は、あまりなさそうですね……。
そうですね。アニメやK-POPは、民間の会社やクリエイターが自由につくって、人気になったもの。国が中身をコントロールすることはできません 。
じゃあ、人気になったものに、国があとから乗っかる形ならありえますかね。
その通り。たとえば韓国では2021年、BTSが大統領特使に任命されて、外交官用のパスポートを持って国連総会に出席しました。これも、BTSがすでに世界的に人気だったから こそなんです。
でもパンダは、どの国の、どの動物園に、何年貸して、どう暮らさせるかまで、中国政府が決められます 。
国がまるごと握っているソフトパワー。だから別格なんですね。
外交=「偉い人の握手」だけじゃない
外交のニュースというと首脳同士が握手するとか、軍事費がどうのこうの、みたいな話が多くて、どうしても硬く見えますよね。
でも今日の話のように、パンダもアニメもK-POPも、立派な外交の資源 なんですよね。
私たちが何かを「好き」になる気持ちも、外交とつながっているんですね。
パンダを見て「かわいい」と思う気持ちはもちろん自然なものなので、そのまま大切にしてほしいんです。
ただ、こういう話もあって。19世紀イギリスの外相パーマストンが語った、「永遠の味方も、永遠の敵もいない。あるのは永遠の国益だけだ」 という有名な言葉があるんです。
▲パーマストン
どの国も、自分の国の利益のために動いている、と。
そうそう。パンダを貸すのも、映画やアニメを世界に広げるのも、根っこは同じなんです。
中国だけが特別、というわけではないんですね。
そういうことです。次にパンダのニュースを見たときは、「この子は、どんな約束でここにいるんだろう?」 と、一歩引いて考えてみるのもいいかもしれませんね。
かわいいだけじゃないパンダの見方、覚えておきます!
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【画像出典(画像を一部加工しています)】
上野動物園のジャイアントパンダ:Wikimedia Commons Biliana Nikolova-Lfterova CC BY-SA 4.0
シャオシャオとレイレイ:Wikimedia Commons 江戸村のとくぞう CC BY-SA 4.0
上野動物園の案内表示:Wikimedia Commons 星幻丶碎梦 CC BY 4.0
ハリウッドサイン:Wikimedia Commons Thomas Wolf, www.foto-tw.de CC BY-SA 3.0
シンガポールのポケモンセンター:Wikimedia Commons Mike Peel CC BY-SA 4.0