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パンダは「かわいすぎて」役に立つ?パンダと国際政治の意外な関係

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パンダは「かわいすぎて」役に立つ?パンダと国際政治の意外な関係

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連載「ニュース解体中」(更新:隔週月曜)

テレビやスマホに流れてくる、政治や経済のニュース。「大事そうだけど、なんか難しそう……」と思って、見過ごしたことはありませんか?

この連載では「ニュースを見るのがニガテ」な方にも向けて、いま知っておきたいニュースやその裏側を紹介。ニュースを「解体」するように、わかりやすさ・おもしろさ重視で解説します! ご意見・ご感想はXのハッシュタグ #ニュース解体中 でお寄せください。


2026年9月末、中国から2頭のジャイアントパンダがアメリカ・アトランタの動物園にやってきました。一方、日本では2026年1月に上野動物園の双子パンダが中国へ帰り、国内のパンダはゼロに。アメリカには行くのに、日本には来ない。この違いは、どこから来るのでしょうか?

パンダを入り口に、外交のちょっと意外な一面をのぞいてみましょう!

▲上野動物園のジャイアントパンダ(2014年撮影)
連載「ニュース解体中」のライター。大学院で公共政策を学ぶなど、政治・ニュースの話題を追うのが好き。
編集者。ニュースへの関心は人並みくらい。

パンダが「外交の道具」になるのはなぜ?

カタヤマさん、パンダって好きですか?
好きですよ。かわいいですよね。
そのパンダのニュースなんですけど、先月末、中国から2頭のパンダがアメリカの動物園にやってきたんです。
実はこの2頭、中国の習近平国家主席がアメリカとの首脳会談を前に「もうすぐ到着しますよ」なんて予告もしていたんですよ。
ずいぶん大きなニュースですし、ちょっとうらやましいです。日本には今、パンダがいないですもんね。
そうなんです。2026年1月に上野動物園の双子、シャオシャオとレイレイが中国へ帰って、日本のパンダはゼロになりました。
▲上野動物園で暮らしていたシャオシャオとレイレイ
1972年に初めてパンダが来日して以来、初めてのことだそうですよ。
日本からいなくなったのには、外交上の問題が関係しているって言いますよね。今回のアメリカのニュースにも、習近平氏の名前が出てきますし。
パンダが政治の話に出てくるくらい各国から大事にされているのは、どうしてなんですか?
そこが、今日の話のいちばんおもしろいところなんです。
私、パンダが外交に使われるのはかわいすぎるからだと思っていて。
かわいすぎるから……? どういうことですか?
今日は、最近中国が力を入れている「パンダ外交」を紐解いてみましょう。

パンダは「プレゼント」から「レンタル」へ

そもそも「パンダ外交」って、いつからあるんですか?
本当かどうかはわからないんですけど、古くは1,300年以上前、唐の時代に日本へパンダが贈られた、という説もあるくらいなんです。
1,300年以上前! 真偽はともかく、「動物を贈って仲よく」という発想はそんなに昔からあるんですね。
記録がはっきりしているのは1941年。当時の中華民国が、支援してくれたアメリカへのお礼として、パンダを贈りました。
で、1972年には、アメリカと日本の両方にパンダがやってきます。
1972年って、田中角栄首相とかの頃ですか?
そうです。日本と中国の国交が正常化した年で、それを記念して上野に来たのが、カンカンとランランでした。
アメリカにも同じ年、ニクソン大統領の訪中をきっかけに2頭が贈られています。
▲1972年にアメリカへ贈られたシンシン(興興)。ワシントンの国立動物園で暮らした
ところが1980年代に入ると、中国はパンダを「貸す」方式に切り替えます。
プレゼントから、レンタル式になったんですね。
そうなんです。やがて「共同研究のため」という名目で長期の貸し出しも定着したんですが、パンダの所有権はずっと中国にあります。貸し出し中に生まれた赤ちゃんも、中国のものなんですよ。
しかも費用は、受け入れる側の負担。レンタル料は1ペアで年最大100万ドル(約1.5億円)ともいわれていて、ほかに飼育施設や大量の竹、専門家の滞在費もかかるんです。
それでも、パンダがいれば動物園はにぎわうし、国民も喜ぶ。だから高くてもほしがるんですね。
まさに。高いお金を払ってでもほしいと思わせるくらい、かわいさで人を魅了してしまう。そこがパンダのすごいところなんです。

なぜアメリカにいて、日本にいないの?

中国はそんなパンダの力を借りて、各国との関係を深めているわけです。パンダは中国と各国との距離感を表すものさしのようなものかもしれませんね。
つまり、いまアメリカにパンダがいて日本にいないということは、米中関係より日中関係のほうが冷え込んでいる、ってことですか?
基本的には、そう考えていいと思います。
中国が「パンダ外交」をするときのパターンは、大きく3つあると思うんです。1つ目は「ご褒美」。良い関係を築いてくれてありがとう、という意味で貸し出す。
仲よくしてくれた国への、お礼みたいなものですね。2つ目は?
相手側の世論を動かすことです。たとえば2008年、台湾で中国本土との関係改善を進める政権が誕生すると、中国はその年のうちに台湾へパンダ2頭を送りました。
2頭の名前は「団団トゥアントゥアン」と「円円ユエンユエン」。合わせると「団円(团圆)」。中国語で、離れていた家族が再び集まる、という意味になるんです。
▲台北市立動物園の団団
名前にまでメッセージが込められているなんて、よく考えられていますね。
3つ目は、「アメとムチ」のアメ。最近の中国の外交は、強い言葉で相手に迫る「戦狼せんろう外交」と呼ばれるスタイルでも知られていて。

戦狼外交:中国の外交官などがとってきた、他国への強い批判や威圧的な発言も辞さない外交スタイル。中国のアクション映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』(原題:戦狼2)にちなんでいる。

ムチだけだと、相手の国の人たちに反発されますよね。そこにパンダというアメを組み合わせて、イメージを和らげている、という見方があるんです。
逆に関係が悪くなったら、「貸さない」ということ自体もカードになるわけですね。
そういうことです。日本の場合だと、2025年11月の「台湾有事」をめぐる首相の国会答弁に中国が強く反発して、日中関係は一気に冷え込みました。
上野の双子は政治の話とは関係なく、あくまで貸し出しの期限を迎えて中国へ帰っただけではあるんですが、新しいパンダの話は進んでいません。
▲上野動物園の「現在、ジャイアントパンダは展示しておりません」の案内(2026年2月撮影)
日本にまたパンダが来る日は、近いんでしょうか?
うーん……。日本と中国は隣国なので、中国にとっても関係が悪いままなのは望ましくないはずなんですけど。
1972年から50年以上も日本にパンダがいたこと自体が、かなり特別だったんです。個人的には、しばらくは戻ってこないとみています。
日本でパンダを見られるのは、もう少し先になるかもしれないんですね……。
それにしても、どうしてほかの動物でなくて、パンダばかりが注目されるんでしょう。
そこで最初の話に戻るんです。パンダは、かわいすぎるんですよ。
かわいすぎることが、外交の役に立つんですか?
あくまで私の見方ですけどね。誰が見てもかわいいうえに、パンダが政治的な意見を表明することはないですからね(笑)。外交の思惑も駆け引きも、すべてかわいさが包み込んでしまうんです。
そのうえ、野生のパンダは中国にしかいない。貸すか貸さないかを、中国だけが決められます。
中国にとっては、自由に使える奇跡的なカードですね。
そうなんです。中国はこのカードを、本当に上手に使っているなと思います。
でも実は、中国以外の国も似たようなことをやっていて。日本のアニメやゲームだって、ある意味ではパンダと同じなんですよ。
アニメとパンダが同じ……どういうことですか?

次ページ:日本も「パンダ外交」と似たことをやっている? それでもパンダが「別格」なわけ

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Alex

Alex

シンガポール在住。現在はシンガポール国立大学・リークアンユー公共政策大学院で公共政策を研究しつつ、(株)batonの海外業務も担当しています。 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)出身。世界情勢・国際関係の面白さを伝えていきたいです。

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