解説
正解は『源氏物語』でした。
ヒント1:上村松園『焔』
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上村松園は美人画を得意とした日本画家で、女性として初めて文化勲章を受章した人物としても有名です。
設問の『焔』は、『源氏物語』を主題にした謡曲(能の脚本のこと)『葵上』に着想を得て描かれた作品です。光源氏の求愛を受けるも他の女性に乗り換えられてしまった六条御息所という女性が、嫉妬に狂う生霊となった様子を描いています。着物に描かれた蜘蛛の巣の柄が、執拗な怨念を感じさせますね。
『焔』は主題のみならず作品そのものも能の影響を受けています。『葵上』で用いられる能面の中には、白目の部分に金泥を塗り、人間のようでありながら人間を超越した存在であることを表す「泥眼」という面があるのですが、実は『焔』の六条御息所の目にも金泥がわずかに入れられているのです。こうして目からは異様な輝きが発され、単なる美人画とは違う、恐ろしい生霊が表現されています。
ヒント2:歌川国貞『偐紫田舎源氏』
『偐紫田舎源氏』は、江戸時代の戯作者・柳亭種彦の長編小説です。『源氏物語』の舞台を平安時代から室町時代に移して書かれており、主人公の光氏も帝の子ではなく、将軍・足利義正の子という設定になっています。
設問の画像は浮世絵師の歌川国貞による挿絵です。歌舞伎のような華やかな挿絵は大好評で、のちに小説の一場面を錦絵化した「源氏絵」が販売されるほどの人気を生みました。
しかしのちの天保の改革では、絢爛豪華な世界観が江戸城の大奥を風刺したものではないかとの疑いをかけられてしまい、絶版処分となりました。
ヒント3:二千円札
二千円札は九州・沖縄サミットの開催を記念して2000年に発行が開始された紙幣です。裏面には『源氏物語絵巻』から第三十八帖「鈴虫」の一場面と、『紫式部日記絵巻』に描かれた紫式部の絵が図柄として採用されています。
左側の男性は光源氏と藤壺の不義の子である冷泉院、右側のこちらに背を向ける男性は光源氏です。タイトルのとおり鈴虫の声を聴く宴の様子が描かれていますが、ここで言う鈴虫とは現在で言うマツムシのこと。逆に、現在でいうスズムシのことは「マツムシ」と呼んでいたそう。紛らわしいですね。
普段はなかなか見かける機会のない二千円札ですが、沖縄県での流通量は年々増加しており、二千円札を選んで引き出すことが可能なATMもあります。
来年(2024年)には紫式部を主人公とするNHK大河ドラマ『光る君へ』が放送されます。これを機に皆さんも『源氏物語』について調べてみてはいかがでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ次回の「今日の一問・美術編」にも挑戦してくださいね!
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