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どうも、カワカミです。日曜日はずっと寝込んでいました。胃腸炎でした。つらかった……。

さて、「ことばの研Q」の時間です。前回は「校閲」がテーマでしたが、今回は校閲の際に直すべきか悩んでしまうことばについてです。

まずはこの文章を見てみましょう。皆さんも校閲者になったつもりで、気になったところはどんどん指摘していきましょう。


実況「カワカミ選手、汚名挽回の逆転満塁ホームラン! 昨日の雪辱を晴らしました!」
解説「相手ピッチャーからしてみれば、足下をすくわれた、というところでしょうか。ここまで好調だったチームの流れに棹(さお)さす結果になってしまいました」

さて、皆さんは何ヶ所気になりましたか?
では、本来の表現に直してみましょう。


実況「カワカミ選手、汚名返上/名誉挽回の逆転満塁ホームラン! 昨日の雪辱を果たしました!」
解説「相手ピッチャーからしてみれば、足をすくわれた、というところでしょうか。ここまで好調だったチームの流れに棹さす(意味が合わない)結果になってしまいました」

どうでしたか? すべて指摘できましたか?
ひとつひとつ見ていきます。

【汚名返上】不名誉な評判を自らの力で打ち消すこと。「名誉挽回」も同義。 ×「汚名挽回」
【雪辱を果たす】前に負けた相手に勝つこと。 ×「雪辱を晴らす」
【足をすくわれる】相手の失敗のスキをつくこと。 ×「足下をすくわれる」
【流れに棹さす】物事を時流に乗せて、順調に進行させること。

正しい意味を知らなかった人、間違ったかたちで覚えていた人、いませんか? というより、大半の人はどれか1つくらいは間違えていたのではないでしょうか。

それもそのはず。これらはすべて、誤って使われることの方が多い表現なのです。

文化庁が毎年実施している「国語に関する世論調査」では、日本語に関するさまざまな調査が行われています。その結果を見てみると、現代の日本人が使う日本語のリアルな実態が明らかになってきます。

上に挙げた4つについても、以下のような結果が出ています。

「前回失敗したので今度は――しようと誓った」
○「汚名返上」38.3%
×「汚名挽回」44.1%
(平成16年度)

「前に負けた相手に勝つこと」
○「雪辱を果たす」43.3%
×「雪辱を晴らす」43.9%
(平成22年度)

「卑劣なやり方で、失敗させられること」
○「足をすくわれる」16.7%
×「足下をすくわれる」74.1%
(平成19年度)

「流れに棹さす」の意味
○「傾向に乗って、ある事柄の勢いを増すような行為をする」23.4%
×「傾向に逆らって、ある事柄の勢いを失わせるような行為をする」59.4%
(平成24年度)

いずれも本来の形・意味(太字)よりも誤用の方が一般的だという結果が出ています。このような状況を「日本語の乱れだ」として一刀両断することは簡単です。しかし、場合によっては日本人の半数以上が使っているかたち・意味を「間違っている」と見なしていいのでしょうか。

繰り返し主張しているように、ことばは生きています。かたちも意味も変わって当然です。中学高校で習った古文単語が現代の日本では使えないのと同じように、上に挙げたような本来の表現も、やがて使えなくなるかもしれません。

だから、僕はこれらを「間違っている」とは断言できません。コミュニケーションという面で言えば、世間一般で広く使われているものを使うべき、とすら言えるかもしれません。日本語を使うということは、これほどまでに難しいことなのです。


とはいえ、「正しい日本語を知っているつもり」の人から「その使い方、間違っているよ」とドヤ顔で指摘されるのも腹が立ちますよね? せっかくですから、日本語の本来のかたち・意味について確認してみましょう。

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この記事を書いた人

カワカミタクロウ

東大文学部卒、東大クイズ研究会OB。

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