S.M.さんによる「かんりか」についての分析
述語を含んだ表現の略という珍しさ
直感的にあるいは軽く調べてみても、日本語の略語は、単一語や複合語、複合表現が略されているケースが多く、「完全に理解した」のように述語を含んだ表現が略されているものは少ない気がする。
「日本語の略語、短縮表現といえば?」と聞かれたらまずこの辺の構造のものが思いつくと思う。
単一語
- バイト(アルバイト)
- スト(ストライキ)
- ロボ(ロボット)
- タピ(タピオカ)
名詞+名詞、または連体修飾語+名詞
- パソコン(パーソナルコンピュータ)
- トリセツ(取扱説明書)
- バ先(バイト先)
- バリキャリ(バリバリ働くキャリアウーマン)
上記以外の述語を含まない表現
- なるはや(なるべく早く)
- とりま(とりあえずまあ)
では、述語を含む表現を略しているものはというと、まず思いついたのはことわざなどの慣用句を略したもの(たなぼた、ちりつも、やぶへび、るいとも、等)。めちゃ+形容詞の略(めちゃうま、めちゃはや、等)なども使うかもしれない。「めちゃイケ」も、めちゃめちゃ+イケてるなので近い。最近よく若者が使う「り」も「了解です」を略してるだろうからこれに当てはまりそう。
連用修飾語+用言が略語表現になってることの珍しさ
「めちゃうま」とかは連用修飾語+用言だけど、「たなぼた」も「り」も違う。さらにいえば、動詞を含んでるっていうのは稀な気がする。「かんりか」にいちばん近い構造なのは「リアコ」(リアルに恋をしている、主に芸能人や二次元キャラに対して使う)かなと思った。良い例が他には浮かばず。
ガリ勉も近いけど、ガリ勉はその状態よりもその人自体を指すことが多いので少し違う。リアコはその状態のことも、その状態の人のことも、どちらも指す模様。「かんりか」は「かんりか状態の人」のことは指さないので、ここが大きく違う。
表記のやわらかさ
「かんりか」は、「完全に理解(した)」の略なので、表記するとしたら「りか」の部分は平仮名になるのが自然であり、そうなると、「かん」も合わせて平仮名で表記することになる。元々は「完全理解」なのでやや堅いイメージだが、略して「かんりか」と表記することで、柔らかい印象になる。可愛いし。
「完全に承知」だったら「完承」とかになっちゃうから、全然可愛くない。最後に、かんりかの今後を考えると、懸念点として管理下、管理課などの同音異義語が既に世に定着していることがある。これの影響で誤解を招く可能性があって、広まりにくいかなという。文脈的にわかるだろうとも思うけど。派生として「ややりか」「ほぼりか」とかもできると楽しくていいなと思う。