QuizKnock

アプリで記事をもっと見やすく

インストールする

カテゴリ

ログイン
PR
株式会社宝塚クリエイティブアーツ

尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の失職が決まり、「次の大統領は誰になるのか」と選挙戦の熱気が広がりつつある韓国

この大統領選は日本人にとっても注目に値するイベントで、今後の日韓関係に一定の影響をもたらすかもしれない……ということを、先日の記事でお伝えした。

️影響が及ぶのは、何も政治だけではない。今回の選挙結果次第では、私たちが行けるソウルの観光スポットがひとつ減るかもしれないのだ。

今行くしかない、ソウルの名所

その名所とは、青瓦台(チョンワデ/せいがだい。2022年まで70年以上、韓国の大統領府として使われてきたスポットだ。アメリカのホワイトハウスになぞらえて「ブルーハウス」と呼ばれることもある。

▲ソウル市街からのアクセスも良好。ほど近い景福宮(朝鮮王朝時代の王宮)とあわせての観光がおすすめだ

パスポートさえ提示すれば、外国人もかつての大統領執務室などを見学できる。日本でいえば首相官邸が一般公開されているようなものなので、なかなか豪勢な話だ。

▲大統領の執務室。Netflixの韓国ドラマ『旋風』視聴者にはおなじみの光景
▲式典用の部屋。ここにいると自分まで偉くなった気分

この青瓦台の一般公開を決めたのは尹・前大統領。ソウルを代表する観光地となった一方で、長らく「権力の象徴」とみなされてきた青瓦台を開放する大胆な方針転換には、批判の声も上がってきた。

今回の大統領選では、与野党問わず「大統領府の青瓦台への再移転」を議論する向きが出てきている。つまり選挙戦のゆくえによっては、一般人が立ち入れない場所になる可能性もあるということだ。

選挙の投票日は6月3日。韓国情勢に興味がある人はもちろん、そうでない人も一見の価値はある場所なので、ぜひ近いうちにソウルを訪れてみることをおすすめする。

▲豪華な正面玄関前は絶好の撮影スポットだ(筆者)

混戦模様の大統領選

では、そんな選挙の情勢はどうなっているのか。

最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)前代表がリードしているものの、李氏自身が複数の裁判を抱えており不安定。一方の与党は候補者がまとまらず、「ポスト尹」探しに苦戦中という状況だと見ていいだろう。

大統領に一番近い? 野党候補・李在明氏

李氏は2022年の大統領選で与党候補の尹錫悦氏に僅差で敗れた実力者で、現在も根強い支持を誇る。

しかし李氏を悩ませているのが、現在係争中の5件の裁判だ。そのうち1件は公職選挙法違反に関するもので、仮に選挙日までに有罪判決を受けた場合は出馬資格を失う可能性さえある。

次期大統領に最も近い男」といった報道もあるが、就任までに乗り越えるべきハードルはまだまだ多そうだ。

李氏は将来的な世宗(セジョン)市への大統領府移転を目指し、青瓦台を再び使用するとの見方が強まっている。さまざまな点で最注目の候補だ。

与党候補は?

与党「国民の力」は、尹・前大統領の後継をめぐり候補者が乱立している状態だ。金文洙(キム・ムンス)前雇用労働部長官、韓東勲(ハン・ドンフン)前与党代表らの名前が挙がっているが、いずれも決定打に欠ける状況。党内での予備選挙を経て、候補が一本化されるとみられている。

️トランプ氏も一目置くキーパーソン

こうした中、与党内で「出馬待望論」が高まっている人物がいる。現在大統領代行を務め、暫定的に政府を率いている韓悳洙(ハン・ドクス)首相だ。

韓氏は国際経済に精通したエリート官僚で、第1次トランプ政権時代のアメリカとの関税交渉で重要な役割を果たすなど、語学堪能な人物。4月8日の電話協議でもトランプ大統領から「大統領選に出るのか?」と声をかけられるなど、国外からも一目置かれる存在だ。

出馬となれば野党側も警戒感を強めるはずで、韓氏の動向に熱い視線が注がれている。

異例の“超短期決戦”にも注目

尹・前大統領の罷免から始まった今回の選挙戦では、候補者たちの動き以外にも押さえておきたいポイントがある。異例の“超短期決戦”となる点だ。

韓国の憲法では、大統領が死亡・判決などにより資格を失った場合、60日以内に後任者を選出することが定められている。出馬表明〜当選確定まで約8カ月半あった前回(2022年)の選挙と比べると、期間は約4分の1。通常の4倍の密度で選挙戦が進行していくともいえるわけだ。

更に、当選後の準備期間がない点も重要だ。通常、新大統領には「大統領職引継委員会」による準備期間が設けられるが、今回はそれが一切なく、選挙結果が確定した瞬間からただちに職務を引き継ぐことになる。

6月3日の投票日までに、どの候補が抜け出すのか。そしてその後の政権運営は滞りなく進むのか? いま、韓国という国に注目しない手はない。


余談ながら、4月24日には「文在寅(ムン・ジェイン)元大統領、在任中の収賄罪で在宅起訴」というニュースも飛び込んできた。

なぜ韓国の大統領は、こんなにも退任後に逮捕・訴追されるのか?」という問題には長いストーリーが絡んでいるので、機会があれば別の記事で解説することにしたい。

【あわせて読みたい】

Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

関連記事

この記事を書いた人

Alex

普段はQuizKnockのバックオフィス業務を担当しています。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)出身。QuizKnockの社内外に、世界情勢・国際関係の面白さを伝えていきたいです。

Alexの記事一覧へ