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「冷蔵庫」は「昼」か「夜」か

この分類でいくと、件の「冷蔵庫のドアになら〜」は夜のシーンであろう。非常ベルや冷蔵庫というアイテムは、おそらくホテルの中に登場するものだ。

冷蔵庫は映画の小道具であり、すなわち昼……という可能性は、他の歌詞から否定できる。他のサビが「もっと素直に僕が喋れるなら!」となっているのに対し、ここだけ「もっと素直に僕が笑えるから」になっているのだ。前者は「喋れるなら(いいのに、うまくいかない)」のニュアンスがある昼の場面である。となると、「笑えるから」となっている場面は、昼とは違って素直に笑えている……という点から「夜」に分類可能であろう。

となると、この場面はおそらく「君」と一緒にいるときのような、よりプライベートな「僕」を描いたものだ。情景が見えてくると、それが手がかりになるものである。

▲ホテルあるある:コンパクトな冷蔵庫

そのうえで、このシーンの鍵はやはり「冷蔵庫にバターを塗る」という異様な行為であろう。もっと素直に、犯罪になりかねないのでやめていただきたい。でも、「僕」が「素直に笑えるから」この行動がチョイスされているはずで、そこにはなんらかの論理関係が存在している。読み解きうる、ということだ。たぶん。自信はないけど。

バター、下ごしらえ説

ひとまず考えるべきは「比喩表現」の可能性であろう。冷蔵庫やバターが何かしらを表しているかもしれない。

バターを塗る、というのは、どんなシチュエーションであろうか。ほとんど料理をしない私からすると、パンをこんがりおいしく食べたいときくらいしか思いつかないのだが、どうやらバターは割といろんなシチュエーションで活用できるようだ。

私が知らなかったのは、グラタンを作るときに「皿」にバターを塗るという事実。ホワイトソースの皿への焦げ付きを防ぐ目的で、先にバターを塗ってから具材を入れて焼き上げるらしい。最初にやった人すげー。

▲お皿にバターを塗ってホワイトソースの焦げ付きを防ぎます

て、ことはだ。

これ、冷蔵庫が焦げないようにバターを塗っているのでは……?

つまり、このホテルに火をつけるつもりでは……? 非常ベルが鳴る、とか言ってるし……!

なかなかにアナーキーだ。まあ、真夜中のマシンガンで君のハートを撃ち抜こうとしているのだから、火を吹いちゃう可能性は全然あり得るのだろうが、なんでまたバターを塗ってまで用意周到に火をつけるのか。そこまでしといてなぜマシンガンなどという粗い手段を用いるのか。そしてなぜ冷蔵庫は丁寧に守るのか。そもそも、こんだけこねくりまわして素直に笑えるってもうそれ素直じゃなくない?

冷蔵庫の中身はいったい……?

思うに、冷蔵庫には、何かこう、丁寧に守りたいものを入れておいたのだろう。

かのインディー・ジョーンズも、『クリスタル・スカルの王国』にて自らを冷蔵庫に閉じ込めることで核攻撃を無効化している。映画史に残るバカシーンだが、冷蔵庫の耐久性は半端ねえのだ、おそらく。よくよく考えると、どのご家庭にもある金属の盾、それが冷蔵庫である。手近な道具としては屈指の防御性能を誇るだろう。

そして、それを飲み込んだとしても、それでもなお……このシチュエーションはヤバすぎる。火をつける意味がわからない。てかそもそも、ホワイトソースを塗らないのであれば、むしろバターは低温で焦げてしまうので、逆効果である。なんでバターの無駄遣いしたのさ、値上がりしてるのに。

昼と夜の対比という文脈から考えるなら、夜の象徴であるホテルの部屋に火を放つことはすなわち昼の生活への集中、「君」との関係性の終わり、みたいなことを意味するのだろう。しかし、それは「素直に笑う」こととは矛盾しそうだし、歌詞全体でポジティブに捉えられているのは「昼」より「夜」なのだから、それを消してしまうことには論理性がないように思える。棄却だ。

バター、何かの例え説

もう少し、現実的なプランを志向したい。バターが何を意味するのか、範囲を広げて探索してみよう。

なにも、ここで用いられているのがバターそのものとは限らない。詩的な表現や言い回しにちなんでいる可能性もあるだろう。

英語のイディオムには、さすがパン食の国だけあって「butter」を使った言い回しが複数存在する。

例えば「butter face」は、有り体な言い方をすれば「ブサイク」を意味する。日本だと「しょうゆ顔」はニュアンス表現でしかないのに、散々な言いようである。この使い方なら、「冷蔵庫にバター塗る」はさしずめ「部屋をだいぶ不格好に散らかす」みたいなことになるだろうか。「笑える」ニュアンスには近いが、やや強引な解釈になるだろう。

パン食文化を感じる表現としては「bread and butter」がある。「This is my bread and butter.」で「これは私が生計を立てるための仕事です」という意味なのだ。日本語では「飯の種」「糊口をしのぐ」というおコメ系の表現があるわけで、やはり主食は生活に紐づいているのだろう。この表現を歌詞に引っ張ってくるなら、「夜の在り方を、新たな職業とする」みたいなことだろうか。これはさすがに厳しい。解釈として無理すぎる。

▲「bread and butter」をしないと食べられない「bread and butter」

これらはどうにも具体的すぎて、歌詞と繋がらない。もう少しバターのバターらしさから離れたいところだ。

そう考えると、「butter someone up」などは、直感的には理解しづらい、もってこいの表現であろう。「someoneのご機嫌を取る」という意味になるのだ。「冷蔵庫のご機嫌を取る」、なんかこれはこれで通じそうな言い回しである。古い冷蔵庫の「なんか冷えないなぁ」って感じ、ビジホとかだとあるよね。

どうにも調子の悪い冷蔵庫のご機嫌を取らないといけない、冷蔵庫をbutter upしなきゃね……とか言ってたらマジで冷蔵庫にバター塗っちゃったよ! HAHAHA! You’re kiddin’ me!

……わからなくはない。わからなくはないが、どうにも鼻につくジョークだ。

もはや、ジョークはジョークでしかないと言うか……バター自体には、この問題を捉えるための本質はないのではないか。むしろ、「冷蔵庫を焼く」ということこそが、ここでの主目的なのではないだろうか

改めて、冷蔵庫を焼く理由を考えてみる

いったい、なんのために冷蔵庫を焼くのか?

それはもう、「不法投棄」のためだろう。

冷蔵庫を捨てるというのは、大変に難しい。というか、捨てられない。

フロン排出抑制法および家電リサイクル法によって、冷蔵庫というものはちゃんと決められた方法で処分しないといけないのだ。当然費用も、時間もかかる。ゴミ捨て場に持っていってポイ、というわけにはいかない。

昼の俳優業で忙しい彼らにとって、冷蔵庫を捨てるというのは至難の業だ。しかし、ふたりがいい感じの関係になっていたとしたら、同棲のために冷蔵庫をひとつ処分しないといけないだろう。でも時間も手間も、かけている余裕がない。

▲断捨離ソングだったのかもしれない

じゃあもういっそ、火事を装って燃やしてしまおうじゃないか、マシンガンやらなにやらで。もしくは「マシンガン」的な荒業で。そんなときには、「じゃあ、バターでも塗っちゃいますか?笑」みたいなジョークも出てくるだろう。そういうテンションじゃないと、これだけドラスティックな解決法は出てこない。

法令遵守、大切です

ダメだ。不法投棄や野焼きは犯罪である。廃棄物処理法などもろもろの法律に触れる。冷蔵庫に火をつけようとするヤツらに何を言っても無駄かもしれないが、ダメなものはダメなのだ。

どんなに派手な手段でも、逆に誰も見ていなくても、地球環境のため、処理をする行政のため、我々ひとりひとりの遵法意識が大事になってくる。社会の一員として、守るべきものは守っていくべきだ。

お酒が入っているときなどは、得てしてそういうリスク・リターンが計算できなくなりがちだが、冷蔵庫を燃やすなんてことは酒が入っていたから思いついちゃったなんてレベルじゃあない。最低限の倫理観で、ストップ・不法投棄!

▲不法投棄、ダメ。ゼッタイ。

素直に笑えるって、ステキです

あれこれ考えてみたが、今日はいつも以上にいい考えに思い当たらなかった。改めて、とても難解な歌詞である。結局のところ、バターを塗るというのがどういうジョークなのかはいまいちわからない。まあ、夜だからこそ己を解放して、やりたい放題パーっとやろう、くらいの意味なこともあるだろう。あまり意味を追いすぎるのも酷というものだ。

大事なのは、やっぱりオモシロイと思ったら素直に笑うこと。疲れた時にはちゃんと休んで、心を健康に保つこと。適度なエンタメはあなたの薬になるのだ。

だから、ちょっとでもオモシロイと思ったら、この記事の拡散もぜひ、人助けだと思って何卒お願いします。

▲地球の環境に配慮しつつ、素直に笑って生きていきたいものです

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この記事を書いた人

伊沢拓司

QuizKnockCEO、発起人/東大経済学部卒、大学院中退。「クイズで知った面白い事」「クイズで出会った面白い人」をもっと広げたい! と思いスタートしました。高校生クイズ2連覇という肩書で、有難いことにテレビ等への出演機会を頂いてます。記事は「丁寧でカルトだが親しめる」が目標です。

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