突然ですが、こちらの名言をご存知でしょうか。
フランスの偉人、ナポレオンの言葉です。彼が将軍にあてて書いた手紙の中で使われたものといわれています。
……と、いきなり名言の解説から入ってしまいましたが、国語辞書オタクの私が伝えたいのはそこじゃありません。
▲つまりこういう辞書があって……
▲こうなっているはず
もしも偉人たちがそれぞれ「自分の辞書」を持っていたとしたら、私たちに馴染みの深い国語辞書にはない、斬新な語釈(ことばの意味を説明する部分)が並んでいそうです。これは読んでみたい。とても。
とはいえ、残念ながら現実にはそんな辞書はありません。なので、今回は私、あさぬまが偉人たちの逸話や名言をもとに「偉人の辞書」を考えてみることにします。
もしも「偉人の辞書」があったら
さっそく作っていきましょう。たとえば、「ホトトギス」を辞書に載せるなら。比較対象として、広辞苑を引いてみることにします。
▲ホトトギスの特徴をわかりやすく説明してますね
では、織田信長が「ホトトギス」を辞書に載せるなら、こう書いたはずです。
▲物騒な語釈。ホトトギスが聞いたら卒倒しそう
これが豊臣秀吉だったらたぶんこう。
▲天下人の余裕がうかがえる語釈
さらに、徳川家康だったらこうなんじゃないでしょうか。
▲家康の忍耐が滲み出るマイルド語釈
三者三様、それぞれだいぶ思想が強めの辞書になりました。有名なたとえなので語釈だけで誰の辞書かまるわかりな一方、純粋に言葉の意味を知りたい読者の倫理観は問われそうです。
辞書を読み比べて語釈の違いを楽しむのが好きな私ですが、ここまでバラバラだと逆に清々しいな。同じ言葉でも、偉人によって語釈が違うこんなケースはいくらでもありそうです。
さて、ここでいったんクイズです
ということで、「同じもの」の説明のはずなのに、偉人によって全然違う語釈になっちゃう「あることば」を用意しました。クイズにしたので、挑戦してみてください。
▲土木関係のことばでしょうか
▲シンプルすぎる
▲もうピンときた人も多いはず
▼記事は下に続きます▼
同じ「人」でも、言っていることがてんでバラバラです。国が変われば言葉が変わる、みたいなレベルでもありませんね。
ちなみに、『天空の城ラピュタ』のムスカ大佐だったらこうでした。
▲大佐、辞書を作りました!(出典:スタジオジブリ)
▲「読める、読めるぞ!」は自作の辞書のおかげ説
この人にしか言えないことばがある
辞書を好きになって以来、辞書の語釈はことばの範囲を定めるものだと思っていましたが、偉人によってむしろことばの可能性が広がっている気がしてきました。
たとえば、マリー・アントワネットが「パン」の項目を書いたらこうなるんじゃないでしょうか。
ケーキの可能性を広げてしまった一方、現代でも抗議が来てしまいそうな語釈が出来上がりました。
最後に「最短語釈」が爆誕した
あっという間に、偉人の辞書がこんなに揃いました。並べてみると背表紙の圧が強いです。
▲本棚に「偉人の辞書」コーナー、いかがでしょう
普段の辞書では見られないような切り口が新しすぎて、どの辞書も隅から隅まで読みたい気分。一方で、どれもキャラが濃すぎるのが難点な気もする。どれを使っても似た語釈が読める既存の国語辞書のありがたさも、改めてわかった気がします。
それでは最後に、ルイ14世の辞書をご紹介します。
偉人の辞書、みなさんも作ってみませんか?
【このライターの他の記事もどうぞ】