ハンス王子にアドバイス!
もし筆者がハンスにアドバイスするとしたら、アナと結婚したのちには当分の間おとなしく公務に励み、ひとまずは国民から信頼を得ることに専念すべきだと思う。
エルサが無事に女王に即位した暁には、アレンデールの政治は彼女を中心に執り行われることが予想される。先代の国王の崩御からエルサの即位までの間、アレンデールの政治は君主なしでもそれなりにうまく回っていたっぽい(たぶん)ので、きっと優秀な大臣やら官僚やらにも事欠かないことだろう。この状況において、新参者のハンスが政治分野で出しゃばる余地はそんなにあるまい。
個人的には、どちらかというとハンスには政務よりも軍務が向いていると思う。作中でのハンスの動きは軍人としての素養がかなりありそうな感じがする。おそらくは、母国で軍の将校としての教育を一通り受けてきたのだろう。この知見は、アレンデールの王族となってからも存分に活用できるに違いない。

そんなわけで、婿入りしたハンスはまずアレンデールで軍人となり、王室と国家のために尽くす姿勢を国中にアピールすべきだ。そして、軍務を通して国民から広く信頼を得つつ、己の陰謀に協力してくれそうな仲間を静かに募るのである。がんばれハンス! まずは近所の書店で「できる上司は背中で語る!初めてのリーダーシップ論」みたいなビジネス書を買ってくるところから始めよう。それが良いことかどうかは別として!
第二の疑問:アレンデールの繁栄の謎を探る
もう一つ、アレンデール王国について気になることがある。小国の割にはあまりにも栄えすぎているのだ。
大前提として、おそらくアレンデール王国はそんなに大きな国ではない。港のあるこじんまりとした城下町がひとつあるくらいで、その外側には険しい山岳地帯が広がっている。総人口は1万人もいないだろうから、税収も限られているはずだ。立派なお城を維持したり、城内の高そうな芸術品なんかを一通りそろえるのには結構お金がかかりそうなものだが、そのための資金はどこから出ているんだ……?

そもそも、アレンデール王国の産業構造がよくわからない。作中でのセリフから主に輸出用の衣服の製造が行われているらしいが、他に有力な産業と呼べそうなものはほとんど見当たらない。地形的には農業をやるのも向いてなさそうだ。アレンデール王国のモデルとされるノルウェーのように、近くの海に大きな油田が眠っている可能性はあるものの、「アナ雪」の作中の時代では石油があっても宝の持ち腐れである。
ではこの国は、いったい何を作って
もちろん、映画の中で全てが描かれているとは限らない。例えば、貴金属の採掘や漁業などが国のどこかで活発に行われていたり、かつての琉球王国のような中継貿易が大きな収入源となっている可能性は十分にあるだろう。しかし、ここではあえて大胆な推理をしてみよう。アレンデール王国は、実は資産運用でめちゃくちゃ儲けているのではないか?
資産運用で稼ぎまくり!?
たとえば、スイスとオーストリアに囲まれたリヒテンシュタイン公国というユニークな国がある。日本でいうとだいたい小豆島ひとつ分くらいの小さな面積の国ではあるものの、統治者であるリヒテンシュタイン家はなんと自前の銀行を持つほどの資産家である。
また、現代のノルウェー政府は世界最大級とされる年金ファンドを保有していて、石油や天然ガスによる収入を元手にした資産運用を行っている。

とすれば、アレンデールの王室もどこかで莫大な資産を持っていて、各国の銀行などから得た利子の収益で稼ぎまくっている可能性も否定できない。アレンデールの城内にある多くの芸術品もきっとその資産の一部だ。

この資産運用の収益だけで小国の運営費用をほぼ賄えているからこそ、税金が安く抑えられていて、王家に対する国民からの支持も厚い。こう考えれば、全てがすっきりするのである。ハンス王子が野望を叶えるのには軍務だけでなく財務の知識も必要だ。今すぐ簿記の勉強を始めよう。
エルサの魔法の秘密に迫る
こう考えると、エルサの氷の魔法の存在理由が少しだけ見えてくるかもしれない。
あの強力な魔法があればたぶん、どこの国と戦争をしてもそう簡単に負けることはあるまい。というか、わざわざ戦争なんてしなくたって「こちらの言うことを聞かなければ貴国を永遠に氷の世界に閉じ込めますよ?」みたいな強気の外交を振りかざすだけで大抵の国は従えられるだろう。エルサ本人は絶対にそんなことはしないと思うけれど。

とはいえ筆者が思うに、あの魔法はおそらく攻撃というよりは防御のためにあるのだと考える。アレンデール王国の長い歴史の中で、王家が持つ財産を奪いにくる輩はたくさんいたに違いない。敵から大切な資産と国そのものを守るため、アレンデールではエルサが生まれる以前から王族の誰かが魔法を脈々と受け継いできたのではないか。全てを燃やし尽くす炎系の魔法ではなく、溶かすことができる氷系の魔法が受け継がれたのは、攻めてきた国に対して「奪った資産を返しさえすれば元通りにしますよ」という交渉ができるから……!

大外れでした
……と思ったら、続編の『アナと雪の女王2』ではエルサの魔法の秘密が明かされており、当然ながら資産防衛のための魔法なんかでは全くなかった! 考察もほどほどにしましょう。
とはいえ、子どものころに観た映画を大人になってから改めて(かつてとは少し違った目線で)楽しむのは、とても素敵な体験だった。最近「アナ雪」観ていないな~という方は、次の週末にでも観てみてはいかがでしょう? もちろん、まだ観たことがないというあなたも!
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【画像出典(画像を一部加工しています)】
サムネイル画像:Trine Syvertsen CC-BY 2.0
アレンデールの城のイメージ:Philippe Alès CC BY-SA 4.0