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コジマではない(これは偽)です。

論理学の世界では、「×××ならば△△△である」の×××が偽、つまり事実と異なる内容であれば、△△△に何を入れてもこの言説が正しくなる、ということが知られている。

要するに、「豊臣秀吉が令和2年に生きていたらフライドチキンは豚肉で作れる」みたいなとんちんかんな文章が、論理学の上では正しいということになる。

しかし、こんな文章が「正しい」なんて、直感的に考えると何とも受け入れがたい。

直感で考え続けても受け入れられないことは変わらない。「論理学の上で」と言うからには論理的に確かめてみよう。

2020年12月31日12:20 お詫びと訂正

本記事で説明している内容は爆発律の証明ではありませんが、文末に本記事の内容が爆発律の証明であると誤解を招く記述がありましたので、お詫びして訂正いたします。現在は修正した内容を掲載しております。

頭がこんがらがりそうな解説

「○○○である」や「×××ならば△△△である」のように、それが正しい(=真)か、正しくない(=偽)かのいずれかに定まる言説のことを命題と呼ぶ。×××や△△△の中身も命題であり、ある命題を否定したり、命題どうしを「かつ」「または」「ならば」で結んだものもまた命題である。……少しまどろっこしい説明だが、数式である1+3や5×7を(1+3)-(5×7)と繋げたものもまた数式である、ということに似ている。

命題PとQに対して、「PならばQ」という命題を考える。「PならばQ」は命題なので、真か偽が決まるはずだ。

まずPが真だとすれば、Qが真ならば「PならばQ」は真、Qが偽ならば「PならQ」は偽である。これは直感的にも正しいと分かる。

一方で、Pが偽であるとき、「PならばQ」をどう扱えばよいのか。直感に基づくと「前提が絶対に成立しない命題とは……?」となってしまう。

Pが真であれば「PならばQ」の真偽はQに一致するが、Pが偽のときに「PならばQ」はどうなるのだろう

Pが偽であるときの「PならばQ」を考えるために次の命題を使ってみる。

「『AならばB』かつ『A』ならば『B』」は真

例えば、

  • この料理がフライドチキン(A)であればこの料理には鶏肉が使われている(B)という事実があり(この時点では「この料理」がフライドチキンであるどうかは不明)、
  • かつこの料理はフライドチキンである(Aが真)のであれば、
  • この料理には鶏肉が使われている」、つまりBが真であることが導ける。あたりまえ体操。

このように、「『AならばB』かつ『A』ならば『B』」という関係は常に成立するから、「『AならばB』かつ『A』ならば『B』」は真、ということが普遍的にいえる。ちなみにこの命題を論理学ではモーダス・ポネンスと呼び、最も基本的な推論規則のひとつである。

Aが偽のとき、

『(偽)ならばB』かつ『(偽)』ならば『B』」は真

「XかつY」はXとYが両方とも真のときのみ真となるので、下線部の命題は偽だ。つまり……

       (偽)       ならば『B』」は真

であることが分かる。


このルールでとんちんかんな命題を作るとき、「PならばQ」のPには常に偽となる命題を当てはめる。難しい言い方をしたが、要するに「(適当な嘘)ならば(好き勝手な命題)」という命題なら何でも正しい。

豊臣秀吉は慶長3年8月18日に亡くなっているはずなので、「豊臣秀吉が令和2年に生きている」という命題は恐らく偽である。これをPに置いて「豊臣秀吉が令和2年に生きていたら」とすればQでは何を言ってもよく、「豊臣秀吉が令和2年に生きていたらフライドチキンは豚肉で作れる」という命題が正しくなるという訳だ。

なお、今回は分かりやすさを優先して具体的に真理値(真か偽か)を当てはめて説明したが、より踏み込んだ命題論理という分野では、真理値を当てはめることなく、記号からなる命題を命題計算と呼ばれる操作で変形し、命題が正しいことを導く(=証明する)ことを目指す。

命題論理を学ぶと、「矛盾からはあらゆる命題が導ける」という事実(「爆発律 (principle of explosion) 」と呼ばれたりする)が記号的に証明できたりして面白いので、興味があれば学んでほしい。

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この記事を書いた人

コジマ

京都大学大学院情報学研究科卒(2020年3月)※現在、新規の執筆は行っていません/Twitter→@KojimaQK

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