FIFAワールドカップ北中米大会が近付いている。今年(2026年)6月の開幕が今から待ちきれないというサッカーファンも多いことだろう。
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さて、今回の本大会に出場できるのは、W杯史上最多となる全48チームだ。現時点で出場が確定しているチームの一覧を見ていると、少し不思議なことに気付く。ワールドカップには1カ国から1チームずつ参戦するのが普通だが、今大会では1つの「国」から本戦に2チームが出場するケースが2つあるのだ。
ケース①:英国
まず一つ目は、英国(イギリス)である。
ご存じの方もいるかもしれないが、サッカーワールドカップにおいて「英国代表」というものは存在しない。その代わりに2026年の本大会に参戦するのは、強豪として知られるイングランド代表と、28年ぶりに本大会への切符を手にしたスコットランド代表だ。
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▲イングランドはグループL、スコットランドはグループCに入った。
両チームとも、今年(2026年)の春に日本代表と親善試合を行うことになっている
サッカー界に「英国代表」がないのは、国の成り立ちと大きく関係がある。
現在の「英国」※は、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド(かつては単に「アイルランド」だった)という4つの「国(country)」と、いくつかの海外領土などから構成されている。

歴史を紐解くと、これら4つの「国」はもともと独立していたのだが、徐々に統合され1801年に「グレートブリテン及びアイルランド連合王国」が誕生。その後、アイルランドの南部が英国から分離し、現在の「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」が成立した。英国のことを指す「UK(United Kingdom)」という言葉には、こうした歴史が反映されている。
サッカー(フットボール)が普及した19世紀後半、英国を構成する4つの「国」にはそれぞれ独自のサッカー協会が存在していた。1904年に国際サッカー連盟(FIFA)が発足した際には、特例として4つの協会ごとの加盟が認められ、そのまま現在に至る。さすが、サッカー発祥国というべきか。

そんなわけで、英国からは4つの「国」(+海外領土など)の代表チームがワールドカップ予選に挑んでいる。ちなみに、ウェールズ代表と北アイルランド代表はストレートでの本選進出を果たせなかったが、春に行われる欧州プレーオフの結果次第では本大会に参加できる。既に出場が決定している2チームも合わせて、ワールドカップ本戦で「英国対決」が発生するかもしれない。
なお、夏季オリンピックの競技については基本的に「英国」というくくりで参加することになっている。サッカー種目はどうしているのかしら……と思ったら、基本的に英国は出場していないそうだ。
一応、2012年のロンドン五輪には「英国代表」として臨んだのだが、男子の代表チームに加わったのはイングランドとウェールズの選手のみ。4チームのライバルたちが揃っての共闘はなかなか実現しないようだ。
余談:ラグビーワールドカップの話
ちなみに、ラグビーもサッカーと同じく英国が発祥のスポーツだ。こちらも英国からは4つの地域からそれぞれ代表チームが参加しているのだが、南北に分かれたアイルランドについてはサッカーとは大きく異なる。なんと、独立国である(南)アイルランドと英国の一部である北アイルランドが、国境を越えた合同チームを組んで出場しているのだ!

カトリックとプロテスタントの対立などを背景として、南北アイルランドは長らく凄惨な抗争を続けてきた。それでも、ラグビーの試合のときだけは人々が一丸となって「アイルランド代表」に声援を送る。このあたりは、「ノーサイド」や「ワンチーム」といった言葉が似合うラグビーらしいエピソードだなぁと思う。
ケース②:オランダ
サッカーW杯本戦に2チームが参加するもう一つの国は、英国と海を挟んで隣り合うオランダだ。オランダ代表と言えば、言わずと知れたヨーロッパのサッカー強豪国である。今大会ではグループリーグで日本代表との対戦が決まっており、日本での注目度も非常に高い。
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そんなオランダという国が擁するもう一つの本大会出場チームは、キュラソー代表である。
キュラソーというのはカリブ海に浮かぶオランダ領の島だ。いわゆる海外領土のような存在だが、「オランダ王国」を構成する「国」の一つとして自治が認められている。

この小さな「島国」も独自のサッカー代表チームを擁しており、北中米カリブ海予選を勝ち抜いて本大会初出場を決めた。ちなみにキュラソーの人口は約19万人と、日本の淡路島(およそ12万人)の1.5倍くらい。サッカー淡路島代表(??)がワールドカップ本戦出場、と言えば、今回のキュラソーの快挙がなんとなくイメージできるだろうか。

もっとも、キュラソー代表には地元出身の選手はほぼおらず、実質的にはオランダ本国出身の選手によるチームなんだそうだ。こちらも、うまく勝ち進めば決勝トーナメントで「オランダ対決」が見られるかもしれない。
ちなみに、カリブ海の島国とあってかキュラソーでは野球が人気らしい。これまでに多くのメジャーリーガーを輩出しており、WBCではキュラソー出身の選手が「オランダ代表」の一員として本国の選手とチームを組む。サッカーと野球で「国」の捉え方が若干違うのも、国際的なスポーツ大会の面白さと言えよう。

おまけ:フランスの場合
なお、本国とは別に海外領土などが独自のナショナルチームを擁しているケースは他にもある。最注目はフランス領のニューカレドニア(オーストラリアの北東のあたりにある)だ。

オセアニア予選では惜しくもニュージーランドに敗れてしまったものの、大陸間プレーオフへの出場が決まっている。こちらもひょっとすると本戦で「フランス対決」が実現するかもしれない。
まとめ
普段はあまり意識されないかもしれないけれど、「国」という言葉は結構多義的だ。例えば「主権国家」や「国連加盟国」のような、私たちがぱっとイメージする国家の枠組みの内側に、独自の歴史やアイデンティティを持つ小さな「国」が潜んでいたりするのだ。国際的なスポーツ大会は、こうした様々な「国」の背景がちらっと伺える絶好の機会でもある。
サッカーワールドカップまであと4カ月。世界最高峰の試合を何より楽しみにしつつ、出場するひとつひとつの「国」にも目を向けてみると良いかもしれない。
※^ちなみに、日本で一般的に使われる「イギリス」という国名は「イングランド」を指すポルトガル語から来ているそうだ。
※^2つの大きな島に挟まれた、地図上でグレーになっている島は「マン島」。マン島は「英国の領土」ではなく「英国王室の持ち物」として扱われるユニークな地域(属領)のひとつで、独自の政府や憲法を持っている。
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【画像出典(画像を一部加工しています)】
サムネイル画像(スタジアム):Steve Evan CC BY 2.0
イギリスを構成する4地域:NordNordWest CC BY-SA 4.0
ラグビー・アイルランド代表:paddynapper CC BY-SA 2.0
キュラソーの位置:TUBS CC BY-SA 3.0
キュラソーの町並み:Mtmelendez CC BY-SA 3.0
野球・オランダ代表:Tranpan23 CC BY 2.0
ニューカレドニア:Pacificbluefilm CC BY-SA 4.0




























