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監修:慶應義塾大学 文学部人文社会学科 心理学専攻 皆川泰代教授


こんにちは! (ふくらさんとは違って)野菜が大好きな胡桃です!

野菜といえば、こちらの絵画を見たことがある方も多いのではないでしょうか。

▲『ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像』(アルチンボルド作)

少々変な質問ですが、こちら、何に見えますか……?

もちろん野菜なのですが、おそらく、多くの方が人間の顔を見ることができたのではないでしょうか? でも、よくよく考えてみると、これって不思議ですよね。実際はただの野菜の塊なのに、私たちはなぜそこに顔を見出すことができるのでしょうか?

▲よく見ると野菜や果物だけでできている……

実は、私たちの脳は「顔」というものを特別に捉えていたようです……!

パーツのようなものが集まれば1つの顔

私たちヒトは、目・鼻・口などの部分的なものではなく、全体的に顔をとらえています。このように、物事をひとまとまりとして全体的に知覚することを、ゲシュタルトの知覚といいます。

つまり、私たちはゲシュタルトの知覚によって、目・鼻・口のような配置があるものに「顔」を見出すのです。

このような顔の全体的な知覚は8カ月の赤ちゃんからできるようになりますが、大人になっても、単純なパターンとして顔を見る傾向を持つようです。

例えば、こちらの画像を見てみましょう。

▲顔に見える……? via Wikimedia Commons Carlos ZGZ CC BY 2.0

これはただのマンホールですが、人の顔として見ることができるのではないでしょうか? 私たちは、本当のヒトや動物の顔ではない物に対しても、顔を知覚することができます。その理由は様々に考察されていますが、主に、ヒトの進化と生存手段に関係しています。

ヒトは、集団生活をすることで身を守り、進化をしてきた社会的な動物です。そのような集団生活の中で仲間同士うまくつきあうためには、顔を即座に見つけて、個々の顔を「あれはAさん、これはBさん」と一瞬のうちに見分けなければならないのです。このためにヒトは顔知覚に特化した脳機能さえももっています。

この他にも、捕食者の存在の判別などにおいて、顔の知覚が生存上重要であったことが影響していると考えられています。また、自立できず未熟な状態で生まれるヒトの赤ちゃんは、親の顔を好んで見ることで親にかわいいと思ってもらい、親の養育行動を促し、生存へつなげるのです。

冒頭でお見せしたアルチンボルドの絵画に対しても、私たちは野菜や果物を目・鼻・口などの配置として全体的に捉えるために、顔を知覚するのです。

あの野菜顔が顔に見えない人もいます

アルチンボルドの絵画に対して、顔を知覚できることは絶対ではありません。

顔や顔のようなパターンを持ったものを顔と知覚することができない現象は、相貌失認と呼ばれています。これは、脳の中の紡錘状回の顔領域(FFA : Fusiform Face Area)という部分の損傷によって起こる症状です。

▲赤い部分が紡錘状回、そのうち水色の部分が顔領域 via Wikimedia Commons The original uploader was RobinH at English Wikibooks. CC BY-SA 3.0

相貌失認の方にとって、アルチンボルドの絵画は野菜ばかりが目立ってしまい、顔を知覚することがとても困難です。

顔知覚の特殊性

顔に特化した脳領域があるとお伝えしましたが、1つの対象の知覚に特化した脳領域があることは、大変珍しいのです。

他にも、

  • 生まれて間もない頃(生後46時間~)から顔を知覚すること
  • 一生に約5000もの顔を覚えること(これほど多くの違いを見分けられる対象は顔以外にはありません……!)

など、顔の知覚は他の対象の知覚と比べてかなり特殊であると考えられています。

まとめ

冒頭でお見せしたアルチンボルドの絵画に私たちが顔を見出せるのは、顔の知覚が他の対象の知覚と比べてとても特殊であり、顔知覚を司る脳領域が機能しているからなのです。

それでは最後にクイズです!

参考文献

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この記事を書いた人

胡桃

慶應義塾大学大学院修士課程2年の胡桃です。心理学を学んでいます。心理学の面白さを伝えられる記事や、日常の中のふとした疑問を楽しみながら解決できる記事を書くことが目標です。写真撮影とディズニーが大好き。記事を通して一緒に楽しく学んでいきましょう!

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