「オススメの本は何ですか?」という質問が苦手だ。
何故なら、自分が気に入ったものが、相手も気に入るとは限らないから。本、ことさら小説においては、その傾向が顕著だ。軽々しく他人に薦めることなんて、できない。
かと言って、「じゃあ好きな本は?」と訊かれるのも苦手で、どうして自分の内実を赤裸々に語らなければいけないのか、と思ってしまう。「好きな食べ物」や「好きな色」とは話が違う。もしかしたら、好きな人について語るより恥ずかしいかもしれない。
唯一語れるのは、自分が最近読んだ本と、その感想。それだけ。
どうも、カワカミです。
中高生の頃の僕は、いわゆる「本の虫」でした。片道1時間半かかる通学の間、ひたすら本を、特に小説を読んでいました。「文豪」と呼ばれる人々の作品から、最近出たライトノベルまで、なんでも読んでいました。ちゃんと数えたことはないですが、年に150冊くらいは読んでいたのではないでしょうか。「趣味は?」と訊かれたときには、迷いなく「読書」と答えていました。
しかし大学に入り、その習慣は失われました。通学にかかる時間が短くなった、というのもあるでしょうが、何より大学生は思っていたより忙しかったのです。この4年間で読んだ小説は、両手で数え切れるほど。レポートを書くために読んだ論文の方が多い有様です。これではとても「趣味:読書」なんて書けません。
ところで皆さんは「読書週間」という期間を知っているでしょうか? これは、11月3日・文化の日をはさむ2週間、すなわち10月27日から11月9日まで、読書を推奨する期間のことです。
だからというわけではありませんが、かつて僕を夢中にした読書をもう一度習慣にしてみよう、と思い立ち、11月に入ったのを機にさまざまな小説を読み漁っている次第です。
前にも書いた通り、以下の本を皆さんに薦めるわけではありません。ただ、僕は最近こういう本を読みました、という記録です。果たしてQuizKnockでやることなのか? と思わなくもないですが、まあご容赦を。
『星々の舟』村山由佳
第129回直木賞受賞作。6つの短編を通して、水島家というひとつの「舟」を描き出す。
恋愛小説で有名な著者だが、この作品はただ甘酸っぱいだけの恋愛小説ではない。不倫や近親相姦がテーマのひとつにはなっているが、かと言って性を不躾にこねくり回した下卑な官能小説でもない。あえて既存のカテゴリに当てはめるならば、架空の家族が紡いだ歴史をスライスして味わう、ある種の大河小説だ。
一読すると不幸に思える登場人物たち。そんな彼ら彼女らを照らす一筋の光。陳腐な表現になってしまうが、幸せとは何か? を考えさせられる作品だ。
『美丘』石田衣良
2010年にドラマ化。この特徴的な表紙を見たことがある人は多いだろう。
物語序盤で展開される強烈な「美丘ワールド」は、ゼロ年代オタクである僕にどこか涼宮ハルヒを思い出させる。しかし峰岸美丘の場合は、不思議な力ではなく難病を宿すが故のものであった。初めから結末が見えているということもあり、何度もページをめくる手を止めたくなるが、それでも最後まで見届けなければいけない……という苦しみにも似た感情で胸がいっぱいになる。
著者のサラッとした文体が、この物語に上手くフィットしているように思う。賛否両論あるだろうが、序破急の「急」がしつこくないのも高評価。
『何者』朝井リョウ
2016年秋に映画化された第148回直木賞受賞作。映画を観て、有村架純めっちゃかわいいなと思ったのはまた別の話。
さて。就活と、SNS。大学生に身近な2つの大きな波を題材としたこの作品は、僕を飲み込み、ひどく痛めつけた。就活は一切していない僕と、一流企業に内定を決めた同級生。SNSでは皆が皆を牽制し、傷つけ癒しのマッチポンプ。これらは僕の例だが、大抵の大学生ならどこかに引っかかるであろう題材を、ただの「大学生あるある」では終わらせず、魅力ある物語として成型した著者は流石である。
読了後、どこか気まずくなるであろう作品……と締めたくなるのは、僕が主人公に自分を重ねていたからだろうか。
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今回は以上3作品。有名作ばかりになってしまいましたが、まあ初回だから、ということで。
このコーナー、どのように続くのか、そもそも続きはあるのかなど未定事項が多々ですが、もし続けば、そのときはまた。