こんにちは。建築学科に所属している、ライターの鞠乃です。
2021年8月、国立代々木競技場が重要文化財に指定されました。
建築学科で学び始めてからというもの、国立代々木競技場の価値の高さは授業の中でよく聞いていたので、重要文化財指定という形で国に認められたと聞いて、驚くと同時に嬉しい気持ちになりました!
ところで、「重要文化財」とは一体何なのでしょうか。
「文化財」=「価値が高い」と認められたもの
「我が国にとって歴史上又は学術上(芸術上、鑑賞上)価値の高いもの」は大切にしていくべき国民的財産と考えられ、これを文化財に指定しています。
その文化財の保護と活用を目的とし、文化財の指定について定めたのが文化財保護法です。
文化財保護法では、文化財は以下の6つに分類されます。
中でも重要なものが「重要文化財」
文部科学大臣は、文化財のうち「有形文化財」に分類されるものの中から、重要なものを重要文化財に指定することができます。
有形文化財は建造物と建造物以外の美術工芸品にわけられ、そのどちらも重要文化財の指定の対象となります。
重要文化財に指定されると、現状の変更に制限が課されたり、できる限り公開に努めることで活用を図ることを求められたりしますが、修理などのための補助金を得やすくなります。
慶應義塾図書館・旧館 via Wikimedia Commons 芹沢長介 CC BY-SA 4.0
特に価値の高いものが「国宝」
重要文化財の中から、特に価値の高いものは国宝に指定されることがあります。
つまり、国宝に指定されるには、前提として重要文化財に指定されている必要があるわけです。
土偶 via Wikimedia Commons Kakidai CC BY-SA 4.0
以前、長野県にある旧開智学校を訪れた際に、「重要文化財から国宝になった」という説明書きを見たのですが、当時は「重要文化財と国宝は何が違うのか」全くわかりませんでした。
※旧開智学校(長野県松本市):明治6年に学制による小学校として、廃寺を仮の校舎として開校した。現在残る建物は明治9年に建てられた新校舎で、文明開化の影響を受けた擬洋風建築が特徴。日本を代表する学校校舎として評価を受けている。
この旧開智学校は、重要文化財から国宝にランクアップした後という状況だったんですね。
より価値が高いと箔を付けられたのが国宝で、指定されることにより受ける制限や補助にわかりやすい差はなさそうです。
国立代々木競技場は「戦後建築の金字塔」
国立代々木競技場は、東京都渋谷区にある、1964年の東京オリンピック開催に合わせて建てられた競技場です。東京2020においては、オリンピックではハンドボール、パラリンピックではバドミントンと車いすラグビーの会場として使用されました。
設計したのは建築家の丹下健三で、後に東京都庁やフジテレビ本社ビルなども手掛けています。吊り構造によって屋根や観客席が支えられている外観が特徴です。
文化庁はこれを「戦後建築の金字塔」と評価し、重要文化財の指定基準である、「意匠的に優秀なもの」と「技術的に優秀なもの」にあてはまるとして、重要文化財に指定しました。
おわりに
令和3年10月1日現在、重要文化財には13,342件、そのうち国宝には1,130件が指定されています。
文化庁のデータベースを見ていると、私が過去に行ったことのある場所の建物などが指定されていて、思わず自分の写真を掘り返してしまいました。
あなたの身近にあるものも、もしかしたら重要文化財や国宝に指定されているかもしれません。