4月も終わりだというのに、今年の東京は少し寒いですね。春も半ばとはいえ、湯船に浸かって、ゆっくりと温まりたいものです。
ところで、浴槽のことを意味する「湯船」という表現。違和感はありませんか? 見た目はまあ、もしかしたら船っぽいかもしれないけれど、役割は全く違います。
では何故「湯船」なのか。実は、日本には昔、「湯船」という船が本当にあったのです。
銭湯を運ぶ船、湯船
江戸時代中期になると、庶民にもお湯に浸かる習慣が広まり始めました。しかし、銭湯の数は限られていて、街の中心部にしかありませんでした。
そこで流行したのが「湯船」です。川などを使い街はずれへと出向き、人々に銭湯を提供したのです。
江戸時代も終わりの頃になると、銭湯の数も増え湯船サービスは下火となりましたが、言葉だけは残りました。ここから、浴槽のことを「湯船」と呼ぶようになったとされています。
もともとはサウナだった
ところで先ほど、庶民がお湯に浸かり始めたのは江戸時代中期と書きましたが、ではそれ以前はどうしていたのでしょう。
そもそも、お湯に浸かるという発想は、安土桃山時代に生まれたものです。それ以前までは、貴族でもお湯には浸からず、サウナのような蒸し風呂に入っていました。一方庶民は、水で体を洗う「行水」で済ませていました。
この2つの習慣が混ざったのが「お湯に浸かる」という方法で、これが現在のお風呂につながっているのです。