たまたま聴いたラジオに衝撃「なんだこの音は!?」
――小1から作曲をしていたんですか?
とむ めっちゃ簡単なやつですよ、バッハぐらいの。って言うとバッハに失礼に聞こえますけど(笑)。現代の音楽と比べると当然バッハの曲の構造は単純なんで。もちろん、バッハは素晴らしい作曲家です。
▲音楽未経験者からすれば驚きの発言
――なるほど。では今も作曲はクラシックを?
とむ いえ、小6くらいのときに電子音楽に出会って、それ以降は電子音楽を中心にいろいろ作るようになりました。電子音楽といっても初音ミクやポップスなども含んでいるので、私は結構広くとらえてるんですが。
でも実際に曲を作るには、当時の私には理解できないものがいっぱいあって一度挫折したんですよ。高校生ぐらいになってからまた挑戦して、今も作ってるって感じです。
――でもなかなか小学生で電子音楽に目覚める人は少ないと思うんですが。
とむ きっかけはいくつもあるんですけど、たまたま寝られなかったときに「SCHOOL OF LOCK!」(TOKYO FMのラジオ番組)をかけたら、「Perfume LOCKS!」っていうコーナーが流れてたんですよね。そこで「なんだこの音は!?」って(笑)。
▲「なんだこの音は!?って」
とむ シンセサイザーとかの音がすごく気に入って、「これがテクノポップっていうんだ」って知って好きになった感じです。
――それでいうと、とむさんは先日「SCHOOL OF LOCK!」に出てますよね。
とむ そうです、「SCHOOL OF LOCK!」を知ったころからずっと番組に出たいと思ってたんですよ。だから「天才LOCKS!」※2で夢が叶っちゃって、もうどうしたら……みたいな気持ちです。
※2)天才LOCKS!:「SCHOOL OF LOCK!」内でQuizKnockが担当するコーナー。
▲QuizKnockに加入したことで夢を叶えた
――ちなみに、こうした電子音楽を「自分で作ろう」と思ったきっかけは何だったんでしょう?
とむ 自分で作ってみたいと思ったのは、kzさん※3っていう方がいらっしゃって……。
※3)kz:音楽プロデューサー。音楽ユニット「livetune」として、Google Chromeと初音ミクのコラボCMで話題となった楽曲『Tell Your World』などを手掛ける。
――えっ、わかりますわかります。
とむ そうなんですか! 2013年くらいに「VocaNicoNight※4」っていうイベントでkzさんがDJをしてる映像を観て「すご!」ってなって。
※4)VocaNicoNight(ボカニコナイト):VOCALOIDを用いた楽曲を、ニコニコ動画などで活躍するさまざまなDJがプレイするイベント。
▲ボカニコナイトで盛り上がる2人
――同じイベントを見てた記憶あります。
とむ おぉー! そのころにいろんなポップソングを聞いてたんですが、そのkzさんの映像を観て、「これを作れたら絶対楽しいな」「自分で好きな曲作れたら楽しいな」って思って作り始めたんですよね。ちょうど世間だと「カゲプロ※5」が流行り始めたくらいですよね。
※5)カゲプロ:ボカロP・じん(自然の敵P)が2011年より発表した楽曲シリーズ『カゲロウプロジェクト』の略称。楽曲を題材として、小説や漫画、TVアニメなどが展開されている。
――わぁ、懐かしい!
作曲の楽しさ「おいしいご飯を食べるのと同じ」
――ネットカルチャーの影響を受けながら作曲を始めたとむさんですが、作曲はどんなところが楽しいですか?
とむ 頭の中で曲が1曲書き上がったときが一番楽しいです。私は頭の中でほぼ完成ぐらいまで音を配置して、あとでその通りにパソコンで音声データを作っていくんですよ。
それで、頭の中にあったものがちゃんと音になるのを聴くのも、やっぱり楽しいですね。私は「いい!」って思える音楽を聴いてるときって、めっちゃ脳汁がドバドバ出るんです。これっておいしいご飯を食べてるときとすごく似てるかな。おいしいもの食べると「わっ、これおいしいな」ってなるじゃないですか。
▲「おいしい〜!ってなるのと似てるんですよね」
とむ 音楽も同じで、その感じがまさに自分が作ったものでできるから面白いんですよ。
――音楽で自足自給ができるのすごいですね。
とむ あとは、私はいろんなジャンルの音楽を作るのが好きなんですよね。ジャンルによってやりたいことが全然違ってて。クラシックも未だに書くし、ハウスミュージックだったり、バンドミュージック、ロック、シンセポップとか……。
最近はブレイクコアにはまってて。以前サブチャンネルで名前を挙げさせてもらったんですけど、Supire(スパイア)さんっていう作曲家の方がすごく好きで。
▲「朝からそれ正解」対策会で「『す』で始まる最近好きなもの」として挙げていた
――それを聞いてると、やっぱり特定のジャンルが好きっていうより、本当に音楽そのものが好きなんですね。
とむ そうなんですよ。ジャンルによって違う色があって、でも結局全部ただの波っていうのが面白くて。音も突き詰めれば空気の振動でしかないから、「こんなに表現の幅があるのに、全部が波でできてるの面白いな」って思いながら曲を書いてます(笑)。
――もともと理系という話も聞きましたが、物理・数学的な観点がここで活きてくるわけですね。
とむ 音楽ってめっちゃ数学的なんですよ。私自身、かなり数学的に作曲するときはあります。
たとえば、音楽だと5個(5度)離れた音ってちょっと面白い性質を持ってて、和音を作ったときにすごくよく調和するので、5度離れた音が頭の中で潜在的に聞こえるんですよ。だから、その音は聴く人の頭の中で無意識に鳴らせるから、わざわざ書かなくいいか、みたいなことをやったりしてます。
――へえー! やっぱり数学的な理由付けをもってやってるのが興味深いです。
とむ そうですね。音楽を語りだしたら、本当に止まらなくなっちゃうんですけど(笑)。でも最近、あんまり作曲に時間をかけられてなくて、もう15曲ぐらい頭の中で溜まっちゃってて。
▲「最近ちょっと時間がなくて……」
――15曲!
とむ 頭の中ではできてるのに、パソコンで音にできてないものがいっぱいあって、それをなんとか形にしたいです。再生するのに19年かかる曲とか、書いてるんですけど(笑)。
――それはかなりコンセプチュアルな……。ぜひ、音楽の話はまたじっくり聞かせてください。