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みなさんは「タイムトラベル」というものをご存知ですか?

アニメ『ドラえもん』に登場するタイムマシンや、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンのように、過去や未来を自由に行き来できる技術のことです。

▲映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場するデロリアン(写真を一部加工)

みなさんも「もしもあのときに戻れたら」「未来の自分に会えたら」ということを考えたことがあるかもしれません。昔から人類の夢である「タイムトラベル」は、科学的に可能なのでしょうか?

この問題に答えてくれるもののひとつが、かの有名なアインシュタインが考えた「特殊相対性理論」というものです。

言葉は聞いたことがあっても、意外と知られていないその中身をこの記事で紹介していきます。

 相対性理論で考える「タイムトラベル」

相対性理論に基づいて考えられるタイムトラベルとはどのようなものでしょうか?

まず、あなたが宇宙船で宇宙旅行に出発することをイメージしてみましょう。この宇宙船には、1つ特別な点があります。それは、この宇宙船が「めちゃくちゃ速く進む」ということ。

具体的には「光の進む速さとほぼ同じくらいの速さ」と考えてみます。光の進む速さ(光速)は秒速30万kmとされており、これは1秒で地球の外周を7周半進む速さに相当します。その速さとほぼ同じということなので、この宇宙船がいかに速く進むかがわかります。

では、この宇宙船で1年の間宇宙旅行を楽しんで地球に帰ってきた場合、あなたはどうなっていると思いますか? 

実は地球に着いたとき、あなたは未来にタイムトラベルしていることになっているのです。具体的には、光速の99%で移動する宇宙船で旅行し、1年後に地球に帰還した場合、地球では約7年が経過しています。

▲タイムトラベルしている?

これはどういうことでしょうか? 実は、先ほど説明した「とても速く動く宇宙船」という言葉がキーワードになっています。このことに注目して、原理を見ていきましょう。

タイムトラベルと相対性理論に関係がある理由

先ほどの宇宙船のケースも交えつつ、相対性理論のポイントを説明していきましょう。難しい数式は使わないので安心してください。

アインシュタインの特殊相対性理論によって導かれること、それは「動いているものの中では、止まっているものの中よりも時間がゆっくり流れる」ということです。そして、動く速さが速いほど、時間はよりゆっくりと流れます

たとえば、新幹線で東京から博多まで移動するとき、車内にいる人の時間は約10億分の1秒だけ遅れるとされています。しかし、新幹線でもこれくらいなので、普段の生活の中ではこの時間の差はほとんど体感できないくらい小さいものです。

先ほど挙げた宇宙船の例では、宇宙船の速さは光の速さほどと非常に速いため、宇宙船の中と地球との「時間の差」が大きくなり、タイムトラベルが可能になるわけです。

相対性理論のスゴいポイント

せっかくなので、アインシュタインの「特殊相対性理論」の重要なポイントも紹介しましょう。タイムトラベルの可能性も示した特殊相対性理論は、以下の2つの仮定にもとづいて展開されています。

  1. 光の速さは、「一定の速さで進む宇宙船の中」と「何も動いていない宇宙船の中」では同じということ
  2. 「一定の速さで進む宇宙船」と「動いていない宇宙船の中」で、物理法則が同じような式で書けること

2番の仮定は難しいため、ここでの解説は割愛します。ただし、1番の仮定は、ちょっと不思議な内容なのです。

たとえば、「止まっている乗り物の中で私たちが歩いている場合」と「動いている乗り物の中で私たちが歩いている場合」では、乗り物の外にいる人から見れば私たちが進む速さは違います

▲150km/hで走る新幹線で150km/hのボールを投げると、外から見たボールの速さは300km/hになるが……

しかし、1番の仮定では、「光が進む速さは、止まっている乗り物の中でも動いている乗り物の中でも同じ」だといっています。当時、この不思議な光の性質は実験で確かめられていたものの、その仕組みは長年議論されていました。

しかし、アインシュタインはその証明より前にこの実験結果を受け入れ、「原理(仮定)」として理論に組み込んだのです。こうして現代物理学の基礎となる、相対性理論の構築につながっていったのです。

実際にタイムトラベルはできるの?

ここまでの話を聞くと、SF作品などで想像されるようなタイムトラベルも近い未来のように感じますが、では、まだ実現できていないのはなぜでしょうか?

それは簡単な話で、「タイムトラベルできるほど速く動くものは現実的に作れない」からです。

人類がこれまでに作ったもののなかで最速レベルの速さを持つものは、太陽探査機の「パーカー・ソーラー・プローブ」です。この探査機では、時速60万kmほどの速さが記録されています。

 

しかし、この速さは光の速さの1%にもはるかに及びません。これでは、とても短い時間しか未来にいくことができないため、私たちがイメージするようなタイムトラベルはできないとされています。タイムトラベルの夢、潰えたり……。

過去に行くことは難しい?

冒頭で触れた『ドラえもん』のタイムマシンの例では、ドラえもんたちは恐竜の時代にタイムトラベルしています。

しかし、先ほど説明した「特殊相対性理論」からは過去にタイムトラベルできることを結論づけるのは難しいです。「時間をゆっくり"進める"」ことで相対的に未来へ行くことは想定されていても、時間を戻って過去に行くことはできないためです。

とはいえ、現在でも「過去へのタイムトラベル」の可能性を探る研究はさまざまに行われています。

今の時点では残念ながら難しいですが、いつかタイムマシンが発明されて、人類が自由に時間を旅することができるようになるのが楽しみですね!

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この記事を書いた人

松林 陸

京都大学大学院理学研究科・修士1年の松林 陸です。普段は大学のサークルでクイズをしています。 大学では物理学を専攻しています。好きなものはクイズと旅行と科学。読者の方の日々に「ちょっとした学び」が生まれるような記事を書けるように頑張ります。

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