Bonjour! パリ在住、日本からの仕送り段ボールの半分は本で埋まる望月です。
今回紹介するのは、数理論学者レイモンド・M・スマリヤンの「論理パズル」の名著、その名も『この本の名は?』。パリの本棚にも迎え入れたお気に入りの一冊です。
▲お気に入りの一冊、スマリヤンの『この本の名は?』
みなさんは「論理パズル」というクイズをご存知でしょうか? 有名な論理パズルに「嘘つき村と正直村」という題材があります。
嘘つき村の住人は嘘しか言わず、正直村の住人は必ず本当のことを言う。
あなたは正直村へ行きたいが、目の前にはそれぞれの村に通じる分かれ道があり、どちらの村人かわからない人が1人立っている。
その人になんと尋ねれば正直村へ行けるだろうか。
▲何を信じればいいの……?
既に答えを知っている人もいるかもしれませんが、正解は記事の最後で紹介します。
この例のように、論理パズルは一般的なクイズとは一味違い、知識よりも論理思考が重要になるクイズです。
論理パズルが約200問!『この本の名は?』
私が論理パズルに出会ったのは、中学生の頃。図書館で偶然目に留まったのが、スマリヤンの本でした。そこで論理の力を使ってクイズを解いていく快感を知り、夢中で読んだのを覚えています。
彼の著書『この本の名は?』は論理思考パズルが200問近く載っている、いわばクイズ集です。ゾンビ、人狼、ドラキュラが登場するなど、題材もバラエティに富んでいて飽きがきません。
そしてただクイズが並んでいるだけでもないのです。各所に散りばめられた、スマリヤンのエピソードも面白さのひとつ。
私のお気に入りは、本の冒頭にあるエイプリルフールのエピソードです。要約すると、以下のようなお話です。
スマリヤンは6歳のエイプリルフールの日、兄に「今日はエイプリルフールだから、これまでにないくらい騙してやるからな」と言われ、一日中騙されるのを待っていました。
しかし、結局兄が騙しにくることなく1日が終わってしまいます。「なんで騙さなかったのか」と問うスマリヤンに兄はこう答えます。
「騙されると思っていたのに騙されなかっただろ。それが騙されたってことだよ」
結局スマリヤンは兄に騙されたのでしょうか。
「騙されなかった」と仮定すると、スマリヤンの予想通りにならなかったので、彼は騙されたことになります。逆に「騙された」結論づけると、彼の予想通りになったことになり、ではどうして騙されたと言えるのかということになります。
▲やばい、もやもやしてきた……。
考え始めると頭が混乱してきませんか? 私はこのもやもやした感覚が大好きなのです。
このエピソードに答えはありませんが、本に載っている他のクイズには答えがあり、スッキリと解けるものばかりです。論理的に考えて答えを見つけ出すものなので、一度解けたクイズでも時間をおいて再度解くと間違えてしまうこともあります。何度も楽しめるのもこの本の魅力です。
もっと学問的に論理パズルを知りたい方はこちらのシリーズもおすすめ。専門用語も交えて詳細に解説されています。
「嘘つき村と正直村」の答え
答えにはいくつかパターンがありますが、一番有名なのは「あなたの村はどちらですか」と尋ねることです。
もし尋ねた相手が正直者だった場合、正直村へ続く道を教えてくれるはずです。逆に相手が嘘つきだった場合もまた、正直村への道を答えることになります。つまり相手がどちらなのかに関わらず、言われた道を行けば正直村に辿り着けます。
▲どっちも同じだ……!
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