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解説

正解は「」でした!

東京帝国大学医学部の教授であった山極勝三郎やまぎわかつさぶろうは、動物の耳にコールタールを塗り続け、人工的に癌を作り出すことに成功しました。

コールタール:石炭を乾留(空気を遮断して加熱・分解すること)してできる、黒色で粘り気のある油状の液体。石炭が不完全燃焼してできたコールタールは、煙突にこびりつくと火災の原因にもなるため、定期的な掃除が必要である。

勝三郎は、実験とともに耳が硬く小さくなってしまうマウスのかわりに、ウサギを使って実験を行いました。

▲選ばれたのはウサギでした via Wikimedia Commons FBenjr123 CC BY-SA 4.0(画像をトリミングしています)

当時、癌がどのようにしてできるかは未解明だったため、人工的に癌を作り出すことができれば、癌の成り立ちを知り、その治療法を発明する第一歩になります。

勝三郎は、イギリスで煙突掃除をする人に皮膚癌が多く見られたことに着目し、耳に癌ができることは非常にまれでも、薬品をゴシゴシと刺激を与えながら塗り込むことで、癌が飛躍的にできやすくなるのではないか、と考えたのです。

実験はたやすいものではありませんでした。すでに多くの研究者が、勝三郎と同じように考えて実験していましたが、50日ほど塗り続けても良性のイボしかできず、そこで断念する研究者が多かったそうです。

しかし勝三郎は、煙突掃除をする人の癌が年単位でできることから、もっと長い期間実験すれば必ず癌ができると確信し、当時の常識を越える300日以上の実験を行いました。

そしてついに、実験開始から3年以上の月日を費やし、勝三郎はウサギの耳に組織学的に明らかな癌を作り出すことに世界で初めて成功したのです。勝三郎は満足のあまり、次のような句を詠みました。

▲「曲川」は勝三郎の俳号で、出身地・長野県を流れる千曲川に由来する

そんな彼を献身的に支えたのが、助手の市川厚一いちかわこういちでした。肺結核を患っていた勝三郎にかわって、来る日も来る日もウサギ小屋にかかりきりになってコールタールを塗り続けました。厚一は勝三郎の指示に従って忠実に実験を進め、大変熱心だったそうです。勝三郎は、彼の努力を発表論文の最初で讃えています。

研究者の卵として、思うこと

勝三郎と厚一の根気強さには目を見張るものがあります。彼らは、世界中の研究者がさじを投げて途中でやめていた実験を科学的推測をもって継続し、世界的な大発見を成し遂げました。

彼らの働きを思うと、まだまだ努力を積み重ねばならないと戒められる一方、なんとなく自分も大きな仕事を成し遂げられるのではないか、という希望を抱かせてくれませんか?

▲お宝を探し当てる旅に出よう

世界の誰も知らないことを見つける。そんなロマンにあふれた仕事で生きていくことができれば、それ以上に幸せなことはありません。私は、こうした先人の偉業の背景にあるエピソードが大好きで、研究の世界を目指す者としてとても勇気づけられます。一歩一歩研究を進めていき、いつかは「二歩三歩」と言えるような研究成果を示してみたい……!


現在の医学が、未知の現象に立ち向かい、解決の糸口を見つけ出してきた偉人の成果の積み重ねの上に成り立っていることを感じていただけたでしょうか。

山極勝三郎の偉人伝になっている映画『うさぎ追いし』は、人工癌の研究過程や、勝三郎の研究にかける情熱について思いを馳せることができる作品です。興味を持った方はぜひチェックしてみてください!

それでは、そろそろ私は実験に戻りますね。ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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この記事を書いた人

のせぴりか

東京大学で医学を学ぶ6年生です。茶道、アイヌ語、日向坂46、カタンが好き。色々な分野を掛け合わせながら、「読んでよかった」と思っていただけるような記事をお届けできれば嬉しいです。

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